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悠久の友情は一瞬

(ポケットに手を入れた…!)

「来るっすよ!」


 あいつ…プレスは、確かに何かを投げる動作をした。だが、攻撃が見えない…ラティスの過去を聞いた限り、奴の能力(アビリティ)は圧力の操作。ということは、特殊な能力や神力の付録(おまけ)効果でもないのか…?


「ん…? ここか!」

「え!?」


 タクリカルが何かを感じ、棍棒を振るった直後に、金属の破壊音が聞こえた。俺は、思わず驚いてしまった。


「クソ、気がつきやがったか!」

「もしかして…見えないほど小さい鉄を投げたのか…?」

「多分、そうっすね…鉄かどうかは分からないっすけど」


 もし、そうだとしたら、当たっただけで致命傷が与えられるだろう。タクリカルみたいに、攻撃の気配を感じるしかないのか…?


「何か手は……はっ…!」

「草花様、何か思いつきましたか…?」

「うまくいくかは分からないがな…」


 俺は、仲間たちに作戦を話した。プルーリとタクリカルは唾を飲み、ショコラは小さく拍手して、ラティスはニヤリと少し笑みを浮かべた。


「何を考えているか知らんが…俺はすでに、必殺技が用意できているんだ…」

「作戦を決行したら、お前はぐうの音も出ないまま俺たちにやられることになるぞ…?」


 俺は、プレスに向かって自信ありげに話した。この作戦が成功するかどうかは、相手のいう必殺技次第ではあるがな。


「よし、あつまれ!」

「はい!」


 俺が掛け声をあげたその時、皆が俺のもとに集まる。それと同時に、相手の必殺技とやらが放たれた。


「プルーリ!」

「分かったわ!」


 合図をすると、プルーリが水の膜を俺たちの周りに何重にも貼る。


「いいぞいいぞ! 俺の予測だと…」


 急に、前方から水の膜に何かがドポンと入り込む音がした。だが、水の膜は、見えないほど小さい鉄に貫通されてもそう見た目は変わらなかった。あとは、ラティスの能力(アビリティ)と、タクリカルの棍棒が要になる。


「使うっすよ? いいっすか?」

「やったれ!」

「はいっ!」


 ラティスは、一点を見つめて集中している。少し時間が経ったのちに、おっとりとしていた目をはっきりさせ、声を発した。


「タクリカルさん! 今っすよ!」

「…あいよ!」


 さっきよりも大きい音の、金属の破壊音が聞こえる。


「ラティスの能力(アビリティ)未来感知(フォアサイト)は、未来の予測と集中の倍増だ! 相性が悪かったんじゃないか?」

「は? 相性が悪いだと…? 神力を開眼すれば、お前らなんて一捻り、その言葉を撤回することになるだろうなぁ!」


 プレスが叫んだと同時に、地面から大量の細い鉄が足場となり、プレスを高所に上がらせる。俺も、皆も、驚きの声をあげて数秒間だけ唖然とする。


「数分後、お前らは後悔する…」

「後悔するのはお前だ! 俺たちは、すでに次の作戦を練っている!」


 プレスの目は赤かった。血よりも赤く、黒い色をして、血眼という言葉では表せないほどだった。だが、次の作戦を思いついた俺たちには、全く怖くない。


「ショコラ、準備はいいか?」

「もう少し、待ってください…」

「護衛するから、気にせずに魔力をこめてくれ!」


 細い鉄は、プレスを落とさないように、1本1本が石を持っているように俺たちめがけて勢いよく突進してくる。


「魔法: 水蒸気小爆発(アクアミニショック)連撃(ラッシュ)! 草花! この鉄、何度壊しても再生するわ!」

「俺は自分とショコラを守るので精一杯だ! それくらい知ってる! もういけるか?」

「これだけ時間を稼いでくれたら、もう十分です!」


 ショコラは魔力を十分にチャージできたらしい。細かい鉄は徐々に勢いを強めて、丈夫になっている。この作戦が炸裂するのは、この後からだ。


「いきますよ……魔法:強力(マイノリティ)腐敗(コラプション)!」


 魔法が発動した瞬間に、細かい鉄が崩れていき、プレスは体制を崩す。そして、作戦は次のステップに進む。


「ラティス!」

「分かってるっす」


 ラティスの声は、いつもより1オクターブくらい声が低くなっていた。


「魔法:疾風迅雷」

「クソがぁぁっ!」

「魔法:粒子光線(フォトンレイニクス)


