王会議の幕下げ
俺がふと周りを見ると、馬は骨に、観覧車のゴンドラは回転刃に変わっていた。あいつはまだ本気を出していなかったということだろうか。
「ヒュプノスの野郎、お化け屋敷が本体だったのか?」
5体の骨の馬は身軽で長い体を器用に使い、次々と攻撃を繰り出していく。この攻撃は、地をぐるぐる這うような回転刃も同時に避けないといけないのも相まって、非常に避けにくいのである。
『攻撃:ローキック』
『攻撃:パンチ連撃』
「くっ…ヒュプノスの弱点は本体ってことか……」
さっきまでまだ可愛げがあった馬やゴンドラは、ただの骨や回転刃になってしまい、ヒュプノスの遊園地を思わせる外見はまるで地獄のように変わってしまった。
「属性がわからないな……とりあえず広範囲の攻撃を当ててみるか」
俺は魔法を繰り出そうとするが、相手の属性がわからず、一度躊躇する。地獄ということは炎属性だろうか。
「魔法:万物創造! 擬似魔法:大津波!!」
俺が放った大津波は、謎を使っていたからだろうか、津波がコーヒーの膜をも覆い尽くし、そのまま膜は消えてしまった。攻撃力はもとに戻り、骨の馬はバラバラに崩れ、一見倒したように見える。馬の骨は も回転刃も紫の色をした何番の光った線になって、観覧車のホイールの真ん中に吸い込まれ終わった瞬間、魔法の詠唱が脳に直接流れてくる。
『全てを終わらせる暗黒の光よ、やがて完全なる闇と化しなにもかも無に還すがよい』
「早急に奴の口を封じなければ世界終わるわよ!? 草花! 魔法やらアイテムやらでなんとかして!」
「なんとかしてと言われましても…! 対処しかね……はっ…!」
俺はふと、ある魔法について思い出す、”始爆再爆終爆”、新規魔法の1つである。この前、プルーリに言葉だけで教えてもらってから、実践が難しすぎて習得に時間がかかった魔法だ。これを使うとセンター島もろとも爆散してしまうかもしれないが、あいつらがなんとかしてくれるだろう。
「魔法: 始爆再爆終爆!」
「草花さん! 俺のたちはどうすればいいんっすか!?」
「10秒後に爆発が続くから俺の後ろに隠れていろ!」
全員が俺の後ろに隠れたことを確認すると、もう5秒前までと爆発までのカウントダウンが刻一刻と迫っていく。もうすっかり眠気が覚めてしまった。
[大きい爆発音と小さい爆発音が交互に聞こえる]
「……ん? 生きてる! ということは…勝ったのか?」
「草花! 大丈夫か! おーい!」
俺は始爆再爆終爆を使った反動で少し眠っていたようだ。電気の音がやたらとして騒がしい気がするが、気のせいだろうか。
「草花、やばいわ、あいつの再来だわ、水魔法効かないのやばいわ」
「兄貴! あいつがまた来たぞ!」
「あいつ、また来たのか? 今度はセンター島に?」
目を覚ますと、ヒュプノスの姿はなかったが、なぜか、プラマイスが俺たちの前に立ちふさがっていた。世界8大王国の王や王女が全員出席する王会議の時になら、国滅ぼしにはターゲットがたくさんいる状態。当然動かないわけがなかった。
「ここは戦うしかないようだ……! とはいえ、俺はもう魔力の限界だし、武術しか使えないんだ…フィジックス! 協力してくれるか?」
「いいよ! 国滅ぼしとは一回戦ってみたかったんだ」
「私が国滅ぼしのNo5だからって倒せると思っているのか? 実に滑稽だ」
プラマイスはそう言った直後にS極の左腕とN極の右腕を寄せ付けた。俺はこいつを倒す作戦を実行するために、ショコラとタクリカルを呼んだ。
「作戦はこうだ、ゴニョゴニョゴニョ……」
「は、はい! わかりました! 魔法:腐敗・炎菌!」
「くっ…持続ダメージとは姑息な真似をする……」
やはりプラマイスに炎は効くらしい、次はタクリカルの出番だ。磁石に弱いものは動くプラモデルを作る際に色々と学んだから覚えている。
「タクリカル! 作戦の通りだぞ!」
「あいわかった! 火傷棍棒!」
ショコラの魔法で弱ったところを、タクリカルが十分なダメージを与える。だが、これではまだ倒し切れないだろう。だからトドメは俺がなんとかしようとしていたのだが、今回は強力なフレンドが現れたもので、そいつに任せることにした。
「さ、戦おうか…ヒュプノスの時は相手の能力がわからなくて時間が来てしまったけど、今回は普通に倒せることがわかっているから一瞬で終わらせる…よ!」
フィジックスが槍で前方の空を突くと、プラマイスの腹を突き抜いていた。フィジックスは何回もその場で空を突き、プラマイスの後ろに瞬間移動したかと思えば、そのまま槍を右から左にはらってプラマイスを俺の方に飛ばした。
「うわっ!? え!? ちょっ…!? ああもう! やったれーっ!」
俺は咄嗟に、プラマイスをサッカーボールのように蹴り飛ばしていた。これは勝利したということで良いのだろうか。さっきまでプラマイスがいたところに、ひとつの箱が落ちているのは、ドロップアイテムということだろう。俺たちがドロップアイテムの箱を開けた瞬間に、エレメントが4つほど出てきた。それぞれ、Fe、Co、Ni、Ndと書いている。全て磁石を構成する役割があったはず。
「救ってくれてありがとうございます…私たちあの磁石にいいように使われていたんですよ! 近いうちにお礼の準備をしておきますので! じゃっ!」
今度、エレメント達が訪問しにきてお礼をしてくれるらしい。だが、そのことを話すとスタコラさっさとどこかへ行ってしまった。エレメントが近くに居ただけでも、少し回復した気がする。
「皆さんこんなところにいたんですか!? さぁ! 会議場にお戻りください!」
最初に会った黒服の人だ。幸い、フィジックスがなんとかしてくれたおかげで被害はないが、こんな状況でも会議を続けるサラリーマン精神には驚きだな。
「いや、もう結構です」
「ちよっと、待ってくださいよ! 各国の成し遂げたことを表彰するだけなので!」
俺たちは少し無言を続けた後、すぐに会議室に戻った。もう表彰式は始まっているみたいで、もう最後、フェロウ王国の番。こういう公共の場で盛大に表彰されるのは小学生の卒業式以来だ。
「最後! フェロウ王国! ミソロジーモンスターの2体を救済、撃破し、国滅ぼしであるプラマイスを撃破したことをここに表彰する!」
やっと表彰式が終わり、皆は帰ろうとしたが、俺はセンター島を少し寄り道していくことにした。俺は買い物をする際、センターショップという店屋へよくいく。ここは品揃えが豊富で、どれも安いので、多くの島民や8王国の国民に重宝されているのだ。
「さて、十分に買い物をしたし新規魔法で帰るとしよう」
俺が戦闘で使わなかったもう1つの新規魔法は、移動魔法で、一瞬で行きたい場所に移動をする瞬間移動。疾風迅雷の上位互換だが、瞬間移動の方が多い魔力を消費する。
「さぁ、早く帰ろう……魔法: 瞬間移動!」
魔法を発動すると強い光が当たりを包み、俺は目を閉じざるを得なかった。光が消えたのを感じて目を開けると、もう既にフェロウ王国に着いていた。
「ん? 国民達、どうしたんだ? この大量の素材は」




