28 日曜
日曜日の朝、僕が目を覚ますともう10時だった。昨日は7時頃にはベッドに入ってウトウトしてしまったのに、まさかこんな時間になるまで目を覚まさないとは思ってもみなかった。ここのところいつも気が付くと寝てしまっていて目を覚ますのは比較的おそい時間だった。よっぽど疲れているんだな、そう思いながら僕は起き上がった。今日は用務員のおじさんが僕をマックスの所に連れて行ってくれることになっていた。おじさんは僕の所に2時頃に来るって言っていたから時間はたっぷりある。僕はシャワーを浴びてさっぱりするとキッチンへ行った。するとパパが夜中にでも食べたのだろう、空になったレディーミールのお皿が2つ流しに置いてあった。ゴミ箱に捨てればいいのにどうして流しになんか置いてあるんだろう? 僕はお皿を軽く濯いで綺麗にするとゴミ箱へ捨てた。そして僕は電気ポットにお水を入れてスイッチを押してみた。以前マックスが保健室でこうやってお湯を作っていたのを思い出しながらまねしてやってみたのだ。なんだ、簡単じゃないか。お湯が沸くのを待っている間に僕は何か食べるものはないか棚を開けて覗いてみた。あいかわらずコーンフレークしか入っていない。でも朝からしつこいレディーミールを食べたくなかった僕は、コーンフレークを取り出してボールに入れた。お湯も沸いたので紅茶のティーパックをカップに入れてお湯を注いでみた。電気ポットは思ったよりも重くて僕は両手を使わなくてはいけなかった。マックスは軽々と持っていたのにな……。そんなことを考えながら僕は朝食をテーブルへ運んだ。コーンフレークは相変わらず美味しくなかったけれど、僕は自分で入れた暖かい紅茶があっただけでも嬉しかった。ママが入院してから今までは冷たいコーンフレークだけの朝食だった。暖かいものがひとつあるだけでこんなにも違うんだ。自分で料理ができたらきっと楽しいだろうな、僕はそう思った。
驚いたことに2時近くになってもパパは起きてこなかった。きっと今朝方までゲームをしていたんだろう。わざわざ起こすこともないし、僕はパパに置き手紙をして出かけることにした。おじさんは今日は別の用事があると言っていたからお見舞いを買いに連れていってもらう時間はないだろう。僕は入院したことがないからよくわからなかったけれど、病室にこもっているのはきっと退屈だろう。そう思った僕は僕の部屋にあるお気に入りのスパイ探偵の本を何冊か袋に入れた。読書好きな僕は本をたくさん持っていた。僕の部屋には本棚が3つあり、そこには本が埋め尽くされていた。おそらく500~600冊はあるだろう。その中でも僕のお気に入りは探偵ものだ。それにスパイなどからんできたらもうたまらない、一日中でも読んでいられた。ふと僕が部屋の窓から外を見ると、僕の家の前に車が止まった。おじさんだ、来てくれたんだ。僕は急いで本をつかんで袋へいれて玄関へ駆けて行った。ドアを開けるとおじさんが丁度車から出てくるところだった。
「やあ、元気? その袋はお見舞いかい? もしかしたらお見舞いを買いにいきたいんじゃないかと思って少し早めにむかえに来たんだよ。どこか寄っていくかい?」
おじさんは車のドアを僕に開けてくれてそう言った。
「ありがとう、でも僕お金がないんだ。だからマックスには本を貸そうと思って持ってきたんだよ。僕のお気に入りの本なんだ。」
僕がそう言うとおじさんは車に乗り込みながら言った。
「お金は心配することないよ。俺給料入ったばかりだから少しばっかりリッチなんだ。でも本は素敵なお見舞いだね。マックスも喜ぶよ。買い物は必要ないかな?」
おじさんは車をスタートさせた。そういえば、今日はデイジーさんは病院にいるのかな? 今度会う時にお花をプレゼントする約束したんだった。
「ねえ、今日デイジーさんお仕事の日かな? 僕ね、デイジーさんにお花をプレゼントしたいんだ。」
僕がそう言うとおじさんは笑って言った。
「今日デイジーが出勤かどうかはわからないよ。昨日何にも言っていなかったしね。デイジーへのプレゼントはきちんと会えるかどうかわかっている日のほうがいいんじゃないかな。」
確かにそうだよな。僕もおじさんに賛成だった。綺麗に咲いている時にデイジーさんにあげた方がきっと喜んでくれる。
「そうだね、また今度にするよ。それよりさ、おじさん。今日ね僕自分で紅茶を入れたんだ。」
僕はちょっと自慢げに言った。
「へえ、クリストファーがお茶をねえ、何でもママにやってもらうのかと思っていたのに。」
おじさんはなんだか嬉しそうに僕にそう言った。なんだかちょっとバカにされたのかな? でもママに何でもやってもらっているっていうのは本当のことだからな。
「なあ、ママさんが入院していていろいろと大変だと思うけれど、そうやってお前が段々自立していければママさんも目が覚めた時にとても嬉しいんじゃないかな。イジイジとしているだけじゃだめなんだ。お前はきちんと自分で自分の事をやり始めたんだ。偉いじゃないか。」
おじさんの優しい言葉がとても嬉しかった。本当にどうしてこの人が僕のパパじゃないんだろう。いつかおじさんに子供ができたら、その子はとても幸せになるんだろうな。そういえば、デイジーさんはおじさんが好きだと言っていた。おじさんはどうなんだろう。おじさんとデイジーさんが恋人同士になったらきっとすてきだろうな。僕はおじさんとデイジーさんが恋に落ちるという勝手な空想を始めた。




