表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ねこのぷーちゃん、テレビっ子になる(後編)

作者: 池畑瑠七

 前編より続きます。


 一瞬にして猫用動画の魅力にハマり、テレビっ子になってしまったぷーちゃん。

 そのテレビ依存を脱却させるための方法。ワクワク感たっぷり、新しい刺激強め、運動量アップ、依存性&危険度少なめ。

 この4つを満たすもの…試行錯誤で辿り着いたのは、彼にとっての未踏の地だった階段から下の空間を「探検エリア」として一部開放する、という方策だった。


 Goサインが出たその日の夜。

 ぷーちゃんの夕ご飯は夕方早々に終わるので、そのあとに我々が夕餉を食べている間は「早く食べ終わんないかなー、遊びたいなー」の「出待ち」状態になる。

 いつもの彼はテーブルを横目にチラ見しつつ、これ見よがしに部屋の真ん中でヘソ天をして、ぷーちゃんヒマだよ!待ってるよ!の地味かつ最も効果的なアピールをする。

 夕餉あとのその時間が、今般のミッションを試行するには最適だろうと思われた。


 食事がすんで我らが立ち上がると、足元にやってきて「あそぼうあそぼう!」と一緒に歩き出すぷーちゃん。

 ……よし、いまだ!


 いざ!!


 シンクに空の食器を置いてそのまま数歩進み。足元のぷーちゃんが一緒に来ていることを確認して、階段のスライドドアの取っ手に手をかけ。

 彼の目の前で、オープン!


 ……


 ぷーちゃんが、止まった。


 いつもなら、彼の目の前で素早くシューっと扉が閉められ、一瞬だけしか階段そのものを見ることはできない。過去数回だけ、閉めそびれた扉の隙間から偶発的に階下へ降りてしまったことがあったが、気付かれ即「だめよ」と連れ戻されてしまっている。だから、そこから向こうへは「行っちゃダメ」な世界なんだ。

 それが、今。

「行ってみてもいいよ」と。満面の笑顔が自分に向けられ「開かずの扉」が開け放たれているのだ。


 そりゃ、困惑するわな(笑)



 ぷーちゃんは目が点になったまま階下をのぞき込むとすぐ振り向いて我らの顔を見、また階段を見下ろして、躊躇している。


「いいよ、行ってごらん。何があるかな~~?」

 ぷーちゃんの一挙足一投足を、そのままじっと見守る。


 ええ、いいの…?行っていいの…?なんで? ホントに…?


 立ち竦み考え込むこと数秒。

 とん。

 ぷーちゃんが一段めに恐る恐る、踏み出した。両足を揃えて「とん」。まずは一段。

 そのまま行くかと思ったら2段目で四肢を揃えて止まり、こちらを振り返った。

「ホントに、いいの???」


「いいよ」ニコニコ笑って、待つ。


 くるっと階段に向き直ると、3段目、4段目。ゆーっくり1段ずつ、両前足を揃え、尻尾を上げて、慎重に降りていく。

 その後ろ姿、進み方には見覚えがあった。 先代のネコではない。四肢の長かった先代は、片足ずつ軽やかにトントンと下りていた。

 あああ、昔、一緒に住んでいたおねえちゃんウサギの歩き方にそっくりだ!

 前足、後ろ脚を揃え、へら型のシッポを上げて可愛いお尻を上下させながら、ぴょんぴょんと進む後ろ姿。…あれ、可愛かったんだよねえ~……何だか非常に感慨深い想いが湧いて来た。


 ぷーちゃんはそして踊り場でまた、ピタリと止まってこちらを見上げた。

「ほんとに、いいんですか?なんでですか?マジで、いいんですか?」


 もの言いたげというよりも もう目で全身で、語りかけてくる。「これはどういうことなん?」

 ワクワクが抑えきれず、けど戸惑いと疑いもぬぐい切れず。メチャクチャいぶかし気な眼差しと挙動だ。

 ぷーちゃん、頭使いすぎて知恵熱出しちゃいそうだな(笑)


 こちらもまた満面の笑顔で「いいよ、偵察しておいで。下は大丈夫かなあ~~異状ないかなあ~~、ぷーちゃん、見てきて!」


 それを聴き終えると、彼は踊り場からまた下へ慎重に下りだした。

 とん、とん、とん、ちいさな足音が聞こえてきて、スッと音が止んだ。

 おお~~、どうやら無事階下に到着したようだぞ?

