19 狂気
アームストロングの僕への1言の後すぐにチャイムが鳴った。僕以外のクラスの奴等が教室から次々と出て行ってしまい、誰もいなくなるとアームストロングは僕に平手打ちをした。
「お前私から逃げる気だっただろ、生意気だな。逃げようとしても無駄だ。」
何だって僕が殴られなくてはいけないんだ。僕はアームストロングへ言い返した。
「先生はどうして僕が嫌いなんですか? 僕は先生に何もしていないじゃないですか。」
するとアームストロングは楽しそうに僕へ言った。
「お前の血だよ。私たちの誇り高き国にお前達のような汚い血をもつ人間は住む資格などない。お前のような髪や目を見ると虫唾が走るんだ。私は今までにも汚い血を何度も始末してきたんだ。お前も始末してやる。」
「僕のような髪や目って先生の髪だって黒いじゃないですか。どこが違うって言うんですか?」
僕がそう言うとアームストロングはおぞましいとでも言いたげな顔をして僕を再度殴った。
「お前のその汚い色の髪と私の美しい髪の色を一緒にするんじゃない。私の髪は絹の様に美しいだろう。お前のその泥のような髪とは質が違うんだ。」
そう語るアームストロングの目は完全に狂っていた。それに僕を始末するだって? 始末? 僕は自殺したという南ヨーロッパ出身だったという生徒のことが頭に浮かんだ。彼もこうやって追い詰められたのだろうか? 僕もアームストロングに追い詰められて死を選ぶことになるのだろうか? アームストロングはその狂った目で僕を見るとニヤリと笑った。
「ほら次は体育だ、早く着替えるんだよ。体育に事故はつきものだからな、全く楽しみなことだよ。ほらぐずぐずしていないで早く制服を脱ぐんだよ。」
そう言うとアームストロングはニヤニヤしながら僕のシャツを引っ張って脱がそうとした。僕は恐怖からついに泣き出してしまった。
「自分で着替えるから放せよ。僕に触らないで下さい。お願いだから……。」
僕がそう言うとアームストロングは僕のシャツから手を放して今度は自分の服を脱ぎ始めた。怖い物見たさだったのだろうか? 僕の目はアームストロングのぶよぶよの汚らしい肉の塊に釘付けになってしまい、さらに恐怖のあまりそこから目が離れなくなってしまった。気持ち悪い、目を逸らさなければ……。本気で吐き気がした。するとアームストロングは嬉しそうにニヤニヤしながら僕に言った。
「おやおや、私の裸が見たいのかい? いくら私がセクシーで美しいからってそんなに見つめるもんじゃないよ。お前には勿体ないだろ。」
僕はますます硬直してしまった。逃げられない。僕はどうしたらいいのかわからなかった。アームストロングは自分の着替えが済むとまだ着替えの途中だった僕のシャツを引っ張って脱がした。僕は動くことすらできなかったのだ。そして僕はまるで着せ替え人形にでもなったかのようにアームストロングに体操服に着替えさせられた。そうして僕の着替えを楽しんだアームストロングに僕は無理やり引っ張られながら体育の授業へと連れて行かれたのだった。




