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怨恨

「ん? 国民達、どうしたんだ? この大量の素材は」

「フェロウ”王国”なんだから城があるべきっすよ、なので、万物創造(マテリアルクラフト)でこれをちゃちゃっと城にしてくださいっす」


 国民達は俺がショッピングをしている間に大勢で城の素材を集めてくれていたのか。木が丸太2000本、鉄が鉱石1500個分。これだけ素材があればほとんど魔力を消費しないし、今城を作ってもすぐに寝ればなんの問題もないだろう。


「わかった、作ってみようか……魔法:万物創造(マテリアルクラフト)!」


 城は下から徐々に構築されていき、やがて3階まで聳え立つ高さになった。だが、内装をまだちゃんと整えていないので、今日が地べたで寝る最後の日になるだろう。


「でも、城が立ったせいつものようにバラバラの場所で寝ることが出来ないわよ」

「じゃあ、布団を横並びにくっつけて寝ればいいだけだろ」


 まぁ、適当に左からタクリカル、俺、ショコラ、プルーリの順で寝ることになった。ラティスは夜も警備してくれている。


「プルーリ寝るのはやっ! まだ1分も経ってないぞ!」

「プルーリさんは早寝早起きタイプですからね〜」

「タクリカル? タクリカル〜? おーい!」


 どうやら、プルーリとタクリカルは眠ってしまったようだ。起きているのは俺とショコラだけか…早く寝ないと……寝るか、あいつのことを思い出すな。そういえば、スルト物語のようにヒュプノスにも本があるんじゃないか? 本を読んだら眠くなってくるというものを聞いたことがあるぞ。うん、読んでみよう。


「魔法:対象(ターゲット)瞬間移動(ワープ)


 これで本だけをこちらに移動することができたぞ。起きていればまたドロップアイテムの箱に戻せばいいだけだから、うん。そうしている間にショコラも、何故か顔を赤くして眠ってしまった。


<ヒュプノスの過去>


 あれは、いつだっただろうか、西暦4028年には科学や文化、機械というものが発展していて、我はそれを庶民的に活用していたただの人間とモンスターのハーフだ。当時は多様性というものが謳われていたが、我はそれを聞くたびに反吐が出そうになる。


 我が子供だった頃には家族が3人いたのだ、かけがえもない3人だった。1人目は双子の兄弟のタナトス、2人目は我とタナトスの母親であるニュクス、3人目は家族とは違うかもしれないが、彼女のパーシテアー。将来はパーシテアーと同棲をして子を授かることを夢に見ている。


 だが、魔学院の同級生ときたら……あれほど頭に来る奴らはそうそういないさ。我は勇気を出して学院に行く日もあれば、自分の体と心を休ませるために学院に行かない日もあった。これは学院に行ったある日の話である。


「1時間目を始めるぞー」


 この日は1時間目も2時間目も数学だったか? 我は思い出したくもない……我はしょっちゅう学院に行っていなかったので、力試しとかくだらない理由でよく先生に当てられる。


 我は休み時間は何もすることがなかった。我からしたら、あの短い時間に何かをしようとする奴がおかしいのだ。


 だが、我の地獄の時間は放課後だ、毎日毎日毎日毎日放課後に鬱陶しい奴らどもがわざわざ我のもとにやってくるのだ。


「よぉ、相変わらず気に食わねぇなぁ! ヒュプノス! なぁ!」


 この学院の生徒会だ、学年も違うというのに、何故我をからかいにくるなんて、簡単なことである。あいつらが我をからかう理由なんてないのさ。ただストレスが溜まったから、それだけである。


「大体、モンスターのくせして人間を名乗るとかおこがましいんだよ!」


 我は毎日酷い仕打ちを受ける。こんな日々が続くだけ。しかも、こいつらは最後に回復魔法を使うのだ、本当にタチが悪い。見ただけでは酷いことをされているとわからないように回復をかけるなんて。


 その次の日の朝の全校集会であいつが言ったことは、腹を立てずにはいられなかった。


「みなさん、生き物は種族で決めつけないでください、種族なんて生まれつきの個性でしかありません、多様性というものですよ、重要なのは中身です」


 どの口が言うのだろうか、毎日我をいじめているくせに。いや、我だけが傷つくならまだ良かったのだ。それはまたある日のことだった。誰かがある家に火を放った事件で、我の一家は崩壊した。タナトスもニュクスもパーシテアーも、そして我も、あの事件で消えてしまった。我は事件が起きてから恨みしか残らなかったよ。


「あいつらめ! 絶対に許さない! 許さない! 許さない!」


 事件の時、すぐにわかった、あの生徒会の鬱陶しい奴らだ。あいつは家族にまで手を出しやがった。我はいつかあいつに復讐してやる。


 怨念となって絶対にあいつに一矢報いる。我は悲しみや恨みに明け暮れて夢を見た。


“遊園地で彼女とデート中に例の事件が起きて、辺りが地獄と化す”という夢をな。


 時代、場所、姿なんかどうでもいい。いつか世界も人間もこの手で終わらせたいと思った。


<読み終わり>


「もしかしてミソロジーモンスターは全員辛い過去を背負っているのか?」


 俺は涙が出そうなのをぐっと堪えた。ふとアームウォッチを見ると、もう午前の5時になっている。この本はドロップアイテムの箱に戻しておこう。


「早起きってことにしておこうかな…」

「あれ? 草花さん、だいぶ早いっすね」


 俺は、ドロップアイテムの箱を取り出して、プルーリの枕元の近くに置いておく。


「他のやつの近くに置いておくと腐ったり壊れたりするかもしれん…」


 かなり勢いよく箱を地面に置いたからだろうか皆が起きてしまった。8時半に寝たので、5時に起こしても睡眠時間は十分確保できているだろうから、体に悪影響はないのではないかと思う。


「おはよう、兄貴、これは何ですかい?」

「ヒュプノスのドロップアイテムだ、フィジックスが何もいらないっていうから、持って帰ってきた」


 俺はそのまま箱を開けた。今回はちゃんと5つ入っているようだ。中には、“ヒュプノス物語”、“ミソロジーのかけら遊園と地獄(ポーカーインフェルノ)”、“アームウォッチ・復讐”、“ヒュプノスのフィギュア”、あとヒュプノスに関する武器が入っていた。


「あ、ヒュプノスの武器だ」

「草花さん、何が入っていたんすか?」

「え? それ何?」


 プルーリが驚くのも無理はないだろう。なんたって、回転刃のヨーヨーだったのだから。俺も驚いたが、何やらこの武器、ダメージを受けるごとに火力が上がるらしいのだ。


「これは、耐久力が必要な武器だろう」

「兄貴、あの95mくらい離れたの木を、それで真っ二つにしてみてくれよ」


 タクリカルは、このヨーヨーが離れた大木を壊せるほどの力があるか試したいようだ。俺は指に糸を絡ませ、思いきり腕を横に振った。すると、ヨーヨーが大木にぶつかった瞬間に粉々になって散っていったのだ。


「いやいや、真っ二つにして粉々にした挙句、消滅したかのように散っていったんだが…」

「ミソロジーモンスターの武器なんてこんなもんっすよ、知らんけど」

「威力すごいですね…! さぁ、そろそろお城の内装をどうするか決めませんか?」


 そうだな、せっかく城を作ったんだから内装を決めるべきだろう。あの素材の量だと、中身が一般家庭の城になってしまったが。

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