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第二章:ジャックとカミソリ


第二章:カミソリとジャック


 サマンサの白い肌を、男の指が伝う。顔を赤く染めて喘ぎ、服の下に滑り込む指には抵抗もなく。男の指は彼女の腰から秘めたる部分へ向かい……


「この後どうなると思う?」


 自作の官能小説を音読するというバカガキジャックをぶん殴り、蹴り出そうとしたらサマンサに止められた。あんたこんなのに名前使われて平気なの?と怒ると何を書かれているかよくわからないらしい。まったく、このご時世だからそういう性的な情報はものすごく限られて、知らずに過ごすか自分で妄想を炸裂させるか、男はこっちに走ることが多い。だからって知識がないからこの後がわからないと人に聞くほどのバカはそうそういない。女性がいるのに!ケタケタ笑うミミズクが、これくらいいいじゃないかと適当なことを言う。荒野を巡れば力づくで事を為そうという暴漢がいくらでもいる。自分で考えていればそのうち文才が開花するかもしれない、そしたら女だって放っておかないと男ってみんなこうなのかと呆れるばかりの話が続く。あの後町をしれっと通り抜けようとしたミミズクはもちろん身分証がないので通すことができず、「どーしたら通れるんだ!」と困っていたが通る手段がないのだから通れない。二日に一回来る定期便を押さえればこっそり出るなどもうできないし、ドライバーたちと個人的に交渉しようとすればそこは元々検閲が入るところ、私の管轄。見つかったら今度こそお縄だからリスクが高く、そもそも検閲する=「あいつはどこ?」をいつも気にしているからバレないわけがない。通してくださいよ保安官〜、よ!美人!世界一!と煽てると逆に怒られた経験からもうそれもしなくなった。一応学習できるらしい。隙あらば逃げるかもしれないけど隙がないというか我が身一つで荒野に出たら全部隙間だから隙間の中で野垂れ死ぬ。結局ここで立ち往生、何かの機会を待つしかない。今にも余計なことをしそうだから「余計なことしたら捕まえる」をいつでも発動する準備がいる。逆に神経を使う!でもこいつを、気に入っている人も一応いて。


「いりゃあいいじゃないか、鉄砲教えてくれよ!」


 あと、ホバーシューズも!と目を輝かせるジャックは、一応男の子然としたそういうのも好きらしい。中年のおっさんみたいな性癖なのかと思っていたけど、二面性というやつだ。オレもそういうのやりたい!教えてくれよ先生、このイーグルに!と安直な名前を考えて「オレがミミズクなのにお前がイーグルか」と一瞬で突き返されて、その後も何度か頼んでいるらしい。鉄砲は危ねえから分別つかないと持てない、と今日も断られている。その代わりに教えてやる、とミミズクは何か考えがあるらしい。


「こういう風に腰に手を回したらどの指が最初に届くか決まるだろ?」


 体の真ん中に最初にこう届くからここからこう、と真面目に言い始めたのでジャックともどもぶん殴った。私だってジュウゾウさんが言ってたことしか知らないけど、とにかくそういうことは人前で言うな!「全部見せるのは大事な人だけ」。ジュウゾウさんの教えだ。


 『小説の続きのアイデア』を教えてくれないなら、やっぱり鉄砲!まずはホバーシューズでもいい、とジャックにせがまれてミミズクは店を出た。ピョーンと件のホバーシューズで建屋の上に跳ねて、そのまた向こうへ。あっちにある岩場に行くらしい。散歩に出かけられる範囲はディサピアでは限られる。かくれんぼにはちょうどいい場所だし、岩場でジャックを煙に巻くのだろう。迷子にならないようにね。勝手に帰ると、相手が困るわよ。


 日が暮れた頃、ミミズクはバー・ボッ……サマンサの酒場にいた。あいつ、なんだ?と真面目に聞かれたのでやっぱりジャックって男から見てもおかしいんだと思って聞いていたら、なんか話が違う。追いつかれた、とミミズクが不服そうだった。岩場に紛れて、通り過ぎるだろうとのんびりしていたら、来た。地の利というやつだろうか。それくらいは考えたはずだが……ジャックは得意がる風でもなく、なんで逃げるんだよお!と文句を言っていたらしい。聞きたかったんじゃないの?続きのアイデア。……なら、教えてやればよかった、とミミズクは席を立った。その話は、しなかったらしい。ミミズクは酒場の裏の納屋に引っ込んだ。毛布を押し付けてここに放り込んだのは私だけど、サマンサが鍵をかけようとしたのにはちょっと驚いた。納屋の鍵なので外にある。モップと雑巾しか入ってないのに、いつもかけているから間違えたらしい。




