03 あと2秒
朝、起きる。
俺はゆっくりと階段を降りる。
だらしなくパジャマに手を突っ込んでボリボリとかく。
「ふぁ〜あ・・・」
ついついあくびをする。
外からは、今日も元気に蝉が鳴いていた。
俺はキッチンへと足を向け、辺りを見回す。
でもあんまり食欲がない事に気が付く。
「・・・コーンフレークぐらいにしとくか」
俺は棚からコーンフレークの入った箱を取り、冷蔵庫から牛乳を取る。
容器に入れたコーンフレークがカラン、と乾いた音を出す。
そこに牛乳を注ぎ、大きめのスプーンを突き刺して、リビングへと歩いていく。
昨日と同じようにテレビを付ける。
色々と番組を変えていき、とりあえず一つで止める。
今日オープンの遊楽地の宣伝をしている。
画面の中では、アナウンサーと若手芸人がリポートをしている。
「あれ面白そうだな・・・」
俺はポツリと独り言を漏らしながら、シャクシャクと音をたてながら食べる。
バンッ!
「ッ!?」
俺は突然響いたその音にビビる。
口に入れていたコーンフレークを噴き出しかけた。
その音が勢い良く開け放たれたドアだと気付くのに、そう時間は掛からなかった。
ゆっくりと振り向く。
テレビの中では笑いが聞こえる。
「・・・・・・・・姉貴」
そこには、入り口で俺から見て横向きに仁王立ちした姉貴がいた。
その顔はまたクマがあり、髪の毛もボサボサだった。
その顔は不機嫌そのもの。
「・・・んだよ、姉貴」
俺もちょっと不機嫌気味に聞いてみる。
だがその顔は俺の方へとは少しも向けられず、真っ直ぐ前だけを睨んでいる。
俺は目の前に何かあるのかと思って姉貴の睨んでいる方向を見るが、何もない。
俺はワケが分からなくて、姉貴と姉貴の睨んでいる方向を交互に見る。
でもやっぱり何もない。
「おい、姉貴ってば」
俺が少し苛立った様子で呼ぶと、姉貴がこっちを向いた。
「・・・・・」
でも何も言わない。
ただ睨まれている。
・・・正直、かなり怖い。
しばらくすると、姉貴はこっちに向かってあるいて来た。
裸足が床に引っ付いて、歩く度にペタペタと音が鳴る。
「・・・・・・・・・・・・浩介」
やっと喋った。同時に、ペタペタという音が鳴り止み、姉貴は俺の目の前に立っている。
「さぁご覧下さい!お客様がどんどん入って来ます!」
テレビから元気な声が聞こえる。
だがそれとは対照的に、俺と姉貴は黙り込んだままだ。
「な、何・・・?」
長い沈黙に我慢出来なくなった俺は、重い口を開いた。
ぐいっ
―――――は?
俺の視界は壁側から天井へ移った。
姉貴の顔もさっきより随分近い位置にある。
俺の顔に姉貴の長い髪の毛がかかり、少しくすぐったい。
―――今の俺の状況を短くまとめてみると。
俺は、姉貴に押し倒されていた。
ソファーの上で。
もう、歯車は止まらない。