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復讐  作者: 南y
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13 会話

 しばらくすると保健室へ流れ込んできた生徒はみな眠ってしまった。保健室の先生はため息をつくと椅子にどっさりと座って言った。


「とりあずみんな眠ったみたいね。もう本当にうんざりだわ、毎回毎回大騒ぎで……。」


僕が保健室の先生の顔をそっと見ると本当にうんざりした顔をしていた。僕は保健室の先生を慰めてあげたかったのだけれども、何と言っていいのかわからなくて黙っているとマックスが急に立ち上がった。


「ココアでも入れるよ。」


そう言うとマックスは手慣れたように棚からカップを3つ取り出した。ふーん、マックスって自分でココアなんか作れるんだ。僕はマックスがココアを入れるのをぼんやりと眺めていた。マックスは電気ポットにゆっくりと水を入れてスイッチを入れるとそれぞれのカップにスプーン3杯づつココアを入れていた。そして冷蔵庫からミルクを取り出すと別の大きなカップにミルクをドバドバと入れて電子レンジで温め始めた。


「 どうしてミルクを温めているの?」


僕は不思議に思ってマックスに聞いてみた。


「 だって冷たいミルクを入れたらココアが冷めちゃうだろ、お前いつも冷たいままミルク入れるの?」


ココアにはミルクを入れるんだ、僕はそんなことも知らなかった。


「 僕、自分でココアを入れたことないんだ。いつもママが作ってくれるから。ココアって粉とお湯を混ぜるだけだって思ってたよ。」


僕がそう言うとマックスは驚いたように僕に言った。


「 おれは毎朝自分でココアを入れてるよ。ママはおれが起きるより早く仕事へ行ってしまうんだよ。だからおれの分とパパの朝食は毎日おれが作るんだ。ミルクは別に入れなくてもいいけど、入れた方が断然美味しいんだよ。」


そう言うとマックスは湧き上がったお湯と温めたミルクをコップに注ぎ始めた。マックスが朝ご飯を作っているなんてとても意外だった。僕って本当にママに甘やかされまくっているんだなと自覚せずにはいられなかった。マックスはココアを作り終わると1つは保健室の先生にもう1つは僕へ手渡してくれた。暖かい、僕はマックスの入れてくれたココアのカップを両手で覆うように持った。


「マックス、それでこの子は君のなんだい?」


保健室の先生はマックスに変な事を聞きながら僕の方を見た。


「この前転校してきたんだよ。こいつはおれ達のサイドだよ。」


マックスはココアを飲みながら答えた。おれ達のサイド? 何を言っているんだ? 普通は僕のクラスメイトとか新しい友達とかさ……、秘密組織じゃないんだから。僕が顔をしかめていると保健室の先生はマックスへ質問を続けた。


「そう、じゃあもうあの話はしたの?」


あの話?一体何のことをこの2人は話しているのだろう? 僕にはさっぱりわからなかった。


「いや、まだだよ。でもイージーと一緒に去年の冬の話をしたよ。リサの話も少し。」


そうマックスは答えた。僕はなんだか緊張してきたのか、喉が乾いてしまいココアを1口飲んだ。まだ熱い。保健室の先生は僕の方を見ると突然変なことを僕に聞いてきた。


「ねえ君、この学校変だと思わない?」


変? 変だよ何もかも。でも余計な事は言わない方がいい。僕は差し障りのないように適当に答えておくことにした。


「わかりません。僕はまだ転校してきたばっかりだし。でも前の学校と比べると違うこともいろいろありますね。」


僕がそう言うとマックスが口を出してきた。


「なあ、クリス。エドワード先生は大丈夫だよ。なんたってアームストロングをものすごく嫌ってるんだ。おれはエドワード先生をものすごく信頼してるんだぜ。正直に話せよ。いろいろ力にもなってくれるから。」


そう言うとマックスはココアを飲み干した。どうしてだろう? 僕がマックスに出会ったのはつい最近だ。彼のことだって良く知らない。でも僕の直感とでもいうのかな? 僕はマックスのことは信頼できるという確信があった。それに”アームストロングが嫌い”というのはまるで魔法の合言葉のようだった。これだけでなぜか仲間意識ができてしまうような気がした。僕はマックスが信じるというのなら僕もエドワード先生、この保健室の先生を信じてみようという気になった。僕は気になっていることを話始めた。


「僕もこの学校なんだか違和感があります。先生とか、この集会とか……。それとなんか生徒も少し変かな? なんだか元気がないというか、楽しくなさそうっていうか、前に通っていた学校と比べるとなんだか冷たい感じがして。」


