島にある港町
「いくぞ、そのウェルデリアに」
「いつものアレで行くのね?」
「いや、その前に少しだけ時間をくれないか? 俺の母国には良いものがあるんだ…余った鉄でちゃちゃっと作ってくるよ」
俺は、もといた世界での便利アイテムを作って皆に渡すために、大量の鉄を両手で抱え、のろのろと一度自分の部屋に戻る。
「重かった…とりあえず作るか…魔法:万物創造」
俺は、鉄で主な形を作った。あとはプラモデルの組み立てで培った技術と、異世界の技術をどちらとも使い、完成させるだけだ。少し時間が経ったあと、俺は階段を降りた
「遅いわよ……なにそれ」
「携帯電話だ、これひとつでいろんな人とどんな距離でも会話ができるぞ」
俺たちは、いつもの方法でウェルデリアに行くために、外に出る。そう、疾風迅雷だ。皆は俺の背に乗る。
「発動するぞ、ヒュプノスを倒して疾風迅雷の魔法LVも最大になった…しっかり捕まっていろよ、飛ばすから」
地面を一蹴りすると、稲妻のごとく自身の体が海へと移動する。足元の水が跳ねて、まるで低空で飛んでいるような感覚がした。ウェルデリアは港町なので、普通は船で行くのだろう。今も船を漕ぐ音が遠くから響いて聞こえる。そう思っているうちに、気づけばウェルデリアの港についていた。
「到着、みんないるよな?」
「全員いるぞ!」
「確かに、ウェルデリアっすね……国滅ぼしの謎を暴いてやるっす」
ラティスは、国滅ぼしに恨みを持っているのだろうか。俺には、親の仇と言うほど怒っているように見える。
「……まぁ、さっさと入ってしまおう」
「ここが入り口ですか?」
「入り口、テーマパークみたいだな…」
俺たちは、ゆっくりとウェルデリアに入る。これから何が起こるのか、警戒しながら。そうしていると、案内人らしき人がやってきて、口を開く。
「ようこそ、アルデスト島へ」
「アルデスト?」
「ウェルデリアは町なの、その町がある島がアルデスト島よ」
ウェルデリア町、ということは、他にも町があるのだろうか。とりあえず、今日は下見をしよう。このことを案内人に伝えると、親切に地図を渡してくれた。
「ウェルデリアが西で、北のシェムデリアへ向かい、そこから時計回りに進むか」
「そうね、そうなると…西、北、東、南の順で回ることになるのかしら」
「とりあえず、ウェルデリアを探索するか…でも、宿があるのは南のキュアデリアだ、できるだけ早く回るしかないな」
ウェルデリアの探索を始める前に、軽く辺りを見渡してみた。俺の目には、他の建物より大きく、目立っているショップが目に留まる。
「あのショップ、入っていかないか?」
「いいですよ!」
「私たち、適当にぶらついとくから、ショッピングが終わったら、携帯電話のチャット通話アプリで知らせてね〜」
プルーリはそう言い、タクリカル、ラティスと一緒にどこかに行ってしまった。ウェルデリアに持ってきた所持金は8000チャリン。これだけあれば足りるだろう。
「草花様! 何を買いますか?」
「迷惑にならないくらいの大声…俺は弁当を買おうかな、白身魚弁当」
「そうですか! 私は何も入りませんよ!」
ウェルデリアの港では、白身魚がよく取れて、新鮮で美味しいらしい。だから、雑誌で見た前々から気になっていたのだ。
「えーと…"買い物終了"…っと…送信」
俺がメッセージを送ると、返事がすぐに返ってきた。タクリカルからだ。"早くきてくれ、とてつもないことが起こりそうな気がする"と送られてきた。何があったのだろうか。
「とりあえず向かうか……ショコラ、俺の背中に乗れ…走るの得意じゃないだろ?」
「は、はい! 乗らせていただきます!」
「軽っ…」
ショコラは軽くて、まるで1Lの水を背負っているようだった。これなら、すぐに合流できるだろう。
