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愛しの都市伝説

メリーさん☆ラプソディ

作者: だんぞう

死にたい気持ちなのに、死ぬのが怖いときってどうしたらいいんだろ。飛び降りる勇気も、刃物を自分に向ける勇気もない。睡眠薬とか持ってないし、首吊りなんてすごく苦しいんだよね?

相談できる友達はいないし、うざい親とはしゃべりたくない。先生はいじめっ子の味方だし、ネットでもどうやって人に声かけたらいいかわからないし本当に孤独。

そんなときに思いついたのが殺し屋。僕を一瞬にして殺してくれるスゴ腕の。

でも普通の中学生に殺し屋の連絡先はわからないし、わかったとしても報酬なんか払えないだろうし。

だから僕はネットである番号を調べた。意外にもたくさん見つかった。そして深夜、嘘か本当かもわからないその電話番号に片っ端からかけてみたんだ。


かけてすぐ携帯が鳴った。いまかけた番号!

僕はドキドキしながら通話をオンにした。

「わたしメリーさん。いまあなたの学校」

それだけ言って切れた。通っている中学はうちから歩いて10分ちょっとかかる。というか、本当にメリーさんにつながったの?

……そっかメリーさんが来るんだ。来たらやっぱり僕は殺されるんだよね?

そう考えると、急に恐さが込み上げてくる。もう後戻りできないよね……あ、また携帯が鳴った。

今度は受話ボタンを押さないのに通話がはじまった。

「わたくしメリーさん。いまあなたの学校」

プッと切れる。

え?

まだ学校?

戸惑っている僕の携帯がまた鳴った。

「わたちメリーさん。いまあなたのがっ」

「あたしメリーさん。ちょと出遅れた」

通話中にキャッチまで入った。え? えええ? メリーさん何人もいるの?

「わたしメリーさん。いま校門乗り越えたとこ」

「わたくしメリーさん。わたくしは裏門から」

「わたちメリーさん。さんばんめー!」

「あたしメリーさん。飼育小屋のうさぎに見とれてる」

携帯からは次々と勝手に声が流れはじめる。

いくつものメリーさんの声を聞いてると不思議と気持ちが少し落ち着いてきて、それぞれの特徴までわかってくる。

一番最初のメリーさんは声が少し低い。

丁寧なメリーさんは甲高い声。

舌足らずのメリーさんは幼い声。

でも一番好きな声はうさぎ好きっぽいメリーさん。可愛い声。

「わたしメリーさん。いま三丁目の三叉路」

「わたちメリーさん。いいかんじにおいぬいたとこ!」

「わたくしメリーさん。二丁目の坂道ストレートでごぼう抜きして差し上げます」

「あたしメリーさん。コーナーでスピンしました」

「わたちメリーさん。ずるい! あしひっかけられた!」

「わたしメリーさん。勝負は非情なの」

「わたくしメリーさん。一丁目のコンビニ通過ですわ」

「あたしメリーさん。あれれー。なんでまた学校に着くの?」

「わたしメリーさん。そろそろ本気出す」

「わたちメリーさん。マンションみえたー!」

「わたくしメリーさん。いまエレベーターホール」

「あたしメリーさん。学校の屋上からハンググライダーでまくる予定」

「わたしメリーさん。いまあなたの階に到着」

背中がゾクっとした。

途中までは面白半分で聞いていたけど、現実にすぐ近くまで来てしまったら、怖くてたまらなくなった。

どうしよう僕、本当に殺されるのかな。

「あたしメリーさん。実は先回りして中から鍵しめてみた」

「わたくしメリーさん。ピッキングはお手の物でしてよ」

どうしよう……どうしよう……

「わた

 

 

は自殺」

 

 

 

 そこまでしか書かれていないノートを覗き込みながら、若い男が隣の初老の男に尋ねた。

「ヤマさん、これ遺書なんですかね」

「わからん。だいたい女の子が『僕』かぁ?」

「ヤマさーん。いまどきの女の子は自分のこと僕って言う子も居るんですよ」

「それもわからんな」

「だけど……ご丁寧に遺体も四つの部位に切断されていますね」

 少女の遺体は首、右肩、左足首のところで切断されていた。若い男は傷口を少し眺めてから眉をしかめた。

「切断面は刃物じゃないですよねコレ。雑巾みたいに絞られて……ねじ切ったんですかね? 人間の力で出来るんですかね」

「後で司法解剖に聞け……おい、鑑識は何か出たか?」

「ダメです。被害者の指紋以外は全く……最近は両親も部屋に入れさせなかったみたいで」

「……本当に出ちゃったんですかね、都市伝説」

「馬鹿野郎! それ絶対に外で言うなよ。警察がまた叩かれちまう。いいか、ホシは必ず挙げる。こんな自殺はありえない」

 初老の男は深いため息をついた。

「ヤマさん、被害者の携帯が見つからないようです」

「よく探したのか? ひょっとしたら犯人が持ち去った可能性もある。そうだ通話記録も調べとけ」

「ヤマさん!」

「どうした?」

「被害者のクラスメイトが自宅で死体で発見されたそうです……イジメの主犯格だった女生徒です」

「なにぃ?」

「手口が同じようです。遺体の切断面もねじ切られているらしく……遺書があるとこまで同じだと」

「また『僕』か?」

「……ヤマさん当たりです……こう書かれているそうです……『僕メリーさん。この子は他殺』」

 

 

 

 数日後、イジメられていた少女の電話番号が「メリーさんの番号」として、ネットの片隅にアップされているのが発見された。

 

 

 

(終)


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