文芸部
翌日になり、あたしは彼が言っていた言葉を実現させるべく職員室に向かった。
文芸部を再建させれば、彼の言っていた思いがわかるのかもしれない。
日誌からしか伝わらなかったお姉ちゃんの思いがわかるかもしれない。
お姉ちゃんが叶えたかったこと・・・。
『失礼いたします。あの、部活の申請をしたいんですけど』
『ああ、こっちへ入ってきなさい』
中に入ると、部屋の片隅で話している先生達の声が聞こえてきた。
どうやら裕也さんが行方不明になったようだ。
昨日霧のように突然消えてしまった彼。
ああ、そうか。
大好きな先輩達に会いに行ったんだね。
部活を作るにあたって必要なことは二点ある。
一つは最低部員を四人用意することだ。もう一つは顧問を用意することだった。
あたしの場合は昔の文芸部の顧問がいるということで、二つ目の問題はクリアだ。
あんなことがあった部活を、この顧問は再び受け持ってくれるというのか。
あたしが知った詳しい情報は知らずとも、普通は気持ち悪がるものだ。
この顧問は文芸部の一員であるだけ、いい先生なのだろう。
そしてあたしは、部員を集めるべく色々な生徒を勧誘し始めた。
そうすると案外文芸部に入りたいという生徒は多いようだ。
三人勧誘できれば十分だったのだが、五人も集まった。
全て一年だけの部員は、本当に新しい部活のようで、あの日から止まっていた文芸部の時間は再び新しく動き出すのだ。
部長の願いを叶えるために・・・
*
あれからどれくらい経っただろうか。
気づけばあたしはもうすぐ引退を迎えようとしていた。
五人だけだった部員は、後輩を入れて十人にまで増えていた。
最初は皆で行っていたリレー小説も、二グループに分けて行うようになった。
内容はずっと同じものだ。
それを長編に渡って書き綴っている。
『部長。次は部長の番ですよ』
『ありがとう。もうすぐ終盤を迎えるね。裕也君』
はい。と言った彼は、屈託のない天使のような笑顔を向けていた。
まるで彼が生まれ変わって来たかのように、裕也君は裕也さんそのものであった。
彼はあたしが部長をするにあたって、色々なことを手伝ってくれた。
あの頃の裕也さんも姉の役に立とうとしていたのか。
そんなことを考えたからか。
裕也さんとあまりにも似ていたからか。
可愛い後輩である裕也君は、あたしにとってとても大切な人になった。
このリレー小説。
<青葉高校文芸部員の歴史>は、裕也さんたちの話しが終わっても、また引退するあたし達の話しが乗る。
あの人達のような素敵な先輩達ではなかったかもしれないが、この子達は全て想像で書いてくれたのだ。
全ての事実を知って、尚も部活から離れなかったこの部員達。
きっと今よりももっと良い部活になって、文芸部の歴史は受け継がれていくのだろう。
お姉ちゃんが叶えたかったこと。
あたしは裕也君と叶えることができたよ。
お姉ちゃんは今。
和也先輩と、裕也先輩と一緒に笑っているんだよね。
ありがとう。
お姉ちゃん。
お姉ちゃんの夢は終わらないよ。




