城の模様替え
「と、とにかく城に入ろうか…」
俺たちは自分たちの身長の2倍はある扉を開け、木造の内装を目にする。城の中身はただの一般的な家だということがバレてしまった。
「これはなんと、まぁ、住みやすそうな家っすね」
「お、おう、そう言ってもらえて良かったよ」
「さぁ、早く模様替えをしましょ」
部屋は5部屋ある、とても広いリビングと、お宝や重要な物の収納室、武器庫、あと個室が2部屋だ。
「個室が2階に2部屋だけか…1部屋に2〜3人入ることになるのか?」
「あの…私たちはどうすればいいので?」
スライムやゾンビなどのウィークモンスターたちだ、確かにウィークモンスターたちの居場所がないかもしれない。そこで俺は、ある案を思いついた。
「じゃあ、買い物して買ってきたふかふかのシーツをリビングに敷いておくよ、そこで寝たり過ごしたりしてくれ」
「はい! 了解です!」
次は個室に誰が入るのかを決めるのか、個室の広さは普通だから、3人はみんな嫌だろう、話し合って決めるしかないな。
「えーと、個室なんだが…」
そこで、プルーリとタクリカルとラティスが一斉に言う。
「私たち3人がいいな、草花とショコラの2人がもう1つの個室に行くって言うのはどう?」
あっちはあっちで決まっているのか。じゃあ、ショコラさえよければ、俺と2人でルームシェアして、この話は終わりだな。
「ショコラがいいならそれでいいけど」
「もちろん…いいですよ…」
「決まりね、移動しましょう」
俺たちは個室にいって、早速模様替えをする。余った素材と魔力で、机や椅子、ベッド、本棚を新たに何個か作り出した。
「部屋の中央に机を置いて、本棚を隅におくベッドは部屋の右側に置こう」
「椅子は机の近くに2つ置いちゃいましょう」
あとは、確か…細かい飾り付けを買ってきたんだっけな? 俺は、タクリカルやプルーリ、ラティスが喜びそうな飾りをあげにいった。
「洗濯のり柄の壁紙ありがと、大事に飾るわ」
「兄貴…なんで自分が野菜の置物好きって知ってるんだ…?」
「数学の本、感謝するっす」
癖の強いものばかり選んでいたから、かなり心配だったけど、みんな喜んでくれていてよかった。俺は自分の個室に戻って、ショコラが喜びそうな飾りを袋から取り出して、机の上に置いた。
「わぁぁ…これ、アロマですか? 一生大事にします!」
「チョコレートの匂い好きかな…と思ったんだが…」
「大好きですよ! 本当にありがとうございます!」
俺たちは個室だけではなく、リビングや宝物庫、武器庫も模様替えすることにした。リビングは広すぎるし、宝物庫といっても宝と呼ばれるものがあまりないため、それらは後回しにして、先に武器庫へ向かうことにした。
「スルト・ソードを3段剣架の最上段に、回転刃ヨーヨーは…自分で持っておくか」
俺がスルト・ソードを剣架に収納している横で、タクリカルは自分の棍棒を武器庫の隅に置いていた。
「もう持っている武器はないよな? じゃあ夕飯の準備をしようか」
(これまでは、地べたにマットを敷いて、センター島から弁当を買って食べてを繰り返していたが、今日でそれともおさらばか…なんだか少し寂しい気がするな…)
俺はキッチンで、卵とケチャップと、米を使った料理を作った。
「草花さん…何すかこれ?」
「米粉クレープだ」
「米粉クレープ…?」
なぜ、米粉クレープにこれほどまで驚きを抱いているのだろうか。もといた世界では伝統的な料理だったのに……この世界ではまだ発見されていない料理なのか?
