魔法Mix
魔法を混ぜる。これを使いこなすことは、魔法同士の相性確認や魔力管理能力を要するため、上級者向けとされているテクニックらしい。
「魔法を混ぜた戦い方じゃないとこの鰐は倒せないだろう…疾風迅雷と混ぜられる魔法は何だ…?」
考えているうちに、相手の咆哮により、自分のHPが少しずつ減っていく。頭の回転を早くしないと間に合わないだろうな。
「魔法:雷!」
雷を疾風迅雷に乗せることで、超速スピードが得られる。そして、超速で放つパンチは、相手の皮膚を貫通する。水属性は雷属性が弱点だし、我ながらよくできた戦術じゃないか?
「超速スピード! と、パンチ!」
攻撃ステータスが少し低い俺でも、パンチ特有の装甲貫通と弱点突きの両方は応えたらしい…これを続ければ勝機はある。
「ほい! あらよっと! 相手が近距離攻撃のせいか…これ結構キツい…」
そろそろだ、この作戦の要はまさにここになる。相手の鱗装甲はかなり弱まっていて、ここは水の中。俺は、雷を何回も自分の身に纏わせて、超速で鰐の周りを駆け回った。
「グガガガガガガ!!!」
「魔法:瞬間移動! よし、感電作戦成功だ!」
鰐は、苦しみながらドロップアイテムを落とし、経験値と化して行った。
「鰐肉とフカヒレ…今日の夜ごはんは豪華だな」
今日は、シップと仲間を探しに行こうと思う。もう5時だが、一瞬で見つけてくればいいだけだ。俺は覚悟を決めて木の家を出た。
「ぐわっ」
脛が何かに引っかかった。ぬるぬるして気持ちが悪い。滑って、少し引っかかっただけでも転びそうだった。
「ん? 何だこれ…わかめか……わかめ…ぬるぬる…」
もう少しで、簡単素材で高速移動ができるアイデアが閃きそうだ。
「むむむ……よし! これでいこう!」
俺は早速、行動に移してみた。わかめを固めて靴の裏にひっつけ、疾風迅雷を発動した。
「魔法:疾風迅雷! うわっ! 思ったより制御が難しいな…」
この靴はローラースケートみたいで、海底をスルスルと滑ったり、急カーブが可能になるのだ。さらに、疾風迅雷で加速されている。仲間はすぐに見つかるだろう。
「いないな…方向転換するか…そもそもこの要塞の中にいるのか?」
少しの不安を抱きながら方向転換して走った。かなり進んだ後に、聞き覚えのある声が耳に入って来た。この声に安心感を覚えたことはこれで初めてだ。
「ん? 草花じゃない!」
「え? プルーリ?」
そこにいたのはプルーリだ。魚を水魔法でひたすら狩っている。冷静に考えて、ここは海底の中。まず魔法のエキスパートであるプルーリと行動するのは心強い。
「よかった、生きてたのね!」
「生きてましたー」
「とりあえず要塞の中を探索したのに誰もいないのよ! 草花とあってちょっと安心したわ」
"ちょっと"という部分に少しだけ、ほんの少しだけ不快感を覚えたが、まぁそこはいいだろう。俺はプルーリを背に乗せて再び走り始めた。
「魔法: 水蒸気小爆発〜……おお、すごい! 勢いが増したわよ!」
「だいぶ快適だな」
「この調子よ! 仲間をどんどん見つけていきましょう!」
やけにやる気がみなぎっているな。あ、そっか、プルーリも1人で寂しかったんだな。
「あ! 何か見えるわよ!」
「本当だ!」
嬉しさで足元のぬるぬるが増してきた。近づいてタクリカルだとわかった。
「タクリカルー!」
プルーリが全力でタクリカルに抱きかかった。だが、タクリカルは長時間背負わせることができない。長時間移動は別のものを使うしかないか。
「とりあえず、仲間と合流したいな…取得は使えないか?」
「ゾンビやゴブリンは人間と体質が似てる…使えると思うぞ」
「じゃあ、頼んでいいか?」
この能力は結構な広範囲に影響するらしい。皆が遺跡の中にいるのなら確実に感知ができるだろう。
「あっ!」
「なんだ?」