 ヨシヨシ。


 少し間をおいて、あとから降りてみる。


 おそるおそる、腰もシッポも低めにしてフロアをそろりそろりと慎重に見て回っているぷーちゃん。


 突然許された1階未開の地への侵入。どうしてだろう、わけわかんない…ぷーちゃんにしてみたらそりゃ????である。戸惑うしかない事態だ。警戒するだろう。

 下りてきた私を見て「ダメって追い返される?」と思ったらしく、一瞬体を硬くする。


「あらあらあらぷーちゃん、探検してるの!イイねぇ~楽しいねぇ~」

 話しかけるとホッとしたようにまた動き出した。なんでかはわかんないけど「行っていい」って!興奮とウキウキワクワクがMax状態だ。


 ヨシヨシ イイ感じだ、このまま少し放置しよう。好きに遊ばせておくことに。


 数分後、もう一度様子を見に行くと、「今度こそダメっていわれるかな?」とおもったらしく、階下に現れた筆者の姿を見ると急いで すたたたた~~~!!!っと階段を駆け上がって行った。下りた時とは打って変わって、凄い素早さだった。


 2階へ戻ったぷーちゃんに話しかける。

「楽しかった?偵察ありがとうね、異状はありませんでしたか?」

 するとぷーちゃんは開いたままのスライドドアに歩み寄り、再び降りていった。今度は躊躇は薄れつつもまた、両前足を揃えながらうさちゃんのような後ろ姿で、とん、とん、とん。

 可愛い……(*´ω`)


 数回行ったり来たりを繰り返し、だいぶ気が済んだのだろう、その後さらに残っていたご飯をモリモリ食べてお水を飲み、リラックスタイムに入った。

 興奮と好奇心が満たされ、階段の上がり降りで大分体力も使い、心地よい疲れがあったのだろうな、それからその晩は深夜も起きて来ず、ぐっすり。

 朝まで超熟睡だった。


 こうして初めてのミッションは大成功に終わった。



 この「探検遊び」はプーちゃんにとって思った以上の効果を齎してくれた。

 まず階段の上り下りが良い運動になるという事。

 ぷーちゃんのこれまでの日常ではワンフロアの水平移動がデフォルトで、上下移動ってやつはせいぜいキャットタワーと机、いすやベッド、くらいしかなかった。

 だから遊びを兼ねた階段の上り下りは今まであまり使わなかった部分の筋肉を連続して使うためか、一日に何度も往復すると人間がそうであるように、ぷーちゃんにとっても結構な運動量になってるようだ。(熟睡時間がぐんと増えた!)


 そして彼の旺盛な好奇心は向く先が「偵察行動」に強く出る子だから、前から気になって仕方なかった1階を見回れるようにしたことで、その好奇心と運動の両方をうまい具合に満たす格好の遊びになったのである。



 それからの生活は、こう変わった。

 1階部分を徐々に、開放していく。一度で全部だとワクワクが薄れちゃうから、ワンエリアずつ徐々に、が良かろう。

 まず第一弾で、階段と玄関ホール。第2弾で、その脇の納戸。第3弾で、続きの客間。

 その先のおばあちゃんエリアはネコ対策が全く出来てない空間だから、安全管理上のこともありまだ当面、進入禁止を保つ。そんな感じで段階的に、彼のワクワクがなるたけ長く続くように、且つ急な開閉に驚いて玄関ドアから外へと飛び出したりがないよう注意を払いながら、対応していくことになった。


 そして肝心のテレビっ子対策は。

 一緒に遊ぶ時は全力。基本はネコじゃらしでの運動会だが、お気に入りのじゃらしが見つかってまた最近は食いつきがよくなり、よく遊ぶようになった。

 遊ぶ時はこっちも全力で全集中。気が済んでくつろぎ体制になるまで、つきあう。一日1-2回、長くても10分だしな。

 そして、時々階段を開放して探検を促す。


 テレビは彼が起きている間は基本オフ。どうしても、のときだけ点ける。

 その際まだ音に吸い寄せられてきて台の上に乗ろうとすることもあるけれど、その度に「ダメだよ」と抱き上げて下ろす事を繰り返してみた。

 基本抱っこが苦手な子だから、「ここに乗っちゃだめなんだ」と学習し、「ダメだよ」と言いながら近づくと自分からすっと画面から離れるようになった。(尚更抱っこが嫌いになってしまうかも?というリスクもあったが、直ぐに効果が出たからそこまでには至らずセーフ!)


 おおお、何て賢いのぷーちゃん!!!(超、親馬鹿 笑)


 こうして、まだ完全ではないものの大分、テレビとおやつへの執着が薄れてきたのである!それと共に熟睡時間が増え「ねえねえ、かまって!」の要求行動もぐんと減り、随分と落ち着いて来た。


 漸くまた、大好きなMVや映画・ドラマなどを落ち着いてリビングで見れるように少しずつ、なってきた。


 ぷーちゃんの学習力を信じ、家族一貫した姿勢で。辛抱強くより良き手段でもって接することで、ひとたび身についてしまった困った習慣も大きな改善が図れることを、また我々はちいさな彼に学ばせて貰ったなあとつくづく思う。

 爪きりの時と、一緒だ。子育てや、人とのコミュニケーションも、きっと一緒だな。自分自身に対しても、きっとそう。


 激動の2025が過ぎ、新たな年を迎えた。

 ありがとう2025、関わって下さった励まし支えて下さった皆様、本当にありがとうございました。


 明けましておめでとうございます、2026も自分なりに出来る事を、誠実に。精一杯頑張ります、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 皆々様の2026が健やかで幸多き素晴らしき年となりますよう、心よりお祈り申し上げます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