「もしかして嫌いだったか?」
「いや、まぁいいんすけど…」
「米粉クレープは宗教的に良くないのよ」
宗教…というと嫌な思い出しかないな。この世界にもあるのか…少し絶望した。
「宗教か……米粉クレープはどの宗教によくないんだ?」
「全てだけど?」
俺の問いに対して、全員が口を揃えてそう言った。米粉クレープはこの世界で一体何をしたのだろうか。
「わかった、オムライスに変えよう」
「変えれるんすか?」
「あぁ、魔法:万物創造」
魔法を放つと、米粉クレープは光の球体を纏い、光が消えたかと思えば、オムライスに姿を変えていた。
「変わったわね」
「大体の材料同じだから」
「いただきまーす!」
俺たちはオムライスを、それぞれスプーンや箸で頂いて、プルーリの魔法で風呂を一瞬で済まし、歯磨きをして各部屋のベッドへ向かった。
「さて、そろそろ寝るか……もう地べたで寝なくていいんだ……ベッド1つしかないけど、あっちの部屋、3人で大丈夫か…?」
「きっと大丈夫ですよ」
「よし、布団を被るとするかな…よく考えたら、布団も1枚しかないのか…」
布団を敷いて首元まで上げると、チョコレートのアロマの香りが薄くなり、自然に目が閉じていく。俺は、眠気に少し抗ってショコラの方を見た。
「どうした? 布団被らないのか?」
「草花様と同じ布団で寝るなんて…」
「布団ないと風邪ひくぞ、遠慮はしなくていいから、俺はもう寝るよ」
俺が眠ったその瞬間に、ショコラは布団を被ってくれたのだろう。布団の中があったかくなり、足同士が当たった感覚がした。朝になると、窓から光が差し込み、目が開いていく。
「おはよう…」
「おはようございます、草花様」
黒と紫の揺れる髪と、緑色の瞳がぼやけた視界に入り、それは次第に鮮明になる。
「先ほど、タクリカルさんがエーグリーを作っていましたよ…」
「エーグリー?」
「知らないんですか? 酢醤油を混ぜ込んだ米に、ふわふわに冷たく仕上げた玉子を乗せ、さらに上から醤油をかけた丼物です」
こちらの世界では聞いたことのない料理だが、卵好きからいえば、とても美味しそうなので、とりあえずそのエーグリーとやらを見るために階段を降りた。
「おう、兄貴、ようやく起きたか…エーグリーできてるぞ、卵6個パックが300チャリンで売っていたもんでな…食べてくれ」
「いただきます」
淡く赤色に光る米に、その上に乗った茶碗の端から渦を描くように中心まで巻かれた黄金に輝く玉子を見た。
「おぉ…朝でも食べやすいように米の量や酢醤油が少なめになっている…」
「醤油が甘いわね…新感覚だわ」
「少し砂糖を入れて、砂糖醤油にしてみたんだ」
カツ丼や牛丼とは違う、あっさりしていてちゃんと味付けがされたこの料理は、この世界ならではの味を感じる。
「ごちそうさまでした」
プルーリが皿やコップをささっと洗うと。椅子に座って会議の準備を始める。
「どうする? 俺たち、そろそろ新メンバーを探しに行ってもいいと思うんだが…」
「行ってもいいと思いますよ、でも、草花様のお人柄から、酒場とかで探すのは好みじゃないですよね…?」
ショコラは俺の人柄をよくわかってくれているようだ。なんだかんだで昔からの付き合いからだろうか。
「欲を言えばそうしたいな…」
(俺、未成年だし…酒飲めないんだよな…)
「あ、それにはぴったりの場所があるっすよ」
皆が出発先で悩む中、ラティスが口を開く。ラティスは、いつも真面目な案を提示してくれるので、心の奥で安心した。
「ウェルデリアっす、8大王国外っすね」
ウェルデリア…8大王国外というと、センター等を囲む世界8大王国より外側に存在する島のことか。
「だが、ウェルデリアには国滅ぼしのアジトがあって、行くにはリスクが高い…No5の1人を倒しただけで、No5はあと2人いる…No4〜1も3人残っているというのだ、ウェルデリアに行くには結構な度胸がいるぞ」
タクリカルは、ウェルデリアが国滅ぼしに占領されているということを話す。
「いいや、いつかは国滅ぼしの問題も解決しないとなんだ…」
「まぁ、脅威をほったらかしているわけにもいかないわよね…」
「いくぞ、そのウェルデリアに」




