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フェティシズム・ファンタズム〜VS幼馴染能力者〜

作者: Wana-wana
掲載日:2026/11/03

 極まった性癖は、『能力』として顕現することはあまり知られていない。

 性癖能力者たちが、己の存在を秘するからである。

 なぜか。

 性癖は、余人から知られると、恥ずかしいからだ。余人に知らせるものではないからだ。というか、己の性癖を認識し、言語化できて余人に発信できる時点で、性癖能力者として半分開眼している。

 閑話休題。

 ゆえに、性癖能力者たちは、日夜隠れながらバトルを繰り広げている。

 なぜなら──恥ずかしいからだ。


◆

「俺は性癖 幼馴染。この属性自体が、すでに敗北を意味してるとか言った奴の返り血でこの頭は染めている。正直手入れがめんどいから、普通に染めるほうがいい」


 性癖の終焉地シンオオサカ。

 今日も今日とて、というわけではないが恋人たるBL女とちょっと遠出でもと思って、休日に駅を利用しようとしたらこのざまだった。でも、なんていうか。


「性癖が真っ当ね」

「なんなら服装もまともだな」


 I ♡ オサナナジミ。そう書かれた服を着ているだけなので、正装感すらあった。


「真っ当……ああ、そうだ、真っ当すぎてもはや性癖と呼ぶのもおこがましい。そういうことを言ってくる奴らばっかだ」

「言わねえよ。俺だってお前の気持ちが分かるからな」

「なんだと?真っ当すぎて、もはや世間的にはちょっとずらすのが主流になりつつある幼馴染…………もはや『ハーレムものだったら幼馴染が一番だろ』とか言うだけで冷笑の対象になる幼馴染…………俺の気持ちが分かってたまるか!!!!」

「分かるさ。俺だって、そう、だから」

「まさか……お前も幼馴染フェチを……?」

「いや、ちがう」


 これは礼儀だろう。性癖能力なんてものが芽生えてしまったノーマルフェチ同士の。

 だから、俺は心の中で、己の性癖を解放することばを唱える。果たして空に浮かぶは、二対の山。そう、俺の、俺の性癖は。


 


「俺は性癖 巨乳だ!!!!!」




「えwwwしょうもなwww今のこの時代に性癖巨乳ってwww雑魚wwwwwwww」

「死ねや!!!!!!!!!!!!」


 俺は殺すことにした。巨乳をしょうもない性癖もちの、変態にぶつける。だが、これは能力者同士の戦いである。

 何らかの反撃が……………なんか唐突に変態の姿が消えてそのかわり天井だけが宙に浮いた。


「なにこれ」

「気をつけなさい!あいつの能力は多分!」


『くっくっくっくっ。俺は天井のシミになることで、幼馴染を永遠に観測できるぁ!そして、俺の奥義──幼馴染なれなれびーーーーーむ!』


「ネーミング終わってるな」

「仕方ないから防いであげる」


 BL女が、なんか絡んでる男同士を召喚して俺の前にそいつらを立たせる。今日は殺し愛の二人らしく、お互いが互いに銃を向け合いながらなんか足を絡めてた。これまでの傾向からすれば、上側になってるほうが、実のところは下側になる感じじゃないだろうか。メガネかけてるし。


『無駄無駄無駄無駄!幼馴染は──防げない!』


 ビームがBL化身を通過してしまう。つまり、俺たちに直撃。

 ただ。


「痛みはない……?」

「そうね。ところで、すっかり忘れてたのだけれど、私はあなたの幼馴染だったようね。あなたのお兄さんの奥さんの妹の弟の行きつけのコンビニの店員さんと遺伝子的に合致する人物の親戚の結婚相手の妹が私の母。つまり、私たちは幼馴染ね」


 なんか良くない感じに作用してんな。


『俺の幼馴染は概念的に生み出すことができる。幼馴染とは一体何か。なんなのか。考えたこともないだろう』

「昔からの友達以上のもんはねえだろ」

『否──否だ。友達同士で一緒に出かけたりするか?友達同士で一緒に授業を受けたりするか?友達同士で花火大会とか祭りとかに行くことがあるか?ないだろう。ないはずだ。だが、幼馴染ならできる。幼馴染は何でもできる。森羅万象は現地民の言い間違えだ。本来は幼馴染のことをさす言葉だ!!!!!』

「そんだけ一緒に出かけたり遊んだりしてても恋人っていう関係性にはならない思想だから、少なくともお前は敗北しそうとか言われるんじゃね?」

『ふっ……何を言われても俺には致命傷だ』


 効いてんじゃねえかよ。レスバ弱すぎるだろこいつ。


『この程度で俺はやられたりしない。幼馴染がいる限り、俺は無敵だからな。あとは、貴様に幼馴染なれなれびーーーーをぶつけたら俺の勝利だ』

「むを省略する意味あった?」


 ただ、まあ、なんとかしないといけなくはあった。解決策は普通にありそうだが。


「でも、今のお前の話だと、俺はまだこいつと幼馴染にはなってないわけだよな」

「何よ急に」


 腰を抱き寄せたら、無抵抗に俺の胸に倒れ込んでくるBL女。まあ、少なくともそういう関係性であるという事実は幼馴染で上書きされたりはしなさそう。


『そうだな』

「じゃあ、たとえば」


 BL女の前髪をかきあげた。驚いた表情になって、けれどすぐ目を閉じる。俺も目をつぶって、顔を近づける。唇に柔らかいものがあたる。

 薄目で変態を確認。


『ま、ま、まさか、貴様。わなわなわなわなわなわわわわわわわわ』


 効果はしっかりありそうだった。おののきを言葉にする意味はあんのか?


『わわわわわ幼馴染が幼馴染以外の男に唇を奪われたーーー!!?!!???それネトラレやんけーーーーーーーーー!』


 爆散。性癖能力者は地雷に触れると爆発するのだ。

 

「よし」

「よしじゃないわよ!!!!!」


 倒したんだから、いいだろうがよ。このあとめちゃくちゃ支払った。あと、俺はひょっとしたらこの女と幼馴染だったのかもしれない気がしてきた。

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