僕はそう答えた。するとエドワード先生はニヤリとしながら頷いた。


「君は観察力があるね。全くそのとおりだよ。まずとにかく教師群がおかしい。とくにフィンとホーワードとアームストロングだ。」


なんだよ、折角信じようと思ったのにあの優しい校長先生の悪口を言うなんて。


「校長先生は優しいですよ。すこしも変じゃない。」


僕はむっとしながら言った。


「クリスは校長にホールインラブなんだよ。」


マックスがからかうように僕に言てきたけれども僕は無視することにした。


「アームストロングのことは僕は好きではありません。好きじゃないというよりはっきり言って嫌いです。ホーワードは嫌いではないけれど自慢話ばかりでちょっとうざいかな?」


エドワード先生はすこし微笑んで言った。


「しっかりしていそうでやっぱり子供ね、上辺でしか見れないのね。まあ、いいわ。じゃあどこがどう変なのか教えてくれるかしら?」


なんだか僕はバカにされているような気がした。おまけにさっき校長先生を悪く言っていたのも気に入らなかったので僕はちょっとエドワード先生に反抗してみたくなった。


「変なのはたとえばエドワード先生あなたですよ。こんなに生徒が倒れるような集会を生徒の健康を管理するはずのあなたがどうして許しておくのですか? 生徒の安全の為に集会を止めさせる権利をあなたは持っているのではないのですか?」


エドワード先生はニヤリと笑って僕に言った。


「君はやっぱり頭が良いみたいね。とても9歳だとは思えないわ。9歳って普通だったら大人にくってかかったりしないし、先生のいうことは絶対でしょ。そのような生意気な口なんてきかないわ。まあ、マックスみたいな生意気さんも中にはいるけどね。でも君はきちんと自分の意見や気持ちを表現できるのね。君の素晴らしい長所だから失わないようにね。」


僕はてっきりエドワード先生に嫌なことを言われると思ったのに褒められて恐縮してしまった。あんな失礼な事を言った事を僕はものすごく後悔した。僕が黙っているとマックスが僕にお得意の首の羽交い締めをしながら言った。


「ね、おれの言ったとおりでしょ。こいつはこっちサイド。人間だ。ロボットじゃない。」


ロボット? いったい今度は何を言っているんだろう。マックスとエドワード先生の会話はいまいちよくわからない。そういえば”こっちサイド”とはどういうことなんだろう?


「そうね、マックス。たのもしい子が転校してきたわね。私もこの子はこっちサイドだと思うわ。」


そういうとエドワード先生は僕の方を見た。


「去年の冬、1人の男の子が自殺をしたの。それなのになにも公になることなく事件は葬られたのよ。マックスから聞いたでしょ? 私は真実を公表したいのよ。その子は保健室の常連でね、とてもいい子だったの。辛いことが多かったらしくてよく私に相談に来ていたのよ。私が力不足だったばっかりにあの子をあんなめにあわせてしまったのよ。すくってあげたかったわ。」


またこの子? 僕はこの知らない男の子が僕の生活に関わってきているのが不思議だった。


「その子が自殺してからこの学校がおかしくなったのですか?」


僕がそう尋ねるとココアを飲み終わったマックスが口を開いた。


「この学校は転校生がすごく多いんだよ。おれは幼稚舎から通っているんだけど、そのころからのクラスメートは半分も残っていないよ。おれは前々からこの学校に違和感を持っていたんだけど、決定的なのはリサが入学して来てからかな? 彼女はもともと都会から引っ越してきてさ、この学校がおかしいおかしいって言うんだ。おれもおかしいと思っていたからすぐに話があってね。1つ1つを注意して観察してみるとやっぱりおかしいんだ。でもおれはこの学校しか知らないからいろいろなことが普通だと思っていたんだよ。たとえば毎日のように行われる集会とか、集会中に生徒が倒れるとか……。違和感はあったけど学校とはそういうものだと思っていたんだ。だけどリサと話をしていてやっぱりここは異常なんだって思い始めたんだ。」


僕は頷いていた。


「うん、僕も集会はおかしいと思う。」


僕がそう言うとエドワード先生が続けた。


「ある日私は保健の研修があって学校を留守にしたの。その時に偶然集会から脱走したマックスと会ってね、話が合ったってわけ。」


この時僕は保健室のコンセントのなかで点滅している光を見つけた。あれってもしかして盗聴器?? 前にテレビで見たことがある。僕は人差し指を口へ持ってきてしっというサインを送りコンセントのそばに行って指をさした。マックスとエドワード先生の顔がみるみる青くなっていったのがよくわかった。エドワード先生は落ち着きながら言った。


「まあ、そんなわけでね、マックスと探偵ごっこを始めたのよ。でも結局なんにも見つからずじまいなのよ。結局はただの集会好きの教師達とひ弱な生徒達ってところかしら?」


マックスはショックなのか黙っていた。なにか言わなくては……、盗聴器を見つけたことがばれてしまうかもしれないじゃないか。


「なーんだ、ゲームか、僕本気にしちゃったよ。」


そして僕もこれを言うのが精一杯だった。

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