僕は無口な彼女と付き合った
僕は無口な彼女と付き合った
20—年10月15日
僕に彼女ができた
一目惚れ。あの日、ただのデパートで出会った彼女はただ途方もない人生を生きていた俺に希望を与えてくれた。
「ぼ、僕の家…行きませんか?」
小声でいきなり変な事を言った僕だが彼女は引き受けてくれた。
「僕と付き合ってください!」
出会って数時間しかたっていなかったが家に来て早々彼女に対しての本音が漏れていた。
(……………)
彼女は喋ってはくれなかったが、耳元が赤くなっている気がした
ガラスの様な目が俺の瞳を見つめる。告白はおそらく成功したであろう
あの日から俺の彼女の生活は始まった
…………………………………………………………………
「僕、実は…彼女できちゃいました〜!」
「は?嘘つくなよw!」
「お前に彼女ができたら俺は学校中の女子全員と付き合ってるわw!」
学校に来てから仲の良い友人2人に彼女ができた事を真っ先に伝えた。
友人2人は「彼女いない歴=年齢」なので羨ましそうに僕をからかう。
でも2人は僕のことを応援してくれた。
「お前に彼女か〜世も末だなw。ってかどこで出会ったん?」
「デパートで一目惚れした」
「え?一日で出会った付き合ったん!?」
「ま〜、そうなるね」
「訳わかんねえよ」
僕は淡々と2人の質問に答えていった。
「それでそれで!どこが可愛いの?」
「やっぱり見た目かなぁ、俺の彼女喋るのが苦手なんだけどよくみると顔が赤くなったりするから可愛いんだよね」
「同居してるんでしょ!今度家いかせてよ〜」
「してるけど行かせねえよ笑!」
キーンコーンカーンコーン
授業始まりのチャイムがなる
「やっべぇ席つかねえと!」
友達にも恵まれ彼女もいる、俺は幸せな生活を送っていた。
………………………………………………………………
「ただいま〜戻ったよー!」
学校が終わり友達との遊びの誘いを断り僕は彼女と遊ぶため家に真っ直ぐ帰って行った。
(……)
彼女はやっぱり喋らないがニコッと笑った気がした。
「は〜数学の斎藤先生まじおもん無い、ずっと教科書読んでるだけやん音読やん、国語やれよ」
(……)
僕の冗談混じりの愚痴を彼女は真剣に聞いてくれた
「膝枕して〜」
そして膝枕してもらって俺は3時間ほど寝落ちしてしまった
「っえ?今何時?7時半?!ご飯の準備しないと!」
急いで夕飯の準備をした
「冷凍食品多くなっちゃうけどごめん!」
(いいよ)
口には出さなかったが彼女は冷凍食品でも僕が作ってくれる料理なら好きらしい
(おいしい)
彼女は僕の美味しそうに僕のご飯を食べた
その可愛らしい食べてる顔で僕はご飯を食べる。
(ごちそうさま)
少食なのであまりご飯を食べないが僕が出したご飯は全て食べてくれる
(お風呂行ってくる)
「俺も入っていい?」
(…いいよ)
僕はご飯をかっこみすぐにお風呂に入る準備をする
「やっぱり肌綺麗だよね〜」
僕はは彼女のスベスベな肌を優しく洗ってあげる
「流すよ〜」
シャワーで泡を流してあげて僕が今度は洗う番
「洗いたいって、いいよいいよ、ちゃんと湯船に浸かってね」
(…わかった)
少しむすっとした顔、ガラスのような目で僕を睨んでる気がした
お風呂上がり、僕は彼女に抱きついた
「ん〜好き好き愛してる♡」
彼女は柔らかい体で僕を包んでくれた
僕の股間が反応してしまった
「今日も…する?」
(…♡)
無言だが顔が赤い。その可愛らしい顔を見た俺は彼女を押し倒した
「お風呂入ったらばかりだけど汚れちゃうね」
部屋の電気を暗くしゆっくりとゴムを装着した。
「じゃぁ、挿れるね」
僕たちは楽しい夜のひと時を過ごした
妊娠については彼女は「大丈夫」と言っていたが怖いので中には出さないようにしていた
…………………………………………………………………
土曜日
僕は8時ごろに目が覚めた
「起きてる?」
僕は彼女の部屋に行き彼女を起こしにいく
彼女はまだ寝ていた
僕はそっと彼女の体をさする
「起きて〜朝だよ〜good morning」
冗談を交えながら彼女を起こす
(……)
彼女は僕の方を見た
「おはよう、これからご飯の準備するからね」
手を繋ぎ一緒にゆっくり階段を降りる
「あ…」
手を繋いで降りていたはずだが彼女の起こしたとき、温かい彼女の体温で僕の手は手汗で濡れていた
手を離してしまった
ボキッ
鈍い音が1回に響く
僕は放心状態のまま階段を駆け降りる
「あ…ああああああああ…」
元々一人暮らしだった僕は床に沢山の物が置いてあった、彼女は落ちた時に物にぶつかってうつ伏せ状態で動かない
「大丈…夫?」
恐る恐る彼女の顔を見てみる
目が取れていた
血は出ていない
ただ彼女はぴくりとも動かない
「うわ、うわあああああああああああああああああああああ!」
絶叫
僕はどうしようもできなかった
