41 勇気
どのくらいの時間が経ったのかはわからないけれども、僕はどこかでボソボソと話をしている声で目が覚めた。
「いいから、教室へ戻りなさい。ここにいたらあなたも目をつけられるわ。これ以上生徒達が傷つくのはとてもじゃないけれども見ていられない。」
エドワード先生の声だ、誰と話をしているんだろう。僕は盗み聞きをするのは少し気が引けたけれども耳をすませてみた。
「もう目をつけられているもの、そんな事ちっともかまわないわ。そんな事よりも私はクリスの事のほうがよっぽど心配なのよ。それにそもそも急いで学校に来てくれって連絡してきたのはエドワード先生じゃないの。ねえ先生、私だってマックスと同じくらい強いのよ、だからマックスを信頼しているように私のことも信頼してほしいの。私だってこの学校のことが許せないのよ。私だって先生達の力になりたいの。お願いだから私にも強力させて。」
僕はイージーの言っていることの意味がよくわからなかった。いったいエドワード先生とイージーの関係は何なのだろうか? そしてエドワード先生とマックスの関係は? この学校が許せないだって? 学校が? アームストロングじゃなくて? 僕はエドワード先生とイージーの会話の続きを引き続き盗み聞きすることにした。
「そのマックスもね、いま病院にいるのよ。私は誰のことも守ってあげられていない。あなただってこれ以上首を突っ込むと何をされるかわからないでしょ、危険過ぎるの。お願いだから普通に学校生活を送ってちょうだい。」
普通に学校生活を送ってか……。そんなことアームストロングのクラスにいたんじゃ無理だ。そう思いながら僕はクラスの奴等のことを考えていた。あの中で本当に僕が嫌いでアームストロングに手を貸している奴はどのくらいいるんだろうか? そいつらも僕がこの国の人間ではないから僕を嫌っているのだろうか? それともみんな何らかの方法でアームストロングに操られているのだろうか? わからない……。でも僕はクラス全員から消しゴムを投げられた。体育の授業だってあいつら全員からイジメられた。いや、待てよ。その中にマックスとイージーは入っていない。どうしてだろう……? ああ、そう言えばあの2人は教室にはいなかったんだったっけ。僕があまり働かない頭でいろいろと考えていると再びイージーの声が聞こえてきた。
「ね、今日私役に立ったでしょ。先生と私と2人でクリスをアームストロングから守ったじゃない。もし私がいなかったらあの子大変な事になっていたわ、考えたくもない。先生から学校に来てくれって連絡があって大急ぎで来たのよ。先生から連絡が来る前はもの凄い頭痛でフラフラしていたのに、クリスが心配だからっていう先生の一言で頭痛も何もかも吹っ飛んでしまったのよ。私だって強いのよ。ね、私役に立つのよ。だからお願いよ。」
一体イージーは何をそんなにエドワード先生に頼み込んでいるんだろう。しかしイージーがどんなに懇願してもエドワード先生はイージーの頼みを聞かないつもりらしかった。
「だめよ。せめて今は教室に戻って頂戴、お願いだから。ね、クリスのことは私に任せて欲しい。お願いだから。あなたの気持ちはよくわかっているからみんなにも相談するって約束するから、だからせめてそれまでは危険な事はしないって約束してほしい。」
眠い……、僕はだんだんとウトウトとしてきてしまった。頑張って目を開けて耳を集中しようとしたけれど無駄だったようでだんだんとエドワード先生とイージーの会話がはっきりと聞こえなくなってきてしまった。そしていつのまにかに僕は再び深い眠りに入ってしまったのだった。
 




