表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐  作者: 南y
17/63

14 中毒

 僕とマックスは保健室を出て教室へ戻った。アームストロングが教壇に立ち何かギャンギャンと言っていたけれども当然のように僕の耳にも頭にも何にも入ってこなかった。こいつの机の上で僕と同い年の男の子が自殺。この天井で首を吊った……。どうしてこんな所で? アームストロングへの恨みなのだろうか? どうしてアームストロングは自分の生徒が首を吊った教室で授業なんか出来るんだろう? マックスはどうしてこの教室にいることができるんだ? マックスだけじゃない、イージーだって。それに僕だってそうだ。僕はどうしてここにいられるんだろう? ママはいつも僕の想像力は天からの授かり物だって言うけれど僕は今日始めてその授かり物を憎んだ。だって今僕の頭に浮かんだのは制服姿の男の子が天井から首を吊ってぶらぶらと揺れている光景だったのだから。僕はだんだん気分が悪くなり、頭がガンガンして目がぐるぐると回った。吐きそうだ。その時授業終了のチャイムが鳴った。みんなが席を立って教室を出て行くのに僕は立つことすらできなかった。まるで金縛りにでもあっているかのように机から動くことができなかったのだ。そんな時だれかが僕の肩を叩いたのだけれども僕は振り向くことすらできなかった。すると僕の肩を叩いた奴が僕の顔を覗き込んできた。マックスだ。マックスは心配そうに僕に言った。


「おい、お前顔真っ青だぞ。」


そう言うマックスの顔も真っ青だった。


 

 その後どうやら僕は気を失ってしまったらしい。気がつくと保健室のベッドの中にいた。僕はゆっくりと起き上がり、保健室の先生がいつも座っている机の方へ行ってみた。しかしそこには保健室の先生の姿はなくかわりに校長先生がいた。


「あら、気がついた? あなたとね、もう1人の男の子、2人が倒れたってアームストロング先生から連絡があってね。あいにくエドワード先生は研修でいなくて、それで私がここをまかされたのよ。」


そう言うと校長先生は僕の額にそっと手をあてた。


「うーん、熱はないみたいね。顔色も良くなったみたい。いったいどうしたの?」


校長先生は心配そうに僕に尋ねた。


「 わかりません。急に気分が悪くなって……。気がついたらここにいたんです。」


ぼくが黙ってしまうと校長先生はこう続けた。


「貧血かしらね? それとも新しい生活にまだ慣れなくていろいろと気を使って疲れているのかしら? エドワード先生がいたらきちんと診断してもらえるんだけど、よりによっていないなんてね。どうお? 教室へ戻れる? それとも家の方に連絡してむかえに来てもらう?」


僕はベッドの方をちらりと見た。マックスはまだ寝ているようだ。教室には戻りたくない。ママは病院だし、パパは仕事の途中で来るのを嫌がるだろう。


「もう少しここで休んでいてもいいですか? マックスのことも心配だし。」


僕はこれが一番いい方法だと思って聞いてみた。


「ええ、構わないわよ。その子はマックスっていうの?」


「はい。」


「そう、いい名前ね。覚えておきましょう。さて、この書類を作ってしまわないと。よくね、校長って何もしないで校長室でふんぞり返っているだけって言われているけれどね、本当はこれでも仕事は結構あるのよ。さあ、横になってゆっくりしてらっしゃい。」


そう言うとにっこりと微笑んで仕事に戻ってしまった。僕はどうしてこんなに優しい校長先生がホーワードやアームストロングのようなクズ教師をこの学校へ置いておくのかわからなかった。そして僕はベッドに戻ると未だに起きないマックスを覗き込んだ。顔が真っ青だ。僕は彼の顔を触ってみた。すごく冷たい……。なんか変だ。


「校長先生、マックスの様子が何だかおかしいような気がするんですが……。」


僕がそう叫ぶと校長先生は慌ててマックスの所へ駆駆けつけてこう叫んだ。


「救急車を呼んで。」


「救急車? どうやって? 電話は? 番号は?」


僕はパニックになった。校長先生は混乱する僕の肩を両手で掴んで僕の目を見て冷静にこう言った。


「落ち着くのよ。だれか大人を呼んで来るのよ。」


校長先生の指示にしたがって僕は半べそをかきながら保健室を出て大人を探した。僕が廊下を走っていると後ろから怒鳴り声がした。


「こら! 廊下を走るんじゃない。」


振り向くと用務員のおじさんがいた。僕はおじさんに叫んだ。


「保健室、救急車。」


こう言うとおじさんはジャケットのポケットから携帯をとりだし保健室へ駆け込んだ。僕は安心したのだろうか、いっきに気が抜けてしまいその場に座り込んでしまった。



 しばらくすると救急隊員達が担架を持ってドバドバと入ってきた。僕がぼーっと座っているとおじさんが僕の腕を取ってこう言った。


「大学病院だそうだ。俺の車で病院へ行こう。」


僕は思いっきり頷き、おじさんを追いかけて外へ出た。おじさんの車は校内の駐車場の一番奥にとめてあった。車の中でおじさんは僕にこう言った。


「あれは何かの中毒症状に見えたよ。僕の友人に医者がいてね、一緒に飲みに行くと色々と医学について語り出す奴でね。」


おじさんは心配そうにそう言った。中毒症状? 聞いたこともない。


「中毒症状ってなんですか?」


なんだかこわい単語だ。僕は震えながらおじさんに聞いた。おじさんは運転しながらゆっくりと僕に教えてくれた。


「ああ、何か毒物があの子の体の中に入ったんだよ。その毒物が彼の体の許容範囲を超えて、つまり彼が耐えられないほどのたくさんの毒が体の中に入ってしまって彼の体が正常に機能しなくなってしまったんだよ。わかる?」


毒? 僕はよくわからなかったけれどマックスの体の中に毒が入ってそれでマックスの様子がおかしくなってしまったらしいことはなんとなくわかった。


「僕も具合が悪くなったんだ。マックスほどじゃないけど……。」


僕も中毒とかいうやつだったのだろうか?


「集会じゃないか? 倒れる生徒が多いんだ。なんかおかしいんだよな、この学校……。」


おじさんは腹ただしそうに言った。集会? 違うと思う。たしかに集会中に沢山の生徒達が倒れたけれど、僕とマックスが倒れたのは集会が終わったずっと後だ。するとアームストロング? あいつの授業だったら何が起きても不思議じゃない。授業? 僕とマックスのほかに倒れた人はいたのだろうか? 僕はよく考えてみたけども少しも原因を思いつくことができなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