 速攻でプレスに近づき、下からレーザーを当てるラティスを、少しだけ恐れた。だが、何はともあれプレスには勝利した。今すぐにでも宿に泊まりたい。


「プレス、自分は、お前が自分に救われなかっただけで国滅ぼしに入ったとは考えにくい、何か、別の理由があるんじゃないか」

「……俺は…」


<プレスの過去>


「うぐっ…」

「ここは…どこだ…?」


 俺は、災害のせいで知らない地に飛んだ。現地の人に聞くと、ここはアルデスト島の、ウェルデリア町という町らしい。


「ぐはぁっ!」

「…大丈夫!?」


 子どもが彼方から降ってきた。俺は、その子に気付けば話しかけていた。それから、だんだんと仲良くなっていった。仲良くなりすぎて、話には肯定し合うほどにもなった。


「俺もシール王国にいて、友達と遊んでて…そこから竜巻に巻き込まれた…でも、竜巻に巻き込まれたのは俺だけで、友達は俺を助けようとしなかった…俺は、友を恨んだよ…プレスも、同じように友達がいて、自分だけ飛ばされてきたんだろ? 友達は恨まなかったのか?」

「あぁ、うん……俺も…恨んだよ、ラティスを」


 俺は、そう答えざるを得なかった。そうしないと、仲が壊れてしまうから。そう思っているうちに俺は、心の底からラティスを恨むようになった。恨むようになってしまった。


「なぁ、プレス、一緒に、国滅ぼし入らないか…?」

「…なんで?」

「もう、どうでもいいだろう? 竜巻にぶっ飛ばされ、ろくな食いもんもない、そして、友達、いいや、ラティスと……プラマイスに復讐するために」


 俺は、その発言を聞いてビクッとした。だが、悪い手ではない。実際、友の言うことは事実。今の人生は、薔薇色とは真反対で、どす黒く泥のような色に変わりかけていた。


「分かったよ」


 俺は、友の…テコの手に乗ってしまった。このことは、ずっと後悔している。この先も、ずっと。


<聞き終わり>


「ラティス」

「…何っすか?」


 プレスがラティスに話しかけ、低い声のままプレスに返す。


「このことが、ラティスに悲しい思いをさせたかよく分かってる…」

「…」


 プレスの話に対して、ラティスは沈黙を続け、プレスを見下す。


「俺は、ラティスを友達ではないと言ってしまった! 恨んでいると言ってしまった! それにも悲しい思いをさせたよな…」

「…やめてくれ」


 ラティスはやっと相槌をした。プレスは、ラティスの膝に抱きついた。


「俺は、お前に、ラティスに深く謝罪をしている…到底、許されると思っていないさ」

「やめろ、やめろ!」


 この空間で、俺たちがとても話せる空気は漂っていなかった。ただ、見ていることしかできなかった。


「だが、聞くよ……お前は……俺を、許してくれるか…?」

「…バカ、そうとしか…言えないだろうが…!」


 ラティスは、膝を崩し、プレスに抱きついた。その後に、2人は涙を流す。俺たちも、涙を数滴、ポロポロと流した。


「ありがとう…ありがとう…!」

「違う、自分が感謝される立場じゃない…自分が助けなかったことが悪いんだ…」

「そんなことはない…! ラティスは、少し気弱になったな…」


 2人は、ただ泣いて、相手に抱きつくことしか出来なかった。その雰囲気(ふいんき)を壊す声が上から聞こえる。


「気弱になったのはお前のほうだろ」


 その声が聞こえた後に、ラティスめがけて小さい隕石が降ってくる。


「ぐはっ!」

「…プレス!」

「掠ったか…だが、プレスは死んだ、裏切り者は、死んだ」


 隕石を降らせた人物が降りてくる。その時、ラティスの叫び声があたりに響いた。


「………テコォォォォォ!!!」

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