 ルートゥが大暴れした直後、町にいる唯一の技師、アルベルト・ワイルドさんは語った。「ワシは世界一の科学者だ、見返してやるぞぉ!」。いつもの爺さんのボケはもう誰もツッコンでくれない。まあワイルド博士ならそれくらいでちょうどいいだろう。博士、というのは愛称で博士号を持っているかどうかは誰も知らない。持ってなくても博士くらい名乗りそうだし。そういうのは気にしない博士だ、ワイルドだなあ。そんなことはさておき、ルートゥの機体を片付けるにはまず危険物があるかどうかくらいは知らないといけない。町にいる中で技師と呼べる人はワイルド博士だけ、もちろん誰も頼まないけど「ワシに任せろ!」というのでみんなハラハラして見ていた。その結果、触らないほうがいいという結論をワイルド博士が残した。エキドニウム用と思しき反応炉は今は安定しているが機体がこの状態、下手に衝撃を与えるのは得策ではない。ワシが言うんだから間違いない!と語るワイルド博士を見て「博士でもわかるのだからそうなんだろう」とみんな納得した。でもワイルド博士は私のところに来て、真面目に聞いた。お前はあいつと仲が良かったらしいな。何か知らないか?私が父さんと一緒にこの町に来て数年後にディサピアにやってきたワイルド博士は、自分の知らないことがあると思っているらしい。内部にあるエキドニウム反応炉はあくまで反応炉、動力炉ではない。あいつは何か、とんでもない爆弾を抱えていたのではないか?……変わり者の爺さん相手に本気で怒るのも馬鹿らしくて、そんなわけないし、私は知らないと言っておいた。知っているとしたら父さんだけど、そんなことは私も知らない。これ以上は、遠慮してくれない?ワイルドのボケ爺さんは、仕方なしといった感じで引っ込んだ。夕焼けに染まる町と、ルートゥの亡骸。オレンジ色に染まるルートゥが、今もいてくれたらと思うと胸が痛くなった。


 ルートゥが何を積んでいたかどころか、仕様や型番を知っている人も町にはいない。私も知らなかったし、本人も知っている様子がなかった。規模が規模だからオーバーホールに設備がいる、と設備さえあればみたいに語るワイルド博士の話はみんなで流していた。でも、型番を知っている人がいる。今は偶然、一人だけ。HP−ラブ13という番号はかなり古いけど記録に残っていて、どこかから送り出されたものが今も稼働していたのだろうと語るミミズクはルートゥの仕様を知っていた。なのに破砕弾なんて撃ち込んで、誘爆したらどうするボケー!ほとんど八つ当たりだけど、大丈夫だとわかっていたという。HP−ラブ13には本来エキドニウムなんて使わない。オプションをつけるなら無理をしても腹の中、指示系統を縦に撃ち抜けば指令が止まってあの通り。「外さなければ」と最後に付け加えたのでやっぱりぶん殴った。結果的には止まったし被害は減ったわけで、それ以上は殴りにくかった。


 顔をパンパンに腫らしたミミズクに、ジャックが教えを請うた。女というのは無限の神秘と可能性を秘めていて同時に危険な棘もある、とミミズクが話していると、「はぐらかすなよ!」。ジャックとしては真剣に聞いているので、大好きな×××の話にも食いつかない。しばらく考えたミミズクは、関わらないほうがいいとジャックに言っていた。これをするのは気がついたヤツだけ、教わってなんとかしようというのは危なっかしいばかり。知らないで平気なら、知らないのがいい。ジャックは怒って店を飛び出してしまった。ミミズクはなんだか落ち込んでいて、危なくなければなあ、とつぶやいてそれ以上何も言わなかった。ほったらかすのもよくなさそうだから、ジャックを追いかけようと店を出たんだけど。


「すみません。ケイト・アップルバーグ?」


 中央からのお使いだという男が二、三人。妙な連中が混じっていると大変だから身分証を出させて、ルートゥの機体を片付けに来た、という事情を聞いた。来てくれるなんて思ってなかったから私は要請してないけど、この事態だから町の誰かが相談したんだろう。危険物処理の専門家だという男たちは、ルートゥの亡骸を探ろうとした。でもその辺をうろついていたワイルド博士に何か言われて、引っ込んだようだ。危険レベルの放射線が出ていると聞いて一度準備するらしい。ワイルド博士、それ本当?なんで言わないのよ!と聞くと「あいつらは不合格」。ガイガーカウンターのレンジと目盛りがわからない専門家など、危なくて入れれんわい。がいがー……何それ?私全然わからない。ワイルド博士曰く、今はD I Vラジエートメーターと呼ばれていて、放射線を計測する機器を千二百年前はガイガーカウンターと呼んでいた。わかるかボケー!ワイルド博士の無駄知識おっぴろげはいつものことだけど。


 中央の専門家を見て、ミミズクが訝しげにしていた。身元は確かだと言っているのに何者かを気にしている。中央管制のコードを持っていたからそこから来たのは間違いない。そこまで教えても「じゃあ怪しい」と納得しない。何がじゃあよ、確かだって言ってるのに。専門家たちは、出ていない放射線を警戒して動きが鈍い。こういうのは担当者に任せるのがマナーだし……ルートゥをいじられるのはいい気がしなかったから、進まないほうがいいと思って私は黙っていた。でも専門家たちは、他の目的もあるみたいで。


