62 再会
僕達が教室の前まで来るとリサの言った通り、アームストロングは僕達に保護者が付き添っていないことなどちっとも気がつかずに誰かのパパにクネクネデレデレと話しかけていた。ああ、いつもながらなんてみっともない奴なんだろう。僕とリサはアームストロングに気づかれないようにそっと教室へ入った。そして驚いたことに誰も久しぶりに教室に入ってきたリサには気がつかない様子だった。
「ねえリサ、誰も君に気づかないね。僕だったらクラスに君みたいに綺麗な子が入ってきたら目が釘付けになるのに。」
僕がそう言うとリサは僕を睨んで言った。
「何で笑っているの? 目が完全に三日月じゃないの。台詞と顔が合ってないわよ。」
僕は本気で言ったんだけどな、僕の顔笑ってたのかな? 僕がくだらないことを考えているとついに誰かがリサに気がついた様だった。
「リサ! リサじゃないか、やっと戻ってきたのか?」
この声はマックスじゃないか。僕が振り返るとそこにはマックスが嬉しそうに立っていた。
「マックス! 退院したんだね。もう大丈夫? 今日からまた学校に来れるんだね。」
僕は嬉しさのあまりにマックスに抱きついてしまった。マックスも調子にのったらしく、僕達は抱き合いながらピョンピョンと跳ね始めた。するとまたまた後ろから聞きなれた声がした。
「静かにしなさいよ、ボーイズ。」
ああ、この声! 僕とマックスが跳ねるのをやめて後ろを見ると可愛い笑顔とともに、これまた可愛い声が僕の耳に入ってきた。
「おはよう、クリスとマックス。そしておはよう、リサ。」
昨日までの孤独が嘘のようだった。これからも僕は担任のアームストロングにいろいろとやられるだろう。なにせあいつは人を傷つけるのが趣味なのだから。でも僕はもう怖くはなかった。これから学校と戦うことになる僕達4人はこの日始めてみんなで顔を合わせた。僕はまだリサが何をしたいのかよく知らないし、マックスとイージーともまだきちんと話をしていない。それでも僕は自分が誰を信じればいいのかはよくわかっていた。もう何も怖くもないし、逃げようとも思わない。僕達なら何があっても大丈夫なんだと心からそう思うことができた事は本当に幸せなことなんだと思う。