「ってか、冷たいな…」
「草花様はあったかいですね…」
「そうか? そんなにだと思うが…」
微笑ましい会話が続く中、遠くにプルーリとタクリカルが視界に入る。俺は近づこうと、ショコラを落とさないように走った。
「ショコラ、走っていいか?」
「…はい!」
遠くからでもわかることは、プルーリやタクリカルはあたふたして、やけに焦っていること。ラティスがいない…どこにいったのだろうか。
「おーい!!」
「あっ! 草花の声が聞こえるわ!」
「本当だ! 事情を伝えないとなぁ…」
走りながら辺りを見渡し、ラティスを探した。どうやらウェルデリアにはいないみたいだ。俺たちは、プルーリたちに事情を聞いた。
「なに!? 国滅ぼしのアジトに行った!?」
「すまねぇ…俺がちゃんとラティスを見ていたらこんなことには…」
「タクリカルさん、大丈夫です! でも…今すぐに追いかけないと…ラティスさんが危ないですね…草花様! 何か方法はありませんか…?」
俺たちは、ラティスが危険なところにあることに慌てふためく。ふと、携帯電話のチャット通話アプリの画面を見た。そこには…メッセージ送信者を含まない、読んだ人数が、3と書いている。
「瞬間移動するぞ…」
「出来るのか?」
「いける…4人分の魔力はある!」
腹を括り、アジトまでテレポートすることに決めた。ラティスは大丈夫か、それだけを思っていた。
「ふぅ…魔法:瞬間移動」
辺りは禍々しく、壁は衝撃の耐性に強い素材。俺たちはそんな場所に瞬間移動してしまったのだ。前方に見えるのは、ラティスと…国滅ぼしのメンバーだ。
「ラティス!」
「草花さん! すみません! 1人で…何も言わず…」
「いいんだ…それより…そいつらは誰だ? 国滅ぼしメンバーの誰かだよな?」
禍々しい雰囲気に慣れながらも、ラティスの声を聞こうとする。少し沈黙が続いたが、その後、ラティスが口を開けてくれた。
「あいつは…」
「あいつは?」
ラティスの言葉に、全員が相槌を打った。奥にいる国滅ぼしは、俺たちが話している時間にバフを積んでいる。
「自分の…友達なんすよ」
<ラティスの過去>
あれは、8年も昔の話。自分の存在意義は、その友達にあった。自分はゴブリンのウィークモンスター。カシラモンスターを目指して、同じゴブリンのプレスと、日々鍛錬を続けていた。
「今日も光魔法がキレキレだな!」
「そっちこそ! 小さく目立ちにくい攻撃がそんなにも絶大威力になるとは!」
プレスは、物体圧力の操作が出来る能力を持っていて、銃弾が一度でも当たればどんな相手でも怯むほど強力だ。
「今日も引き分けかよ…」
「1日1試合、1825戦やったけど全部引き分けだもんな…」
この日に悲しみが降り注ぐ。それは、今自分とプレスがいる場所、シール王国で起きた、シール王国竜巻災害。
「なんだ? 天気が悪いぞ?」
「あれは…竜巻!?」
それは、自分の100倍の大きさはある竜巻によって引き起こされた災害。被災者は、83712109人。そのうちの約半分の人が死亡してしまった。
「うわぁっ! ラティス!」
「プレス! 圧力を操作しろ! 吹き飛ばされるな!」
「無理だ! さっきの戦闘で…体力が…」
プレスは、そのまま吹き飛ばされてしまった。それはもう遠くに。そこからは、腕試しする相手もいない。当時5歳の自分には、光魔法だけで生き延びていくことが難しかった。プレスとの連携で強力なモンスターを倒して、その報酬としてもらった800000チャリンを使って数年を凌いだ時もあった。プレスは自分にとって、人生で一番の友達。
<聞き終わり>
「そんな友達が…国滅ぼしのメンバーになっているだなんて…」
「ラティス、お前は……あの時、助けてくれなかった」




