別れ、危険な話、それからグレードアップ
「じゃ! またどこかで!」
「…はい! 次会う時には、弟も連れてきますね!」
シップは8歳だし、親がいない。その上、6歳の弟もいるらしいし、流石に放っておくわけにもいかないんだろう。今思えば、全然気難しいやつじゃなかったな。そうして別れた後に、俺たちは城に入った。
「で、何でお前いんの?」
城に入るとなぜかストーリーがいた。俺たち一同は混乱したが、できる限り冷静さを保つことにした。
「とあることを伝えにきてな」
「とあること…? っていうか、ウィークモンスターは?」
「草花の戦友だって言ったら退いたぞ」
見張りが甘すぎるな。強いっちゃ強いんだが……前も、出かけてた時に城に襲撃してきたモンスターがボッコボコにされてたし。
(俺ってこいつの戦友にあたるのか…実感湧かないな…)
「こちらお茶でございます、少し熱いのでお気をつけください」
「お気遣い感謝する、ゆっくりいただこう」
お茶を出してくれたショコラに、ストーリーはクールに微笑み返した。ショコラは、そのまま礼をして自分の部屋に行った。
「あー……それで、とあることって、なんだ?」
「とあること、それは3つある」
ストーリーが3本の指を立ててそう言った。顔はずっと凛々しく、何事にも動じなさそうだということがなんとなくだがわかる。
「え? 複数あんの…?」
「あぁ、1つ目はナイファー雪山で出現中のアカシックモンスター討伐についてだ」
アカシックモンスターと聞いた瞬間に、俺はウィーク、リーダー、カシラ、ミソロジーモンスター以外にも種類があったことに驚いた。
「ナイファー雪山か……確か、ナイファーとかいう一撃が高火力のウィークモンスターがうじゃうじゃいる雪山だっけ」
「そうだ、本来立ち入りは禁止だが、ミソロジーモンスターを9体中3体を討伐した草花には特別に山に入ってもいいのではないか……とフィジックスが言っていてな」
ストーリーの口からフィジックスの名を聞いたのは王会議以前だ。エピソード王国とコライド王国は、仲がいいのだろうか。
「いいけど、未解決のままでも文句言うなよ」
「大丈夫だ、そのアカシックモンスターに遭遇すれば未解決には絶対にならない」
「え?」
恐る恐る返答した。嫌な予感が脳裏をよぎったからだ。体が震えて、鳥肌が出始めた。それでも、俺はストーリーの話を聞いた。
「もしそいつの討伐に失敗した場合、もうすでに命はない」
「そんなに強いのかよ…」
体が固まり、金縛りのような状態に見舞われた。深呼吸を続けてなんとか動くようになったが、もうすでに精神がボロボロかもしれない。
「それで、2つ目なんだが…」
(やっと1つ目が終わった…でも2つ目も洒落にならないほどの話なんじゃないか…?)
「破壊教という危険な宗教の話だ」
破壊教…名だけ聞いただけでも危なそうな気配がしてくる。これから先を聞くのが嫌になって来た……本当にろくでもない話をバンバン持ち込んでくるな。
「なんだそれ…怖っ」
「まだ名前しか聞いてないだろ……噂によると、ある廃坑のような建物に踏み込んだ瞬間、たちまち体が崩壊し、跡形もなく消えてしまうと言う…」
「なんだそれ…怖っ」
「二度も言うなよ…」
それが本当に宗教なのかと疑った俺は、思わずこう聞き返した。
「その宗教は何を祀っているんだ?」
「それが…わからない」
「はぁ?」
俺は咄嗟にそう言葉を発した。わからないってなんだよ…この宗教、ますます怪しいぞ…?
