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時雨時の青年編ー第1話

今回の話の内容ー


召喚の間で、1人苦心する大国主命。


様々な神様を召喚するものの壊滅的に断られる。



そんな中、1人の神様を召喚することが出来たのですがー

大国主命は、苦心していた。

神々を外国の神話、日本国神話から召喚するには、相当な力が必要になるということは、あの会議から自分自身、分かっていたのだ。


会議終了後

試しに何人かの神を召喚してみたものの、自分の案にどうしても否定的な神々が多かった。


「そんな馬鹿げたもの、やるなんてお断りだ」


「それを与えられるのは嬉しいが、仕事を振られるのはやめてくれ。そんなもののためにやるのはちょっと違うのでは?」


「日本国の神の柱の1人である貴方様がそうおっしゃるとは、何とあさましいこと。お断りさせていただきます。」


などだ。



しかし、大国主命は、あきらめずに、次の神様にゆかりのある服を召喚台の上に載せる。


「この平安装束と、我らの中でザワついたこの写経の写しを載せて…。本当に来てくれるか心配だがな。」


召喚台の上に置いたもの

・紫色の直衣(のうし:平安時代の天皇の服である。)

・赤い字で記された写経数ページ以上の紙の束

(その人が死ぬ前に弟に送ったとされている写経)

の2点。


「喚んで、来てくれるか不安だが、この方ともう1方は、こんな感じにしないと来ないという縛りだからな…とりあえずやってみるか。」


それから、召喚の呪文を唱えはじめ10分後ー。


召喚台の上に1人の青年が現れた。


「はて。我は何故よばれた。白峰神宮に居た身が何故、現世と神の世界の狭間にいる。また裁かれるのか我は。」

寂しそうな顔をする青年の身にはきちんと供えていた直衣が。


「ようこそおいでくださいました。」


その青年は、大国主命を伏せ目で見ていた。


「貴殿か。我をよんだのは。我は禊を1000年前に受けたはずぞ。禊の内容に1000年ぶりに追加する気か?」


「いえ、そうではありません。今回は、禊ではなく、私から貴方様にお願いをしたくお呼びしました。【崇徳上皇】さま。」



【崇徳上皇】と呼ばれた青年は、自分が着ていた直衣を見て怯える。


「貴殿。これは、嫌がらせか?我はもう、この直衣を着ることは許されぬみぞ?それに、足元にあるこの血文字の写経まで。嫌がらせで呼び出すとはいい度胸であるな。」


崇徳上皇は、大国主命を睨みいらだちを顕にした。


「貴方様をお呼びするには、これがいいと、上の神から聞かされていたので、御無礼を働きました。申し訳ございません。」


「今回だけぞ。赦すのはな。して、お願いごととは何ぞ?」


「それは。」


大国主命は、会議での発言などを分かりやすく彼に説明した。



「喫茶店を開く。か。我じゃなくてもよかろう?怨霊だった我が居たら不幸にしかならん。他を当たれよ」


「私は貴方様が適任だと思っているからここに呼び出したのです。」


【適任】という言葉に不審に思った崇徳上皇は向き直り言う。



「我が【適任】?なにたわけたことを言っているのだ?我は人として生きてきた身だが、途中で怨霊に変わり、日本国を怨み、恐怖に落とした身ぞ?!分かってて言っているのか!」


怒る崇徳上皇に、大国主命は、優しく言う。


「その、【人として生きてきた】ところが、貴方様がこの案を叶え、そして、人々を癒せる力の強みだと思うのです。」


「なにを。」


戸惑う崇徳上皇に向けて真正面に立ち言う。


「私は、日本国の神の柱の1人ですが、人間として生まれ落ちたことも生きてきたこともございません。【人間としての経験が無いのです。】です。」


少し頭を下げ悲しむ表情から、自信を持った表情に切り替え崇徳上皇を見る。


「ですが、貴方様のように【人間として生き】ていた事のある方は私の考えていることを実現し、叶えてくださることが出来るのです。人間として生きていたのならば、人の苦しみ、悲しみ、寂しさを分かち合えると考えております。どうでしょうか?崇徳上皇様。」


考えた彼は右手で口を覆い、困った表情で見つめる。


「大国主命、貴殿の言いたいことはわかったが、我は今一度言うが、【怨霊】だった身。過去でもその出来事は変わらぬよ。足元の写経の写し、これは、後白河に送ったものの見事に破られて返ってきて、怒り狂い、こう言った。


