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06 本当のコト




嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。




そう、これはきっと嘘。




突拍子のない、その場限りの嘘。






何を言ってるんだ?



意味が分からない。



こんな時に冗談はやめて欲しい。



タチが悪過ぎるじゃないか。




俺の口元から乾いた笑いがこぼれた。

でも、目まで笑えてないのが自分でも分かった。

背中がじんわりと湿っている。


「は・・・ははは。なぁに言うんだよ、姉、貴」



『 キョウダイじゃない 』?

『 血の繋がりなんてない 』?

そんな馬鹿な話、あってたまるか。

そう、俺達はキョウダイ。

今までも、そしてこれからも、ずっとそうであるべき。

たった二人の。



「信じらんない?」


少し笑いを含んだ声で、姉貴は言った。


「でも。悪いけど事実なの」


姉貴の目元と口元が楽しそうに歪む。

何が楽しいんだか、俺にはさっぱりだ。

俺の思考はまだ止まったまま。

同じ言葉が、脳内をぐるぐる廻る。

こめかみの辺りがジンジンする。

目の奥も熱くなって来た・・・気がする。


「もちろんお母さんもお父さんも知ってるわ。知らないのはアンタだけ。ゴメンね?」


いたずらっぽく笑いながら、心からではない謝罪を述べる。



どうせなら。

教えてなんて、くれなくて良かったのに。

なんで。

なんで言うんだよ。



行き場の無い怒りのようなものと、ワケの分からない悲しみにも似た気持ちが湧き出る。


「アンタは、お母さんの連れ子なの」



聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない。



「つっても、お父さんと再婚した時にはまだお母さんのお腹の中だったんだけどね」



やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ。



「だからアンタは、お母さんの前の旦那の子供。あたしと、血なんか繋がってないのよ」


こめかみが痛い。

鉛を飲み込んだみたいに、胸の辺りが重苦しい。

心臓か、肺のある部分がギュウギュウ痛む。

息がしづらい。


「どうしたの?」


姉貴と目が合う。


「ショックだった?」


クスクスと笑いながら、俺のおでこに自分のおでこをコツンと当てる。


「でも・・・全部ね、本当ホントウなの。あたしは嘘なんて、一つもついてない」


俺の手首を押さえていた手を離し、なだめる様にその両手で頬を包む。

当てられたおでこと、頬を包まれた両手は、温かい。


「あたしが、アンタを好きってのも、本当ホントウ。キョウダイとしてなんかじゃないのよ?人として、本気で好きなの」


静まり返りかけた頭が、また混乱して来た。




「―――――好きよ、浩介」



姉貴の声が、耳に、頭に、全身に。


重く、響き渡る。







歯車は、廻り続ける。


音を立てながら。


―――その音は、ひどく哀しげに聞こえるが、どこか楽しそうにも聞こえる。





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