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復讐  作者: 南y
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6 質問

 警察署に到着すると私と息子は別々の部屋へ通されることになった。息子には男性の警察官がつき、私にはさきほどの婦人警官がついた。警察官に導かれていく息子を目で追い続けてそこから動こうとしなかった私に婦人警官は優しく話かけてくれた。


「事務的なものだからすぐに終わりますよ。あの様なことがあったので息子さんのことは心配でしょうけれども、私が信頼している同僚が息子さんにはついていますから心配しなくても大丈夫ですよ。」


私は小さく頷くと彼女の誘導で小さな部屋へ通され、何枚かの書類に目を通してサインをした。そして最後の書類に目を向けるとそこには鉛筆でいくつかの番号が薄く書かれていた。016……? 電話番号かしら ? 私は不思議に思い婦人警官の顔を見た。すると彼女は私の目をじっと見つめるとそっと頷いたのだ。さっきまで優しく微笑んでいたのに、この時の彼女はとても真面目な顔つきに変わっていた。そしてその目は語っていたのだ。その番号へ連絡をしなさいと……。私はその番号をどうにか記憶すると部屋を出て息子と合流した。


「ごくろうさまでしたね。また何かあったら迷わずにすぐに私達に連絡をしてください。」


婦人警官は私達をドアまで見送ってくれながらそう言った。そしてその目はじっと私を見つめていた。 "電話をするのですよ。いいですね。" 彼女の目は私にそう念を押しているかのようだった。



 家へ帰ってから私は息子を質問攻めにした。息子は訳がわからないと言いながらもこう答えてくれた。


「全校集会だよ。その途中で刑事さん達が来たんだ。いったいなんなの? どうして僕だけ家へ帰りなさいって言われたの?」


息子の話を聞いていると、なんだか私のほうが訳が解らない変な母親のような気がしてきた。私は深く呼吸をしてから続けた。


「あのね、学校へ行ったらドアに鍵がかかっていて中に入ることができなかったのよ。ほら、前の学校ではそんなことなかったでしょ? ドアはいつも開いていて事務の人といつだってお話できたじゃない。だから変だなって思ったの。何か嫌な予感がしたのよ。何故だかあなたのことがとても心配になってしまったのよ。」


私はリリーとリサのことは言わないことにした。もしかしてリリーが私をからかったのかもしれない。正直、そうであってほしかった。そして私はこれ以上息子に変な母親と思われたくなかったし、何よりも心配させたくなかった。すると今度は息子のほうから私に聞いてきた。


「そもそもどうしてママは学校へ来たの? 僕何も忘れ物もしていないし……。あっ、朝ごはんあんまり食べなかったから心配だったの? ママらしいね。」


そう言うと息子は私の腕にもたれかけてこう続けた。


「ママは僕の心配のしすぎだよ。嬉しいけどね。」


私はすっかり狐にでもだまされた気分になっていた。今日起こったことは現実なのだろうか? それともすべて私の妄想だったのだろうか? 明日リリーとまた話をしてみよう。そして息子が寝たらあの番号へ電話してみよう。もっといろいろと詳しくわかれば、きっと何でもないことに違いないから。私はそう自分に言い聞かせていた。しかし残念な事に現実の事態はどんどん悪くなるばかりだったのであった。


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