ある動きその二
死者が蘇ることはあるのだろうか。
第二課諜報部にて。
少女は、一つの問題に頭を悩まされていた。
「死んだはずの人間が街を徘徊している、ねえ……」
そう。そのような信じがたい出来事がここ数日の間に五件も報告されたのだ。
通常、死者が蘇ることはあり得ない。
ある特別な力を持った人物であれば死んだはずの人間を見ることができる、なんてことを聞いたことはあるが……所詮、それは霊的存在であって生き返ったわけではない。
実際、本人もそれが本物なのか幽霊なのかを見分けることができるらしいので……何かのいたずらではないのかと思ったが、報告してきた人物にそのような力は皆無。おまけに横の繋がりや縦の繋がりも見受けられないし、職業、年齢、性別などのそこら辺の情報を見ても共通点は一切なし。
ただ、報告された内容に共通点があるとすれば――。
「街を徘徊している死者が全員第三課隊員、かぁ……」
そう。なんと五件全てが殉職したはずの第三課部隊員を見たという報告だったのだ。
しかも、その殉職した第三課部隊員はつい最近亡くなった人ばかり。
「んー、でも今手元にある情報だけじゃわかんないか……」
少女は椅子の背凭れに身体を預けた。
最重要な案件でもないため、どうやらこの件についてはひとまず保留するようだ。
「さてと」
少女は次の書類に手を伸ばした。
題名は『迷人の新たな能力を発見!?』。
「…………」
無言のまま小さく息を吐く少女。
誰だろうか、このような書類を混ぜ込んだのは。
題名から察する通り、これは明らかに市民からの投稿。
本来ここへ来るべき書類ではないのだ。
しかし、渡されたからには一応目を通しておかなければならないので――。
「ん?」
少女は書かれていた内容に目を細めた。
そして書類の隅から隅まで目を走らせ、
「……これは嫌な予感がするなぁ」
一通り読み終えた後、少女はこの書類をファイルにしまうわけでもゴミ箱へ捨てるわけでもなく、自身の制服の内ポケットにしまうのであった。