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08 独白




心臓が、破裂しそうだった。







冷や汗が、背中を伝う。

俺は思わずベッドのシーツを握り締める。

目を開こうと思うのに、上手く体に信号が送られない。


ヤ・・・ヤバィ・・・。


どうすればいいのか分からず、俺は固まったままだった。

必死に考えれば考える程、頭が真っ白になっていく。


ギシッ・・・


姉貴が、ベッドに手をついた。

俺はドキッというよりビクッて感じの反応を示してしまう。

それでも、狸寝入りに姉貴は気付かない。


「ねぇ浩介・・・」


な・・・何を言う気なんだ・・・。




「・・・・・・ごめんね」




え?




急に、謝罪が降って来た。

思考が中断される。

俺の目が、見開かれる。


どういうことだ・・・?


「こんな予定じゃなかったんだけどなぁー・・・。気持ち・・・伝える気なんてなかったのに」


姉貴は、自嘲気味にクスッと笑った。


「アンタとは・・・キョウダイでいたかった・・・本当よ?」


静かに、語り始める。


「ずーっと・・・一番近くでいたかったの。血の繋がりがないからって、それを―――キョウダイとしての絆を捨ててまで一線越えたいだなんて思わなかった」


「・・・・・」


俺は、また強くシーツを握り締める。


・・・姉貴・・・。


「今のままで・・・十分幸せだったのになぁー。なんで・・・なんでこんな事しちゃったかなぁー・・・あたし」


また自嘲気味に笑う。

それに、俺は少しずつ胸が締め付けられる。


「ごめんね・・・。聞きたくない事まで言っちゃったね、あたし。嫌な思いさせたよね」


姉貴の声が、少し震えていた。


「あたしの事・・・嫌いになっちゃったかなぁー・・・。もう、キョウダイとして接してくれないかなぁ・・・」


ズッという、鼻を啜る音がした。


姉貴・・・・・泣いてる?


起きた方がいいのかと思ったその時。




「・・・・・ごめんね」




もう一回謝り、


「・・・寝てるヤツに、何話し掛けてるんだか」


と軽く笑って、姉貴は部屋を出た。

出る時さえ、控えめにドアを閉じた。


パタン


ドアの閉まる音が、静かな部屋に響く。


「・・・・・・・・」


俺は、もそりと起き上がる。

眠気なんか吹っ飛んだ。


俺は・・・どうしたらいいんだ・・・?


さっきまでの姉貴とは全然違う態度に、俺は何も言えない。

何故か、涙が出そうになる。


「・・・ッ・・・」


赤い跡がある手首が、一瞬チリッと痛んだ。









歯車が、突如弱々しく廻る。




カラカラカラカラ・・・



からからからから・・・・



泣きたいなら、泣けばいい。


苦しいなら叫べばいい。






誰も―――それを咎めはしないのに―――。





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