「人間の体に含まれているエレメントを感知したぞ」
人間…シップだろうか。もしそうなら、行かなければな。方角は東だったか。
「多分シップだ! 東に向かおう…」
さて、どうやって移動するか。今、俺の魔力が半分残っている…魔力が0にならない4回なら瞬間移動が使えるな。
「瞬間移動は手がかりがないとあんまり使えないからな…」
「とりあえず東にワープしてよ! 今はシップが優先よ!」
ここで3人分使ってしまうともう使えなくなるんだが…まぁ、いいか。俺は、どっと疲れる覚悟をしながら魔法を唱えた。
「魔法: 瞬間移動!」
そこにいたのは、シップではない違うものだった。どこかで見覚えのある機体のような体が、ただただ機械音を鳴らし続けている。
「なんだあれ…」
遠く離れていても、その姿は大きく見えて、非常に高い魔力を感じる。ほんの少しでも後退りをしたい気分だ。
「なんだこの見覚えのある感じ…最近どこかで見たかもしれない…」
「知ってるの!?」
「いや、ところどころ違う…」
どちらにしろ、3人じゃ絶対に勝てない…あの滲み出る強大な魔力が、あいつの強さを暗示している。
「というか、3人じゃ絶対に勝てないぞ!」
俺が言った言葉を途中で遮って、誰かの魔法を唱える声が聞こえる。
「魔法:滅殺光線!」
闇魔法の光線攻撃だ。あいつのコアのようなものから内部破壊を起こし、そこから人が飛び出て来た。
「シップ…?」
「はい、常田さん…」
「さっきのは?」
飛び降りて来たのはシップだった。あんな闇魔法を持っているなんて…シップは、何者なのだろうか。
「私が覚えている中での最強の魔法です…でも、もう魔力が尽きちゃったから、常田さんにあとは任せていいですか…?」
「おう、下がっておいてくれ」
シップが打ってくれた渾身の魔法…あいつの体力はだいぶ減ったと考えていいだろう。せっかくの好機を逃すわけにはいかないな。
「よし、こっから3人でやるぞ!」
「うん! 精一杯やってみるわ!」
プルーリは神力の付録効果が開眼したようだ。能力のように弱くなければいいのだが。
「魔法: 水波動!」
プルーリの魔法があいつに当たったその時、プルーリは能力を発動したようだ。
「今よ! 温度変動!」
水魔法が凍り出す。その魔法に触れたあいつの一部も凍って、そのまま全身まで行き渡りそうな勢いだった。だが、あいつもそうそう簡単にやられてくれはしない。
「あんまり効いてないな…」
「じゃあもう一回! 温度変動!」
「それ連発大丈夫なやつか?」
凍った水魔法が一瞬で粉砕し、水の中のはずなのに炎が発生した。あいつの体の一部を激しく焼き、とても重傷を負わせているようだが、あいつは何か攻撃を準備しているようにも見える。
「…!」
あいつの体が燃えながら青白く光り出す。危険な予感が漂い、反射的に身体中に力を入れた。
「うわぁっ!!」
いきなり縦横無尽にレーザーが放たれる。俺もプルーリもタクリカルも、レーザー攻撃は回避したが、衝撃波で激しく吹っ飛ばされた。
「いった…」
またもや、あいつの体の節々が徐々に光っていく。放っておくとさっきのようなレーザー攻撃がくると俺の勘が察した。
(溜めが長い…あんまりにもレーザー距離が大きすぎるとシップが危ないな…)
俺は考えた。レーザー攻撃の飛距離が長い。そもそも威力が強すぎる。戦えないシップを除いて俺らは3人だけだ。色々と考えた後、俺は一つの結論に至った。
「皆! 俺が爆発を起こす! すぐに逃げるぞ!」
「わかったわ! すぐに瞬間移動つかってね!」
「よし……魔法: 始爆再爆終爆!」
数秒遅延させるように魔法を唱えた。爆風が水を弾き飛ばす前に俺たちも逃げなければな。
「魔法: 瞬間移動」
4人分の瞬間移動だ。始爆再爆終爆と合わせて消費魔力は絶大。というか、移動先を海のどこかに設定したが大丈夫か…?




