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波長の奇跡

「近寄らないで!」

「え…? いきなり何…?」


 淡い虹色混じりの彼女の、シップよりも白い髪は、濃い虹色の瞳と共に唸るように一瞬暗くなった。


「待ってくれ! 何でそんなに拒絶するんだ?」

「ヒュプノスでしょ! ファ…私を夢の世界からも消しに来たの?」


 何だ? ヒュプノスは俺が倒したはずだが…あの子は見た感じ5歳くらいだが、ヒュプノスを知っているのか?


「ヒュプノスって…俺が倒した…」


 少女は少し困惑していた。少し後にすぐスンとしてしまったが。


「…そんな嘘なんかお見通しだから!」

「あれ…魔法が使える…ていうかそれよりもなんかくる…!」


<醒める>


 何だあれ…そんな思考は起きてから脳に流れ着いていた。2人ほど寝れるベッドの横に誰もいないことに少しの恐怖を抱きながら再び体を休ませた。


<夢>


 …また、この夢か。あたりには木々が根を張って、不気味な空気感を感じさせてくる。そして、何より目の前に"あの子"がいるのだ。


「また来たの?」

(来たくて来たわけではないがな)

「そうだ」


 むしろ、この夢を毎日見ると考えれば、この天使とは友好関係を築いておかないとかなりまずい。うん、だがどうする?


「魔法:夢豊」


 あの天使の掌から淡い虹色の線が出て、枝分かれをするように範囲を広げながらこちらをホーミングしてくる。


「魔法が使えるのか…魔法:疾風迅雷!」

「避けられたけど、まだま…うわっ…」


 少女は魔力切れで倒れてしまった。ここで、俺が助けたら名声は発動するんだろうか。俺は、とりあえずやってみることにした。


「よし、やってみるか…」


 間近で見ると、小さくて5歳児みたいだ。いや、本当に5歳かそれに近い年齢なのかもしれない。とにかく、自分の魔力を相手に与えることが最優先だ。


「うーん…魔力の供給方法ってどうやるんだ?」


 魔力の供給方法…プルーリが言っていたやり方だと。自分の手と相手の手を3秒以上繋いだ後に、それを相手の口元に当てるとかだったか。


「何だこれ…難しっ……あっ、この体制か…」


 自分の魔力が少しずつ失われていく代わりに、相手の顔色がマシになっていって、濃い虹色をした瞳を開けるようになった。


「ん…あなたがしてくれたの…?」

「うん」

「あっ…ありがとう…」


 少女は、少し照れている様子を俺に見せた。みんなほどではないが、名声は普通に発動するみたいだ。


「そういえばさ、名前をまだ聞いてないんだけど…?」


 俺は全身に力を入れながら名前を尋ねた。こういうときは俺から言ったほうがいいのだろうか。


「俺は草花っていうんだ…一応、王国の王なんだけど…」

「草花…うん、ファ…私の名前はファンシジー…」


 その声は、絶妙な高さで、ふわふわしていて、落ち着きがあって、聞いていてとても気持ちが良かった。


「草花!」

「はいっ!」


 何を言われるのがビクビクしながら覚悟を決めていたら、予想外のお願いが帰って来た。


「海の主を倒して欲しいの」

「海の主?」


 海の主。映画、アニメ、テレビゲームでよく聞く言葉だ。この世界にも存在するのか。


「アルヴェシア、ダガーナイフ、フィアサルトの3つの兵器が同時に目を合わす偶然が起きたとき、海の主は現れる…」

「それが今日なのか?」

「そう」


 海の主は、出会えることに運が絡まるらしい。運要素と偶然がたまたま重なってとんでもなく低い確率を引くことで海の主と出会えるというのなら、なぜファンシジーはそれを知っているのだろうか。


「なぁ、何でファンシジーはそれがわかるんだ?」

「ファ…私は、"運命の波長"を感じることができるから、ちょっと先の未来が分かることがあったり、今この瞬間、どこかで運命の力が働いている時かどうかを知らせてくれたりするの」


