34 信頼
ママの信念に賭けてエドワード先生を選んだものの、実は内心ではビクビクしながら僕はエドワード先生について行った。保健室に入るとエドワード先生は僕にソファーへ座るように言った。僕がソファーへ座るとエドワード先生も僕の向かい側のソファーへゆっくりと座り僕に優しく微笑んだ。
「この間君が見つけた盗聴器は上手く細工してあるから心配しなくても大丈夫よ。」
そうだった。ここには盗聴器がしかけられていたんだった。でもいったい誰が? もしかしたらエドワード先生の自作自演? 僕はアームストロングよりもエドワード先生を選んだけれど、だからと言って僕はまだこの先生を完全に信頼しているわけではなかった。僕が黙っているとエドワード先生は少し笑いながら言った。
「私のこと怪しいと思って疑っているでしょ? 大丈夫、今から5分後には私のことを信頼しているから。」
ちょうどその時受付のおばさんが僕の制服と靴を持って保健室へ来てくれた。どうやらパパが届けてくれたらしい。僕は制服に着替え、エドワード先生が待っているソファーへ戻った。
「どこまで話したかしら? そうそう、私の事を信頼してほしいんだった。」
エドワード先生はそう言うと机から紙とペンを取り出した。
「この前ここに来た時のこと覚えている? ここで君とマックスと私と話をしていたわね。マックスと私はお互いを信頼しているわ。」
そう言うとエドワード先生は紙の真ん中に大きくにマックス、私、クリスと書いた。僕はじっとエドワード先生の手と紙を見つめていた。するとエドワード先生はゆっくりと ”マックスと私” の回りを丸で囲んだ。そして僕をじっと見つめながら聞いてきた。
「これがマックスと私の関係よ。君はどう? マックスのことを信頼している? 大切なお友達だと思っている?」
大切なお友達? マックスと僕は出会ってまだ1週間しか経っていないんだ。まあ、たしかにとても大切だとは思っているけれどだから何だって言うんだよ。そんなの大きなお世話じゃないか。だいたいエドワード先生には全く関係のないことなんだ。
「マックスは楽しい奴ですけど、でもただのクラスメイトです。信頼とか何とかそんな大げさな関係ではありません。」
ただのクラスメイト……。自分で言っておいてなんだか胸が痛んだ。確かに僕達はお互いをまだ良く知らない。たくさん話をしたわけでもないし、たくさん遊んだわけでもない。でも僕はマックスが好きだった。マックスと一緒にいるのは僕にとってはとても自然で心地のいいことだった。それに僕は彼の笑顔だって大好きだ。僕はマックスと僕は何かとても深い繋がりがあるような気すらしていた。そして僕はふと集会での出来事を思い出していた。マックスが集会中に僕にむかって倒れてきた時僕はとてもつらかった。まあ、あれはフェイクだったけれど……。それにマックスが病院に運ばれた時は本当に心配した。そして病院でマックスの元気そうな姿を見た時にはとても安心して……。それからマックスのお見舞いに行って楽しい時間をすごしたこと、そしてその時のマックスと僕との会話。それなのに、ただのクラスメイトと言った自分がすごく嫌だった。エドワード先生はそんな僕を見て勝ち誇ったかのように笑った。
「今、後悔したね? マックスのことをただのクラスメイトだって言ったこと、訂正する?」
僕はエドワード先生にすっかり見抜かれていた。正直少し恥ずかしかったけど、素直に認めるしかなかった。
「はい、僕にとってマックスは大切な友達です。」
言葉に出して言ってしまうとなんだか気分がすっきりとして胸の痛みも取れた。そんな僕を見てエドワード先生はさっきの紙にもう1つ大きな丸を付け足した。 ”マックス、私、クリス”、 この3人の名前がこの丸の中に入っている。そしてエドワード先生はそこに ”仲間” と書き、僕の方を見るとまたもやにっこりと微笑んだ。
「ね、だから君には私のことも信頼してほしいのよ。どう?」
信頼ね……。たしかにマックスはエドワード先生のことを信頼しているって言っていたな。それなら僕も信頼してみてもいいのかもしれない。人を疑うよりも信頼する方が楽だし……。僕はエドワード先生を信頼してみようと思った。まあ、少なくともとりあえず疑うことはやめようと思った。
「わかりました。先生を信頼してみます。」
僕がそう言うとエドワード先生は嬉しそうに言った。
「あら、5分もかからなかったわ。ねえ、クリス、私もマックスもあなたみたいな子と出会えることをずっと待っていたの。心から信頼できる大切な仲間が現れるのを待っていたのよ。」
仲間? いったい何の仲間なんだろう。そう言えばマックスは僕に話したいことがあるけれども1人では説明しにくいとか言っていたな。もしかしてエドワード先生とマックスと2人で一緒に僕に話をしたいのかな? 当然それらも気になったけれど、それよりも今の僕はどうしてエドワード先生が僕の考えていたことがわかったのかということのほうが知りたかった。
「エドワード先生はどうして僕の気持ちがわかったのですか? どうして僕が後悔したってわかったのですか?」
するとエドワード先生は楽しそうに答えてくれた。
「あら、だってこの前の君達ったら息がぴったりだったじゃないの。ほら、私の所へ集会で倒れた生徒がたくさん運ばれてきたの覚えているでしょう。君達ったらその生徒達を的確に、しかもものすごくテキパキと面倒みていたじゃない。何て言うのかな、阿吽の呼吸っていうのかな? あんなにチームワークがいいなんてまるで双子でも見ているかの様だったわ。もうパーフェクト! 君たちが出会ったのって絶対に必然だと思うのよ、運命のパートナーだね。あー、もう男の子同士ってのだけが残念。」
興奮しまくるエドワード先生はそう言うといたずらいっぱいの目で僕にウィンクしてきた。




