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怠惰な淫獣と変態契約者  作者: るなふぃあ
第三章 契約者の親友
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 三度目の武装不可事件。

 どうやらそれは俺が亡霊に拘束されている時に発生したらしい。

 被害者は二人。

 隊長と副隊長。

 そう。なんと三度目の武装不可事件は俺の目の前で起こっていたのだ。

 街に戻ってからルナに言われて気づいたのだが……なんと隊長たちの指輪の輝きが失われていた。それに加え、通常なら契約者が意識を失うと強制的に武装が解除されるのに、どういうわけかシアが戻ってこなかった。

「どうしたもんかな……」

 俺は休憩室で隊長が目覚めるのを待っていた。

 現在、隊長は医務室で医療系統の能力を持ったミフィールに治療してもらっている。

 なんとか一命は取り留めたらしい。意識を失ってからすでに三日が経過。武装時に受けたダメージならこんなことにはならなかっただろうが、隊長が受けた一撃はあくまでも生身の身体。生きていること自体が不思議なくらいだ。

「やっぱり様子を見に行きましょう」

 今までジっとしていたルナが耐えきれなくなったのか席を立った。

「今行っても俺たちが入ることはできねえぞ。心配なのはわかるけど、邪魔するわけにはいかねえよ」

「でも」

「いいから座れ。それよりも武装不可について考えるぞ」

「また、ですか……」

 納得いかない顔をしながらもルナが椅子に座った。

 そう。問題は武装不可についてだ。もちろん隊長のことは心配だけど……あくまでも俺たちは戦闘特化。医療関係は全くの無知だからできることなどない。

「でも考えるって何を考えるんですか? 昨日も話し合ったじゃないですか」

「それは、そうだけど……」

 一応、俺たちの間ではあの脳を揺らすような音が武装不可の状況を作り出した原因ではないかと結論づけた。

 というのも、それ以外に考えられる要因が何もないからだ。

 決めつけるのはよくないのかもしれないが、通常の戦闘と違う部分があったとすればあの酷い音だけ。

 しかし、これには一つの大きな矛盾が存在する。

「じゃあさ、なんで俺たちは武装不可の状況に陥らなかったんだ?」

 そう。俺たちには効果を示さなかったのだ。

 仮にあの音が原因だとしたら、その場にいた俺たちは間違いなく武装不可の状況に追い込まれていたはず――。

 ルナがポンと手を叩いた。

「きっとアレです! 愛の力ってやつです」

「愛の力って、お前な……」

「私とトノサマは赤い糸でしっかり結ばれているということですっ。だからあの音を聞いても何の影響も受けなかったんですよ」

 ダメだ。コイツじゃ話にならない。せめて副隊長でもいれば、話が進むのだろうが――。

 ふと、あの時の言葉が脳裏を過った。

『……ねえ、なんで武装できるの?』

 そう。副隊長が唖然としながら呟いた言葉だ。

 自分が武装不可の状況に陥ってしまったからそう言ったのではないか思っていたけど……今考えてみれば、武装できなくなることが当然だという反応にも捉えることができるぞ。

 それに最初の事件では例の音について何も話していなかったし……なんだ? 副隊長は何かを隠している?

 しかし、副隊長を問いつめたくても現在はそれが不可能な状況。

 なぜなら彼女も隊長と同じく治療を受けている最中なのだ。

 隊長と違って大怪我を負ったわけじゃないが……街へ着いた直後に意識を失ってしまった。医師の診断によると、精神的な負担が原因らしい。

「お話は終わりですか? 終りでいいですよね。それじゃあ今日は遊びましょう!」

「隊長や副隊長があんな状態だっていうのに何言ってんだ」

「でも様子を見に行けないじゃないですか。それだったらこんな場所で考え込んでいるよりもパーっと遊んで気分転換しましょうよ、ね?」

「…………」

 確かにルナの言うことは間違っちゃいない。

 こんなところで答えの出ない問題について考え込んでいるよりも、今のうちに羽を伸ばしておく方がいいだろう。

 でも、気分的には――。

 俺は無言のまま首を横に振った。

 自分たちだけで武装不可事件の調査を続行したい。

 そう。武装不可の状況を作り出した犯人、あるいは原因を早く見つけたいのだ。

 だって目の前で隊長がやられてしまったんだぞ。武装不可の恐ろしさはもう十分理解した。これ以上犠牲者を出すわけにはいかない。

 しかし。

 生憎、俺たち迷人は獄人を含めたチームじゃないと外に出てはならない制限をつけられてしまった。

 それもすべてはミレナース教のせい。

 いや、せいって言ったら彼が悪いことをしたように思われてしまうから、訂正。

 ミレナース教は正論を言っただけである。

 これ以上死者を増やさないために風紀部隊は獄人と迷人が混在したチーム、あるいは獄人のみのチームだけで街の外へ出るべきだと風紀部隊の上層部に訴えたのだ。

 武装不可の状況に陥ってもいいように帯銃していたとはいえ、力不足だったことに違いはない。上層部もその訴えを強く受け止め……結果、迷人のみのチームで行動することを規制したのだ。

 なんて面倒なことをしやがったんだ、と文句を言いたいけれど……あの時ミレナース教がいなかったら隊長は助かっていなかったし、俺は亡霊に握り潰されていたんだ。命の恩人に文句など言えるわけがない。

 だから調査を行うには他のメンバーを探すことが必要不可欠なので――。

「しょうがない。予定とは違うけど、諜報部へ行こうか」

「諜報部へ、ですか?」

「あぁ」

 諜報部。

 そこは風紀部隊第二課が担当している部署である。

 街にある図書館でもいろんな情報を手に入れることはできるが、裏情報に関しては諜報部の方が断然良い。街に戻った直後に先ほどの音に関しては伝えておいたし、早ければ何か新しい情報を得ているかもしれない。

 気分転換をしておくことも悪くないけど、やっぱり今は情報収集だ。

 しかし、ルナがあからさまに嫌そうな顔をした。

「絶っっっ対に嫌です! 諜報部には行きたくありません!」

「そう言うなよ。お前があの二人のことを嫌っているのは知っているけどさ……ルナが嫌だっていうのなら俺一人で行く」

「それこそ許しません! あの女とトノサマを二人きりにはさせませんからね!」

「あの女って、お前な……」

 あの女というのは諜報部に勤めている友人のことである。

 俺が獄園にやってきてからよくお世話になっている人のことで……契約者を含め、ルナはその二人と仲が悪い。

 いや、仲が悪いというよりもルナが一方的に嫌っているだけ。

 むしろ向こうの二人はルナに対して好意的なので――。

「よし、行くか」

「ちょ、トノサマ!? 私の気持ちは無視ですか!? って、待って下さい! 置いてかないでくださいよ!」


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