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第13話 青い紅葉

 綺羅のチャットから数日後、課外授業が始まった。この課外授業は学校の旧校舎で隣町なので夜まである。昼間に各班が神社仏閣を自由に回って夜にとっておきがある。そのとっておきは何なのか学級委員のゆりと煌以外は誰も知らない。


 累はジャージに身を包み、現地に向かうと女子たちがスマホを向ける。累のズボン姿に皆うっとりしているのだ。

 しかし、累の意識は綺羅に向いていた。累も流石に綺羅の気持ちがわかっていた。


(…私は気にしてないが、月詠のことだ。憐れむのはわかる。)


 累はあの最後に書いた日記のページを思い返すたびに胸が締め付けられるような気がした。すると、ゆりが累の背中を叩いた。


「おっはよー、累!ジャージ可で良かったね!動きやすいし。――ってどした?」


 ゆりは累の暗い顔に目を丸くした。累の目にはわずかだが涙があった。


「実はな、この前の交換日記で――かくかくしかじか」


 累はゆりに交換日記で起きた出来事を話した。理解したゆりは両腕を組んでうなづく。


「それはきちんと話すべきだよ。でも二人きりで話した方がいいよ。」

「二人きり?なんでだ?」


 首を傾げる累にゆりはウィンクをする。胸を張っていて自信有り気だ。


「…それはね、累が王子様だから!」

(質問に答えてないじゃないか…。)


 しかし、累の周囲には目どころか全身でハートを感じさせる女子が多かった。この場で綺羅との仲の亀裂を知られたら彼女たちが何をするのか…。考えるだけで恐ろしい。


「…わかった。とりあえず回ろう。綺羅は紅葉が見たいそうだ。」


 累の発言にゆりは驚く。


「紅葉って今夏だよ?ジャージだってほら袖まくってるし。」


 二人が綺羅に目をやると俯いたままの綺羅がいた。相当心に響いたらしい。


「じゃあ、紅葉の絶景スポットから行こうか!」


 ゆりが咳払いをして綺羅と累を含めた5人班を動かした。


――それから累たちは神社でお参りしたり、猿がいるという公園に行ったりして楽しんだ。

 しかし、累と綺羅は短い会話だけで距離が縮まることはなかった。


 累は綺羅に謝りたかった。


(月詠…。私は大丈夫。だって――)

「…はーい、集合!皆さんお待ちかねの”とっておき”の時間だよー!」


 ゆりの言葉で累の流していた涙が引っ込んだ。続けて煌がメガホンで言葉を継ぐ。


「”とっておき”は――」


 煌が長くドラムロールを始める。そして、”とっておき”は――


「――”肝試し”でーす!」


 累はその言葉に背筋が凍った。赤かった顔も一瞬で真っ青だ。


「…き、肝試し、だと?」


 実は累はお化けや怪談が大の苦手だったのだ。中学の文化祭でお化け屋敷をやっていたとき、累はしばらくの間声が出せなくなっていた。しかも、その原因は鏡で見た幽霊の衣装の自分の姿だったのだ。それくらい累は肝試しを嫌っていた。


 その累の青い顔を綺羅は見逃さなかった。

※この物語はフィクションです。

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