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復讐  作者: 南y
25/63

22 校長

 「まあ、クリスじゃないの、いったいどうしたの? 教室を逃げ出したってどういうことなの?」


校長先生はびっくりした顔で僕に尋ねた。


「校長先生、僕を助けて。」


僕は必死に頼んだ。助けてと言うのが精一杯で助けて以外の言葉は僕の口からは出てくることはなく、僕は何度も何度も助けてと言っていた。僕の様子が変だったので校長先生も何かがおかしいと感じ取ってくれたのだろう、校長先生は僕の肩をに腕を回しながらアームストロングの方を向いて言った。


「この子の編入の手続きがまだ済んでいなかったわ。ちょうど今時間がありますからやってしまいましょう。この子をしばらくお借りしますね。」


そう言うと僕の肩を抱いたまま校長室の方へ向かって歩き出した。アームストロングは何も言わなかったし追いかけても来なかった。よかった。僕は助かったんだ……。僕は安心して力が抜けていくのがわかった。校長室までの道のりがとても長く感じた。校長室へ入ると校長先生は不思議そうに僕へ尋ねた。


「教室を抜け出そうとするなんて、あまり褒められたことではありませんよ。いったいどうしたというのですか?」


僕は今日起こったアームストロングからの数々のイジメとクラスの奴等の不思議な態度を校長先生に話した。僕は校長先生なら信じてくれると思っていたのに、残念なことに校長先生は僕の話を信じてはくれなかった。校長先生は小さくため息をつくと僕に言った。


「とにかく今日は家へ帰りなさい。あなたのご両親へ連絡してむかえに来てもらいましょう。」


僕はママは入院しているので、会社にいるパパへ連絡してほしいと頼んだ。とにかくこれで家に帰ることができる。帰ってしまえばもう僕のものだ。もうこの学校には来なければいいことだ。そしてここで起こった事のすべてを忘れてしまえばいいんだ。僕が安心していると校長先生は僕にこう言った

「どうやら教室へは戻りたくなさそうね。私があなたの荷物を取ってくるから待っていてくれる?」


僕は1人になりたくなかった。校長先生が僕から離れたらまたアームストロングに捕まってしまう気がして怖かった。


「荷物なんかどうでもいいです。僕は1人になりたくないんです。パパが来るまで僕と一緒にここにいてください。お願いします。」


僕は泣きそうになって校長先生の洋服を掴んだ。校長先生は困った顔をしたけれどもそれでも僕を落ち着かせようとしてくれたのか、優しい声で言った。


「あなたの言ったこと、とてもじゃないけど信じる事ができないけれど、でもあなたが恐怖を味わったのは本当のようね。アームストロング先生は厳しい時があるから、びっくりしてしまったのね、きっと。わかったわ。そんなに言うのなら荷物は私が後で取りに行って校長室へ置いておきますから明日の朝にでも取りに来るといいわ。」


校長先生は僕が明日この学校に戻って来るとでも思っているのだろうか? 冗談じゃない。


「明日? 僕はもうここに戻ってくる気はないです。僕の荷物は処分してください。どうせ学校指定の校章入りの紫色の鞄なんてこれから先使うことなんかないんですから。中には体操服しか入っていませんし、体操服だってもう着ることはありません。すべて捨ててください。」


僕は勿論本気だった。こんな学校誰が戻ってくるもんか、こんな狂った所。校長室のドアを誰かがノックした。まさかアームストロング? 僕は急に体が硬直して氷汗が流れた。どうしよう、もしアームストロングが僕を連れ戻しに来たらどうしよう。しかしドアをノックしたのは受付のおばさんだった。


「クリス? あなたのお父さんがむかえに来たわよ。受付で待っているから私と一緒にいらっしゃい。」


僕は校長先生以外の学校のスタッフを信用することができなかった。


「いやです。校長先生も一緒に来てください。」


僕は校長先生にお願いした。校長先生は優しそうに微笑んで言ってくれた。


「まあまあ、甘えん坊さんなのね。そうね、あなたのお父様にも挨拶したいし、いいわよ。一緒に行きましょう。」


そう言うと校長先生は僕の肩をポンと叩いた。受付ではパパが相変わらずイライラしながら僕を待っていた。校長先生はパパに握手を求めて手を差し出しながらパパに言った。


「はじめまして、私が校長のフィンです。息子さんはとても疲れているようですので、家でゆっくりとしてもらった方がいいと思いまして。お仕事中に本当に申し訳ないと思ったのですが、連絡をさせていただきました。」