 運命の波長…要するに運命レーダーということだろうか。


「ふーん…あれ!? もうこんな時間だ!」

「草花、帰っちゃうの?」

「うん、じゃあ、バイバイ」


ちょっと長い時間いるし、一旦夢から覚めることにしよう。明晰夢なら好きな段階でここから出れるだろう。


「あっ、草花!」

「ん? 何だ?」

「またね」


 ファンシジーは笑顔を俺に見せて、"またね"と言ってくれた。俺も何か返さないとな。


「あぁ、また」


<醒める>


「はっ…内容が濃い夢だったなぁ…もう9時だ」


 俺は外に出た。マリンパワーキャロットが十分に育っている。全て収穫しておこう。


「今日も探索をするか…海底生活2日目だ」


 といっても、1日目に見つけた建造物以外に建造物はないし、今日1日はのんびり過ごすことにした。


「もう10時だし、朝ごはんを作るか…」


 さっきこ取った海藻と鰹を使った出汁味噌汁と、お手製の鰹出汁海苔を作ろう。万物創造(マテリアルクラフト)で作る場合、どちらか一方、最低値の10分の3で済む。


「魔法:万物創造(マテリアルクラフト)…よし、食べよう」


 わかめが鰹の出しに入って味噌もいい味が出ている。海苔の風味が鰹出汁と混ざりあって旨みが出ている。味噌を足したせいで10分の7の魔力が消えたんだが…まぁ、よしとしよう。


「贅沢な朝ごはんだったな…おかげでもう11時だ」


 時間が進むのがやけに早いような遅いような。次は朝のランニングだ。30分の予定だったが…やり過ぎたようで、もう1時なんだわ。


「ランニングで疲れたが、昼ごはんを作ろう…魔力は回復した…昼は納豆の気分だな」


 大豆は万物創造(マテリアルクラフト)で生成するとして、納豆にする過程もそれでいいか。最初から納豆をこの魔法で作ると、あんまり美味しくないからな。


万物創造(マテリアルクラフト)×2(かけるツー)!」


 もう2時だ。シップ以外の皆は寝ていたが、今頃大丈夫だろうか。2時からはモンスター退治でもするかな。


「ここらで出てくるモンスターは、熱帯魚に鮭と鯖、そして鰹に秋刀魚、鰯、魚ではないところで行くとイカ、タコ、海老、蟹…おそらく強力であろう鰐や鮫くらいか? うむ、大漁といこう…」


 早速、熱帯魚と鮭と鯖、そして鰹と秋刀魚と鰯が一気に襲って来た。


「魔法: (サンダー)! 魔法: (サンダー)! 魚系は弱いなぁ…(サンダー)で倒せるぞ」


 それからイカ、タコ、海老が出て来た。俺は、この生物たち+蟹を非魚系と呼んだ。


「相手が水属性なら(サンダー)が効くんだよな…」


 その時、何か巨大な生物が足をついたかのような地響きに俺を仕留める勢いで襲われた。


「鰐と鮫じゃないか…2対同時に強大系がくるなんて…」


 鰐と鮫が殺意をむき出しにして口を大きく開け、命のあらん限り咆哮している。


「これはこれは…今日の夕食は豪華になるな…」


 鰐と鮫は咆哮を続ける。俺が(サンダー)を使える回数はあと5回。回転刃のヨーヨーも使っていくぞ。


「咆哮は感じないほど極小のダメージがあるらしい…故に、咆哮を何回も受けた俺が使う回転刃ヨーヨーの火力は最大!」


 俺は、回転刃ヨーヨーに(サンダー)を纏わせて、武器に雷属性と痺れ効果を一定時間追加することに成功した。


「これで勝負だ…見るところ、鰐が物理近距離で鮫が魔法遠距離の攻撃を使ってくる…ヨーヨーでの攻撃と魔法の打ち消しを行なっていくしかないな……」


 俺はひたすらヨーヨーを振る。咆哮と物理近距離攻撃が特にきつい…魔法がちょくちょく邪魔をしてくるのもストレスで困っている。


(うわっ…鰐が距離を詰めて来た…こうなったら…)

「魔法:疾風迅雷!」


 避けた先で魔法が飛んでくる。俺は、藪から棒にヨーヨーを横に振った。運良く、魔法を跳ね返し、鮫の鼻に魔法とヨーヨーがクリティカルで当たって、鮫はドロップアイテムを落として散って行ったのだが、鰐がそのことに激怒し、攻撃力と攻撃速度が上がった。


「やべー……やられるんだが……?」

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