40 悲鳴
トイレという密室の中で見上げるアームストロングはいつにもまして醜く、僕は恐怖で完全に固まってしまっていた。
「給食を食べ過ぎてな、たった今特大の大便を出したところだよ。ほやほやだよ。お前に捧げようと思ってね。」
こんなこと、こんなことありえない。こんな残酷なことがどうしてできるんだ? 僕がアームストロングから顔を背けるとアームストロングは僕の髪の毛をひっぱり僕の顔を便器に近づけた。
「この美しい私の排泄物を拝ませてやるんだ。もっと嬉しそうな顔をしたらどうなんだ。」
僕はここから逃げなければと体をそらした。アームストロングの握っている僕の髪の毛がたくさん抜けたのがわかった。でも僕は痛みすら感じなかった。とにかく逃げなければ、逃げなければ僕はどうにかなってしまう。でもどんなに藻掻いても僕はろくに動くことができなかった。僕の両足と両手は先ほどの何人かの女の子達に完全に抑えられていた。
「ほら、お前らこいつの頭を便器に突っ込んでやれ。」
そう言うとアームストロングはこれ以上楽しい事はないとでも言いたげな顔をして笑い出した。いやだ、これだけは絶対にいやだ。僕は悲鳴をあげた。
僕が悲鳴をあげたのとほぼ同時にトイレのドアがガチャガチャと音をたてた。そしてドアを叩くドンドンという音が聞こえてきた。
「誰か入っていますか? 大丈夫ですか? 今そこから悲鳴が聞こえたような気がしたのですけれど。」
この声は、イージー? 僕はイージーの声が聞こえたような気がした。いや、気のせいではなくイージーがこのドアの外にいたのだ。イージー、僕を助けて。僕はもう一度大声で悲鳴をあげた。するとドアの外から再び声が聞こえてきた。
「あっ、エドワード先生こっちに来て。何だか誰かの悲鳴がこのトイレから聞こえたの。大丈夫かしら?」
どうやらエドワード先生も近くに来たらしい。イージーの声を聞いたアームストロングはもの凄い悔しそうな顔をして僕を睨みつけ僕の髪の毛から手を離した。
「ちっ、エドワードの奴。」
そう言うとアームストロングは急いでトイレの水を流してドアを開けた。助かった、これで少なくともここに顔をつけられる心配はなくなった。アームストロングは外にいるエドワード先生の顔を見ると何事も起こらなかったかのように平然と言った。
「あら、エドワード先生。この子がね、気分が悪いっていうからみんなでトイレへ連れてきてあげたのよ。ね、クリス。大丈夫? まだ吐きそう?」
僕はエドワード先生の腕を掴んで言った。
「エドワード先生、保健室で休んでいてもいい? 僕もう歩けないくらいフラフラなんだ。」
それだけ言うと僕の体からすべての力が抜けてしまった。どうやら僕は本当に倒れてしまったらしい。




