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第10話 虹の下の決着

 配役が決まり、チャイムが鳴り終わるといつの間にか昼休みになっていた。


 累は今朝の雨の中のやり取りを思い出して、目を丸くしたが、すぐに表情は絶望色の染まった。


(…あぁ、黒須に呼ばれてたのすっかり忘れてた。行きたくない…。)


 累の足は重り、いやコンクリートで固められたかのように重かった。だが、脳裏に浮かぶのは2年ぶりの黒須の必死な顔。


「…行くか。誰かを悪人にすれば、NRLの連中が何をするか…。」


 あのハイエナのような女子たちの顔が目に浮かぶ。想像しただけで累の丸まった背がピンとなる。


 累は重い体に鞭を打ち、無理やり廊下から這い出た。


――屋上


 浦島高校の屋上はベンチがあって、見晴らしがいいので学生のお気に入りスポットである。


 累は手で太陽光を遮りながら晴れた空を見上げる。


(…今日は予報通り、午後に晴れたな。――あっ)


 累の前方には大きな虹が鮮やかな色を放っていた。

――しかし、その下には…


「――月詠?」


 累は目を丸くした。目の前のベンチで綺羅と北斗が一対一で話していたのだ。累は慌てて近くの彫像に隠れて聞き耳を立てる。二人の顔色はかなり曇っている。


(これは容易に話しかけられる空気ではないな…)


 累は二人の後ろで息を殺して目を細めていた。


*****


 綺羅は眩い眼差しで北斗を真っすぐ見ている。それに対して北斗は仏頂面だ。


 早速綺羅は口を開く。


「今さら二階堂と何を話すんだ?」


 北斗は嘲笑する。


「…なんだ?恋愛対象なのか。綺羅だったか?二階堂は今や『累様』だ。お前みたいな奴が関われる女じゃない。」


 綺羅の歯に力がこもる。


「二階堂は可愛い女の子じゃないか!なんで真剣に向かい合わなかったんだ⁉」

「…っ!」


 北斗の目からは涙が零れる。彼の中には累の可愛らしいしぐさと男性の演技中の累の姿がぶつかりあっていた。そして首をガクリと落とした。


「…お、俺は、二階堂を、悲しませた、のか」


 北斗は頭を抱えてずっと下を向いている。そして綺羅に呟いた。


「俺は恋人失格だ。綺羅、二階堂を――累を頼む。」

「ん?」


 綺羅のわけのわからない表情に北斗はわずかに笑みを浮かべていた。


――しかし、そのとき


「きゃー♡累様が虹の下にいるぅ」

「…絶景だ♡」


 後ろから女子たちの黄色い声が聞こえて二人は後ろを振り返った。慌てて累は「静かにしろ」と指を口の前に持って来ていたが、全く効果がない。


「累、何してんだ?」


 綺羅の何の含みもない問いかけに累は顔から機関車のような煙が出そうになった。


「…な、何でもない!何も聞いてないから、な!」


 累は濡れた地面にバランスを崩しながら屋上から走って去った。


「…おい、待てよー!」


 綺羅も、ついでに女子たちも累を追いかけていった。


 その様子を北斗は温かく見守っていた。


「こりゃあ、あの二人がくっつくのはそこまでかからないな。」


 雲一つない青空には、大きな虹が今もなお存在していた。

※この物語はフィクションです。

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