真実の実(語り部)
三人の男の旅人が居ました。
三人は別の土地の者でしたが、同じ場所に向かう三人は何時しか同じ道を一緒に歩いていました。
到着の地が見え始めてきた頃、道に一人の女が行き倒れていました。
女は身寄りがなく、一文無しでした。見捨てるのも忍びないと、三人の旅人はあと少しで着く目的の地まで女を連れて行くことにしました。
女は辛い道の中、男たちの足を引くことなく付いて行き、休憩や野宿の時でも率先して仕事をかい、助けてくれたことへの感謝の気持ちを表しました。
ようやく目的地に着いた三人と女は別れることになりました。
女はお礼にと金貨の入った袋を男たちに渡しました。
一人の男は金貨を受け取らず、もう一人の男は道程でかかった分を少し袋から取りました。そしてもう一人の男は――
「この金は盗んだ金だ!」
そう叫びました。
無一文だった女が金貨の袋を持っているはずはありません。
そして更に叫びました。自分の荷が盗まれたことを、売ってそれを金貨に換えたのだろう、と。
女は否定しました。他の二人の男も女を庇いましたが、騒ぎを聞いた周りの人々は女を攻め立てました。
女は全ての金貨を男に盗られ、追い出されるようにその地を立ち去りました。
男は女をかばった二人の男たちも共犯だといい、こぞって女と一緒に追い出しました。
一人だけ地に辿り着いた男は大量の金貨で土地を買い、その地の主となりました。
……でも、真実は明かされません。
その男こそが本当の嘘つきだという事を。
男は荷など盗まれていませんでした。それどころか、ろくに金は無く、他の男二人から金を借りていたほど。
本当の真実は、女が三人の中で一番裕福だった男からお金を借りたということでした。自らが男の妻になることを条件に。
他の二人はそのことに気付いていました。一人は気付きながら女の義理を思い少しだけ金貨を受け取り、もう一人の男は全ての金貨が欲しいため嘘をつき、独り占めをしました。
女をお金で買うという、周囲には明かしにくい真実を使って。
この後、女は金貨を借りた男の妻となりました。男は遠い地の王様でした。大勢いる妃の中で一番女のことを愛し、大切にしました。
貰った金貨も嘘吐き男に取られ、目的の地からも追い出されたもう一人の男は何も得ることなく故郷に戻り、一番可哀相な女のことを思い泣きました。