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みんな俺のことスキすぎじゃないか? ~関東最強だった元ヤンキー市役所職員、異世界でも最強です~  作者: 腐肉豆腐


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第一話 守り続ける日常

駅から少し離れた場所に建っているアパートの角部屋に住んでいる、神崎龍司(かんざきりゅうじ)28歳と神崎天嶺(かんざきあまね)15歳と神崎魔慧(かんざきまさと)15歳。

龍司が2人のために守ってきた日常がここにあった。


 四月はとっくに始まったというのに、その日の朝は妙に冷えていた。


 吐いた息がまだ白く、古びたアパートの外階段には夜露が薄く残っている。鉄の手すりに触れれば、まるで冷蔵庫の奥に置かれた缶ジュースみたいな温度が指先へ刺さった。


 二階の角部屋。


 築三十年以上、壁は薄く、隣の住人のくしゃみで季節の変わり目を知れるような物件。


 その一室から、朝っぱらから何やら焦げる匂いが漂っていた。


「……天嶺」


 低い男の声が、台所の方へ向けて静かに飛ぶ。


「はいっ、お兄ちゃん!」


 元気な返事と同時に、ジュウッ、と嫌な音がした。


 続いて、


「きゃっ」


 という、実に分かりやすい失敗音。


 神崎龍司は額に手を当てた。


 朝六時半。まだスーツの上着も着ていない。白いシャツの袖を肘までまくり、筋肉質な腕には濃い刺青が覗いている。


 肩から手首まで走る龍の意匠。


 普通なら暴力団関係者か何かにしか見えない。


 だが本人は、市役所勤務十年目である。


 窓口担当だ。


 世の中というのは、案外見た目だけでは分からない。


 もっとも、市民からはしょっちゅう苦情が入る。


 『威圧感がある』


 『なんか怖い』


 『でも説明は異様に丁寧だった』


 最後だけ救いだった。


「だから言ったろ。油を入れてから火をつけろって」


「ちゃんと入れたよ?」


「煙出てる時点でたぶん何かが間違ってる」


 台所に立つ妹――神崎天嶺は、エプロン姿で首をかしげていた。


 艶のある黒髪が肩を流れ、大きすぎるくらいの胸元がエプロン越しにも主張している。


 本人は無自覚だ。


 無自覚というのは時に凶器になる。


 しかも顔が整いすぎている。


 朝日に照らされた頬が妙に白く、睫毛が長い。どこぞの女優かと思うほどの造形なのに、フライパンの上では卵が炭になっていた。


「お兄ちゃん、今日だけは私が作るって決めたの」


「昨日も言ってたな」


「今日は成功する気がする」


「その自信どっから来る」


 焦げた卵焼きからは、もはや卵というより工事現場の匂いがしていた。


 龍司はフライパンを奪い取り、コンロの火を止める。


「……魔慧」


「はいはい、だから言ったのに」


 背後の食卓から、ため息交じりの声。


 新聞を広げていた弟――神崎魔慧が、呆れたように顔を上げた。


 双子だが、姉とは似ているようで似ていない。


 顔立ちは中性的で、長めの前髪が頬に落ちる。肩幅は狭く、制服の試着をしたら店員に「妹さんですか」と真顔で聞かれた過去がある。


 声も高い。


 身長も低い。


 本人が最も気にしている部分なので誰も触れない。


「姉さんに火器類を持たせるのは国家レベルで危険だって」


「ひどい!」


「昨日の味噌汁、鍋が溶けかけた」


「それはお鍋が弱かったの!」


「鉄鍋が?」


「……」


 反論に詰まった。


 龍司は冷蔵庫から卵を取り出し、手際よく割る。


 ジュッ、と今度はまともな音が鳴る。


 油の匂いが広がる。


 焦げ臭さの奥に、ようやく朝食らしい香りが戻った。


「明日の入学式の資料もう一回確認しろよ」


「したよー」


「制服も問題なし」


「定期券」


「持った」


「筆記用具」


「お兄ちゃん、それ昨日から三回目」


 魔慧が苦笑する。


 龍司は少し黙った。


 フライパンの上で卵を返す音だけが小さく響く。


 窓の外では遠く電車の走る音が聞こえた。


 春の朝独特の、少し湿った冷たい風が網戸を揺らす。


 十年前なら、こんな穏やかな朝は想像もしていなかった。


 当時の自分は、喧嘩しかしなかった。


 関東で龍司の名を知らない不良はもちろんヤクザだっていなかった。


 ナイフや鉄パイプもときには弾だって飛んできた。


 殴った。


 殴られた。


 潰した。


 最後には誰も近づかなくなった。


 だが十八の春、全部終わった。


 終わらせた。


 あの日から。


 あの事故の日から。


 フライパンを持つ手に、一瞬だけ力が入る。


 気づいたのは魔慧だけだった。


「……兄さん」


「なんでもねぇ…」


 卵焼きを皿へ移す。


 その時だった。


 天嶺が後ろから抱きついてきた。


「お兄ちゃん、明日はお休み取れないの?」


「無理だ。めっちゃ忙しくなる時期だぞ」


「入学式一緒に来てほしかったな…」


「…午後なら行ける」


「ほんと?」


「仕事片付けばな」


「やった」


 抱きつく力が増した。


 柔らかい感触が背中に押しつけられる。


 朝からこれは心臓に悪い。


「離れろ」


「やだ」


「熱い」


「えへへ」


 龍司は真顔のまま、内心かなり困っていた。


 妹がでかい。


 いろんな意味で。


 成長速度がおかしい。


 誰に似たのか知らないが、兄として視線の置き場に困る。


 風呂上がりに無防備に廊下を歩かれるたび、精神力が試される。


 しかも本人は無自覚だ。


 神は試練を与えすぎる。


「兄さん顔赤い」


「うるさい」


「だからピュアピュアチェリーボーイなんだよ」


「朝から殺されたいのかお前」


「事実を述べただけ」


「魔慧ぉ!?」


 天嶺が笑う。


 その笑い声は鈴みたいに軽かった。


 この時間を守るためなら何でもできる、と龍司は何度も思ってきた。

どうも、腐肉豆腐といいます。 

勢いで書いちゃったものなので全然完成度高くないと思います。なので…いっぱい意見くださぁい!

ダメ出しとかいいところとか(ないと思うけど)どんなことでもいいんで意見くださぁい!

おねげぇしますぅ!


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