「そうだ…あいつら…あいつらに…」
僕は友人に電話をかける
プルルルルル
出ない
プルルルルル
出ない
プルルルルル
出ない
朝ということもあってか誰も電話に出てくれなかった
「頼む誰か、誰か出てくれよおおお!!!あいつが、あいつがああああ!!!」
プルルルルル
出ない
プルルルルル
出ない
プルルルルル
ガチャ
彼女が出来た時真っ先に喜んでくれた友人だった
『おはよ〜朝からどうしたん、今泊まってるんだけど』
夜に遊びに行ってそのまま泊まっていたらしい
この状況が状況なので人手は多い方がいいだろう
「彼女が…彼女が階段から落ちて…」
『階段から!?どうゆうこと?!』
「目がえぐれちゃって…どうすればいいかなって…!」
焦りすぎて言葉もろくに出せなかったが友人がうまく汲み取ってくれた
『わかった、すぐ行くから住所教えて』
「住所は─」
『2時間くらいで着くから彼女さんには頑張ってもらって、あいつも連れて行くわ』
「ありが…とう」
今思うとかなり良い友人だった
「え」
電話が終わり彼女の方を振り向くと指も取れていた
彼女の状態は右目と指が3本ほど取れていた
「ど、どうすれば」
焦る俺は辺りを見渡す
物、物、物、半分ゴミ屋敷みたいな家で俺は何かできるものはないか探す
「これなら」
小学校から使っていた裁縫道具が目に入った
「これなら…」
俺は裁縫道具の中からハサミを取り出す
そしてそのハサミを顔に近づける
「これで彼女を…救えるなら…ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!?」
焼けるような激しい痛み
頭全体が激しい頭痛に襲われる
顔中が血まみれになる
「はぁ…はぁ…はぁ…取れたよ」
右手に握られていたのはさっきくり抜いた右目だった
「これで我慢してね」
僕は穴の空いた彼女の右目に僕の右目を入れた
「あとは…」
そして再びハサミを手に取り今度は指に近づける
「───!!!っ!うぁあ!」
指に力が入らない
じわじわと焼けるような痛みが僕を襲う
「これでいいよね」
切り落とした指を俺は自分の髪の毛で彼女の指と縫い付けた
「あとは…あいつらを…待つだけ…」
出血多量によりいきなり意識が朦朧として僕は倒れてしまった
ピンポン!
そして鍵は予め開けてあったので友人が急いで入って行く
「大丈夫か?!」
友人2人が急いでドアを開ける
その先には
目と指が縫い付けられたボロボロの人形と
目と指が抉れて血まみれで倒れる男1人だった
「うぉえぇえぇええ」
強烈な匂いと血まみれの僕を見て友人1人が嘔吐した
もう1人の友人はこの事態を察してすぐに救急車を呼んだ
…………………………………………………………………
目が覚めるとそこは病室の中だった
人形は捨てられたらしい
「え、ここは?あいつは?」
戸惑っているうちに1人の医者から僕に向かって歩いて行った
「意識が戻ったか!よかったよかった!今君の状態は──」
医者は僕の体の状態とことの重大さを説明してくれた
「君は人形の事を『彼女』と言って強い幻覚を見てたようだけど何か心あたりはありますか」
医者のその一言で無意識に涙が出てしまった
「無理に言わなくていいからね…ゆっくりでいいよ!」
「あの日─」
泣いていて声が震えていた
あの事を思い出すと胸が痛くなる
…………………………………………………………………
僕はデパートで買い物に行っていた
両親が単身赴任でいないので食材や日常用品などの生活必需品はデパートで買っていた
寂しくて誰からも見向きもされない、こんな人生に嫌気がさしていた
買い物も済んで僕はデパートの扉をでた
啜り泣く声が聞こえた
僕は声の方向に振り返ると女の子が1人、ポツンと涙を流して泣いていた
ツヤツヤで黒色な髪、スベスベな肌、僕は一目惚れしてしまった
「ぼ、僕の家…行きませんか」
彼女はいきなり話しかけられて戸惑っていたが涙でぐしょぐしょのまま小さく頷いた
家に向かっている最中彼女は親が単身赴任でデパートで食事をした後に別れたと言っていた
何かの運命だと思った
彼女はその一言だけいって何も言わずに俺の後ろをずっと歩いていた
「僕も親が単身赴任で家にいないんだよね」
その一言を言ったとたん彼女の目が寂しそうに俺のことを見ていたのを俺は覚えている
家に着いた僕は夕飯を出した
「今日忙しくてお弁当だけどごめんね」
彼女は申し訳なさそうに首を振ってそそくさとご飯を食べ始めた
僕もご飯を食べ始めた…何か喋ろう
「僕と付き合ってください」
自分でも何を言っているかわからなかった
喋り始めて一言目で告白
羞恥心で俺は食べていたご飯でむせた
「ごめん…忘れ─」
その時、彼女の顔は耳まで真っ赤だった
そしてガラスのような目で僕を見つめ小さく頷いた
(OK?なのか?)