ーーーーーーー

日本国の大魔王となりて、

皇(天皇)を民に引き下ろし、

民をば、皇に成しあげん

ーーーーーーー


今思えば恐ろしい発言をし、死んで、大天狗のような姿で怨霊に変わり、日本国に恐怖をあたえた。


こんな我が、喫茶店の店員になり、人間の相手をするとは、烏滸がましいとおもうのだが?」



そう、崇徳上皇は、日本国の3大怨霊の1人。

日本に恐怖をあたえ、怨念で人を殺し、そして、疫病を流行らせた人物と言われているのだ。


彼自身、今は怨霊から神様として祀られ白峰神宮に居る。


反省をしている身のため、大国主命の考えを叶える役割を与えるのは彼にとって、大間違いだとかんじているのだ。



「崇徳上皇様。禊はまだ続きますが、今はそれとは別のことをお願いしたい。怨霊であった過去はけせる訳でもないが、是非とも貴方様のお力と知恵を私のその喫茶店でお貸しして欲しい。このとおりです。」


大国主命、立礼で頭を深々と下げ始めた。


その様子を見て慌てる崇徳上皇は、深々と頭を下げる大国主命に触れ直させようとするが、ビクともしない。


「お、おやめ下さい!我ごときに、頭を下げるとは何事ぞ?!我が天照大御神殿や諸々の最高神に怒られてしまう。【日本国の神の柱に頭を下げさせるとは如何様なことだ!】と!だからやめてください!」


「私は、今の現代社会の日本人の心に少しでもほんの少しでもいいんです。

不安を安心に。

絶望を希望に。

苦しみを楽に。

悲しみを喜びに。

闇に、心の闇に光を灯す、それができたら、それはこれからを生きる人々に未来を与えることができるとおもっているのです。だから、どうか。お願い致します。」



崇徳上皇はその言葉を聞き、人間だった頃の記憶を思い出していた。



彼は鳥羽上皇の子供ーとされているが、実は後鳥羽院の子供とされていることがあった為、

「伯父子!鳥羽上皇の息子ではない!」

と言われ、鳥羽上皇からは距離を置かれ、

自分が即位したとしても、周りの摂関家や公家の言いなりの操り人形になっていたために、心の無い発言を浴びせられていた。



生まれても、父親からは愛されず、操り人形同様な扱いをされ、怨霊。怨霊から神様になったが、彼にはー

「報われなかった。」

「愛とは?誇りとは?本当にあるものなのか?」

「形だけの王ー。」

この言葉がぐるぐると蛇の形になり彼を縛り上げていた。


ー言葉を出しても、報われることがないのが

我の人生かー。


そう諦め続けていた自分に、大国主命は、

【貴方様が必要なんだ】

と言う。


「大国主命、あまりまだ我は喫茶店とやらで店員として働くのはどうかとおもっている」


「そうですか。」

力の無い言葉が、大国主命の口から吐き出される。



「だがな、こんな我でもよければ、手伝わせてもらう。」



「本当ですか!?」

頭を上げ喜ぶ表情の大国主命を見て、崇徳上皇は右袖で口元を隠しながら、目を細めて言う。


「神に二言は無いぞ?そうだろ、大国主命。」


「崇徳上皇様、ありがとうございます!」


「日本に【大雨、飢饉】が起きても我のせいにするなよ?」


「もちろんですよ。」


「して、喫茶店で、我は何をすれば良いのだ?」


大国主命は、大きな袋からA4の紙を5枚取り出し、彼に渡す。


その内容を見た彼は、目を丸くし、大国主命をまじまじと見た。


「貴殿よ、これは正気か?」


「ええ、正気ですとも。」


「ほ、ほほう。」


崇徳上皇はその内容を見て苦笑して読み進めていた。


さて、

崇徳上皇様に渡された紙には、なんと書かれていたのか…。

大国主命の現代日本で神々が経営する喫茶店の準備はまだ始まったばかりです。


ようやく(?)1人の店員(神様)を確保できました

しかし、まだまだ足りないので、大国主命また召喚しようとしています。

ただ。相当力が削られたため、崇徳上皇と共にできるところから準備することになりそうです。



また次の話までお待ちください。

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