「それを草花に探って欲しいと、我が国の国民がわーわー嘆いていてな」
「なんで俺なんだよ」
「何を言う、ミソロジーモンスターを3体討伐、国滅ぼしNo5を撃破……お前は、誰にも成し遂げられないことを成し遂げた、全人類の恩人なんだぞ」
俺は息を呑んだ。自分の名がそんなにも広まっているなんて思ってなかったからだ。
「…さて、最後の話だ」
「あぁ、後1つ残ってたか」
「ミソロジーモンスターについてなんだが…」
ミソロジーモンスターか……最後に聞き覚えのあるやつがきたな。まぁ正直予想してたが。
「そいつはいくつかの力が合わさって、ハリボテの体で相手を弄ぶらしい…だが、真の姿を表した時、海の中は激しく荒れる……差し詰め、海の王だ」
「それはまた物騒な…」
さっき海から帰ってきたばっかりなのに、また行かなければならないのか……今度は安全に乗り込まなければな。
「さて、話し終わって、お茶も飲み干したところで私は帰るとするかな」
「おう、気をつけてな…」
全く、面倒ごとに絡まれたもんだよ……まぁ、いつもそんなもんか。俺はそう思って、階段を登り、自分の部屋に戻った。
「ふぅ…」
「草花様…」
部屋に入ると、ベッドで昼寝をしていたショコラがいた。音を出したりはできないな。俺は、そっとドアを閉めた。
「リビングでなんかするか……いや、センター島でなんか買ってくるか」
俺は早速、瞬間移動を使った。直前に出るこの強烈な光にも、少しずつ慣れてきた。
「…着いたか」
今日買うのは夕飯の食材と…プレスが来たんだ、増築もするべきか。そうなると、木材や石等の建築用素材もいるな。
「卵6パックと、あと米…あ、醤油切れてたな…トラウトの刺身も買っとくか」
ここの食材ショップにセルフレジではないので、少し不慣れだが、俺は買い物カゴを片手にレジに向かった。
「これください」
「卵6パック、米、醤油、トラウトの刺身…ですね、2200チャリンになります」
次は建築ショップに行くかな。今、国家予算は5億程度だし、2000万チャリンくらいの予算がいいな。
「おっ、コンクリートがあるな、何かに使うか……2000万チャリン分は買っておこうかな」
あそこもセルフレジはなかったが、店員さんが真摯な対応をしてくれたおかげで、後悔や緊張することがなかった。俺は、コンクリートを収納箱に入れた。
「2000万2200チャリンか…残ったのは4億7999万7800チャリン…ショッピングくらいでしか金は使わないし…これくらいなら痛くないかな」
さて、ショッピングも済ましたところだし、もう夕方。そろそろ帰るとしますか。
「魔法: 瞬間移動!」
瞬間移動が終わると、ちょっとY座標を高くしていたようで、怪我するかしないかわからないギリギリの高さからそのまま落ちた。
「ぐはっ…痛っ…」
「草花、大丈夫?」
そこにいた、プルーリは澄んだ目をしていた。スライムだからだろうな。
「大丈夫だ、多分……それより、皆を呼んでくれ」
「はいはーい」
痛かったが、俺は立ち上がった。プルーリが皆を読んでいる間に、エーグリーでも作るかな。最近こればっかり食べてるような気もするが。
「なんだっけ…まず寿司のような玉子焼きを作って、丼に盛り付けた米に酢と醤油を少量混ぜ込む…最後に卵焼きを乗せたら完成か…」
5分程度で作れるし、うまいから気に入っている。今回は、トラウトの刺身も乗せよう。
「みんな呼んできたわよー」
「この匂いは…エーグリーか…さては兄貴、これにハマったな」
「でも、なんか違う匂いも感じるっすよ」
皆は疑問を持ちながらも、晩ご飯がエーグリーだということにワクワクしていた。嬉しいことだな。
「いただきまーす」
「これは…トラウトの刺身ですか…美味しそうです…」
「これ…普通のエーグリーよりうまい」
思ってていたよりもいい反応だったようだ。素直に喜んでおこう。トラウトエーグリー…追いかけで醤油をかけたからか一段とうまく感じる。いや、自分で作ったからかもな。
「ごちそうさまでした」
そう、皆で言った。俺は、早速もう一つの件を振った。
「食べ終わって、早々にあれなんだが、プレスが来たことだし、そろそろ増築も考えていてな…コンクリートを大量に買ってきたんだ」
「いいじゃない!」
「魔法、使ってもいいか?」
俺は皆にこう投げかけた。すると、皆、全員同じ答えが返ってきたんだ。
「もちろん!」
俺は、迷わずに魔法を発動した。
「魔法:万物創造」
階段の下、左と右に2部屋が増築がされていく。それだけではない、大量のコンクリートだ、城の全ての壁が、コンクリートでコーティングされていったんだ。
「これは…」
「まるで、本物のお城になったみたいだー!」