パパは校長先生と握手をしながら答えた。


「こちらこそ、愚息がお手数をかけました。」


そして僕の方をみると飽きれたように言った。


「先生方に迷惑をかけるなんて本当にしょうがないな。さあ、帰ろう。今日は寝ているんだな。明日はどうせ土曜日だし、週末にゆっくりすれば元気になるだろう。」


僕とパパは校長先生と受付のおばさんに再度お礼を言って学校を出た。ああ、やっと自由だ。僕は開放されたんだ。パパの車に乗り込むとパパは僕にものすごい剣幕で怒鳴りつけてきた。


「お前9歳だろ。パパが会社を抜けてくるのがどんなに大変なのかわからないのか? いいか、パパは寄生虫のママが働かない分働かなくてはいけないんだ。お前の運転手をしているほど暇じゃないんだ。具合が悪いのなら保健室で休んでいればいいことだろ、いちいちパパに連絡してくるんじゃない。」


そう言うとまるで鬱憤をはらすようにものすごいスピードで運転し始めた。パパは何か気に入らない事があるとすぐに荒い運転をして気を紛らわせるのが好きだった。自分の息子が具合が悪くて会社を抜け出してむかえにくるのが何だってそんなに気に入らないのだろう。僕にはパパの気持ちがさっぱりわからなかった。ママだったら僕のことをたくさん心配してくれて質問攻めになるのに。


「ママ……。」


僕は知らないうちにママのことを呼んでいた。パパにも聞こえたらしい。


「また、ママ、ママか。ママの事を考えている暇があったら自分の事でも考えろ。ママがいないと体調管理もできないのか? 毎朝毎夕のお前への学校の送りむかえだけでも手間なんだ。よけいな世話をやかせるんじゃない。」


パパは何も知らないくせに。僕があの学校でアームストロングやクラスの奴等にどんなめにあわされているのか何も知らないくせに。そうなんだ……、パパは何も知らないのだから今日あったことをきちんと話さなくちゃいけない。家についたらパパと話をしよう。そうすればパパだってきっとわかってくれる。きっと。



 学校から家までの道のりはとても短い。あっと言う間に家に着き、パパと僕は家へ入った。


「ねえ、パパ。今日はもう会社に戻らないんでしょ? だって僕まだ9歳だから1人で留守番したらいけないんでしょ?」


僕がそう言うとパパはうっとおしそうに言った。


「ああ、全く面倒だよな。パパが小さい時なんか4歳だろうが5歳だろうが1人で留守番していたもんだけどな。それよりもな、お前を受付で待っていたときにアームストロング先生が来てな、お前のことをとても心配していたぞ。あんなに優しい先生はなかなかいないぞ、よかったじゃないか。」


なんだって? パパは何を言っているんだ? アームストロングがいい先生だって? 僕はあんな酷い人間にに出会ったことがない。正真正銘最低最悪な奴をいい先生だって? いったい何でパパはそんな変なことを言い出すんだ? 僕はとても混乱しておもわず叫び出してしまった。


「アームストロングは最低だよ。あいつ狂ってるんだよ。僕はもう2度とあんな学校なんかいかないよ。」


そうして僕はパパに今日の出来事を話したが、パパは僕の言ったことを何一つとして信じてくれなかった。


「お前、何を大げさなことを言っているんだ、作り話もいい加減にしなさい。だいたいアームストロング先生は本気でお前を心配していたんだぞ。お前が何か先生を怒らせる事でもしたから注意されたんじゃないのか? 教師は厳しい方がいいんだ。それを逆恨みして先生の悪口を言うなんて最低なのはお前の方じゃないか。それに転校生や新入生がからかわれるのはよくあることじゃないか。相手にしなければいい、そうすればイジメている奴等もすぐに飽きるだろから。それこそ何かあったらアームストロング先生に相談すればいい。」


パパはそう言った後で僕に念を押すように言った。


「だからな、学校を休むことは許さないからな。月曜日からきちんといくんだ。」


僕はパパのバカさかげんにどうしたらいいのかわからなかった。なんだってパパは息子の僕よりアームストロングの方を信じるんだろう。僕は今までパパに嘘すらついたことがないのに。


「パパなんか大嫌いだ。パパは僕がイジメられていたってかまいやしないんだ。僕は何があったって絶対に学校になんかいかない。」


そう言い残して僕は自分の部屋へ駆け込み枕に顔を押し付けて泣き続けた。

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