どっちかわからなかったが彼女の反応を見るのOKだろう
俺は人生初の彼女&同居で胸が躍った
彼女はあまり喋らなかったが時々見せる仕草でどんなことを考えているのかわかった
学校でも友達に言いふらしてミンスタでもプロフィールに「彼女います」と書くぐらいウキウキだった
ただ付き合うならまだしも同居つきだったので尚更だったのだろうか
数ヶ月がたったある日
僕は朝ごはんを作ろうと一回に向かった
そしてテーブルに一枚の紙が置いてあることに気づいた
「さようなら」
紙には一言だけそう書かれていた
「は…?」
心に穴が空いた
いきなりの別れ
数ヶ月の生活で僕は彼女がいないと生きていけなくなっていた
静寂な時が部屋中に流れる
「うおぇ」
あまりなショックに俺は嘔吐してしまった
吐き切った後顔を上げると彼女が好きだった一つのドール人形が置いてあった
今思うとこれが始まりだったのかもしれない
俺はその人形に彼女彼女と言ってあたかも生きているように扱った
お風呂に入る
一緒にご飯を食べる
SEXをする
ただ無意識に人形だと言うことを理解していて友人には彼女が人形だと言う事を一切言わなかった
いや、知らない間に言いたくなかったのかもしれない
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一通り話し終わった後、俺の額には涙が流れていた
「うおぇ」
吐きそうになる僕の背中を医者がさする
「今日はゆっくり休んで下さい」
吐き気も追いついた俺はゆっくりと頷いた
これから数日、いろんな人がお見舞いに来てくれた
「よっ!元気か!まぁ色々あった時思うけどまた飯奢ってやるから早く戻ってこいよ!」
「今日ラーメン行こうぜ」
「オンラインでも授業ができるので体が落ち着いたら連絡下さい」
仲の良い友人から先生
さらには単身赴任に行ったはずの両親がわざわざ駆けつけてくれた
「大変だったと思うけどあんまり無理はするなよお父さんが力になるから」
「お母さんも力になるわよ」
本当に色々な人に恵まれて俺は幸せだったよ
ある時の夕方ガラガラと扉が空いた
ある程度僕のことを知っている人は全員お見舞いに来たので誰だろうと首を傾げた
ツヤツヤで黒い髪、スベスベな肌
彼女だった
「…え」
頭の中で整理つかなかった
連絡もとっていなかったのでどうしてここがわかったのか疑問だった
「…ごめん」
彼女はいきなり謝ってきて泣いた、あの時のように
「ぱぱとままが単身赴任に帰ってきて…でもそれ言ったらあなたが悲しむってわかってて…それでいきなり家を出ちゃって…」
口下手な彼女が精一杯喋る
「でも、離れ離れになったら悲しんじゃうから忘れで欲しくって…」
彼女は一緒懸命説明した
その姿に俺も涙が出てきた
「なんで、ここがわかったの」
「ミンスタに位置情報機能がついたの…それであなたが病院で…もしかしたら私のせいかもって…」
彼女と別れてからほとんどミンスタを見ていなかった僕はその機能の事を知らなかった
「ごめんなさい、ごめんなさい」
ひたすら謝る彼女に俺は胸が痛くなった
「おいで」
僕は彼女の頭を優しく撫でた
「確かに色々あってけど僕は君が戻ってきて嬉しいよ」
慰められて彼女の涙が落ち着いた
「あの時…覚えてる…あなたが告白してきた時」
「あぁ」
再び彼女は目頭を熱くして言った
「いいよ」
ガラスのような目で俺を見つめて行った
「そ、それってOK─ってこと?」
無口な彼女は喋らなかったが耳元と顔が真っ赤になって小さく頷いた
「今度は…離れないから…」
あの日、ただのデパートで出会った彼女はただ途方もない人生を生きていた俺に希望を与えてくれた
そしてこの日から僕と彼女の生活が始まった─
僕は無口な彼女と付き合った
今度は本物の動く人形が——