「近くに発電プラントがあると聞きました。ご案内いただきたい」


 ルートゥが充電に使っていたプラントは、大きな設備だけど発電量が少ない。太陽光、地熱、風力……いくつかの要素を組み合わせて適宜最適化、最大の発電量を目指すけどまだギリギリエネルギー資源があった時代のもので、当時の化石燃料の価格暴落に飲まれて普及しなかった。バナナの叩き売りのようになくなった燃料は、今も代替品が見つかっていない。発電プラントは昔のものだから、もしかしたら今使われていないテクノロジーが多少なり残っているかもしれないけれど、中途半端な時代のものでディサピアの人はバッテリーを充電しに行くだけ。稼働しているのが不思議な施設だった。危ないし何もないし、ルートゥは充電してただけ。行っても仕方ないですよ。でも専門家は是が非でもと聞かないから、しぶしぶついていくことになった。明日の朝、案内します。そう言って寝ようとしたんだけど。


 バー・ボッ……サマンサの酒場で、トラブルがあったらしい。壊れたラジオを直してやる!と言い張ったワイルド博士が、どかーんと爆発を起こした。どうやったらラジオを直して爆発するんだろう、「ハイパーな仕上がりにしてやる!」と言ってたらしいので光線銃とかつけようとしたのかな。酔っ払ってましたから、とフォローするサマンサは烏龍茶を持っていた。博士は烏龍茶で酔えるらしい、健康にいいな。真っ黒焦げの博士を介抱する時間外業務は割と頻繁にあるからあまり気にしない。ラジオのニュースに耳を傾けて「ラジオが直っているなら何を爆発させたんだろう」と不思議に思った。


「……ガガ……ガガ……ピー……ガー……番組の途中ですが、臨時ニュースです。旧デルドレッド連邦の大使館で銃撃戦があり、新しく発表されたエネルギー政策を巡る過激派の侵攻と見られ……」


 またか。あーあ、物騒ね。と言っていたら「ワシのハイパーガトリングキャノン!」と寝言を叫んでワイルド博士が飛び起きた。あんまり大声で言うものじゃないですよ、と困ったように笑うサマンサはなんだと思っているのだろう。とにかく爺さんが目を覚ましたから帰ろう、明日早いし。そう思っていたのに、博士に止められた。この後行こうと思っとった。エネルギー政策のニュースを聞いてな、とラジオを一応直していたから何か鳴っていたらしい。ちゃんと直ってるわよ、と伝えると、もっとデカいものが、早晩壊れるという。新規のエネルギーに目をつけた旧デルドレッド連邦が、世界中から何かをかき集めている。予想はつく、とワイルド博士は当然のように語った。


 強大な灯。強烈な光。それは時として、閃光とともに町を焼く。恵みと、鉄槌。その両方を手中に収め、振り下ろす。頭を割られぬよう、蜜に縋る蟻のように群がる、虫ケラ。そんなものは科学ではない。ワシが言うんだから、間違いない。ワイルド博士の言うことはつかみどころがなかったけれど、なぜか真剣な気がした。ワイルド博士が唯一理解できるのは、壊れるなどとは思っていないということだという。上手くいかぬわけがない。作る。そして、壊れる。ワシの、キャノン砲のように。ラジオにつけようとした馬鹿げた装置は、案の定上手くいかず博士は黒焦げ。冗談でいいなら、土下座で済ますのだがな。言いたいことを言った博士は、飯食って歯を磨いて寝ろ、と自分だけ帰ってしまった。サマンサの酒場に、ラジオの音だけが響いていた。


「新型の大規模発電装置の有用性は新技術により実証されており、今後の世界経済の中心となることが予想されていて……ガー……ガガ……ガガ……ガガ……」




 エネルギープラントは少し離れていてディサピアに帰ろうとしてもすぐにとはいかない。だから朝一番に行って日が暮れるまでに帰るのがいい。ワイルド爺さんに付き合って寝不足なのに日が昇る前に起きて準備をしていた。ワイルドでしょう?なんせよそのお偉いさんなので気を遣って抜かりがないように、と早めに起きて移動用のバギーとか簡易トイレとか準備しておく。ふと、音が聞こえてきた。ハーモニカだ。ミミズクが、屋根の上で吹いているのが月に重なって見えた。そのミミズクじゃないという割には名前の通りのことをするのね。ミミズク!と呼ぶとピョンと降りてきた。うるさかったかな、と照れくさそうにしていて、日が昇ってからにしなさい、とだけ言っておいた。日の出とともに歌ったらミミズクというより雄鶏ね、と口走って「チキン」という悪口になったと思った。さすがにそんなつもりじゃないから焦ったけど、気にしなくていいという。そういう意味じゃないとわかっていたのではなくて。


「言われても仕方がない」


 臆病者。そんなものだろう、とミミズクが目を伏せるから逆に嫌味だと思って怒鳴りかけた。そしたら、ミミズクが私の肩越しに何かを見つけた。振り向くと、隠れるように通り過ぎるジャック。こんな時間に何をしているのだろう。気がついたら天窓に近い位置のシャワールームの小窓によじ登っては怒られているジャックだけど、こんな時間に水浴びしている女はいない。夜明けまではまだ少し時間がある。不思議に思ったけど、思い出した。ワイルド爺さんを介抱して気がつく前に、サマンサが言っていた。中央の専門家の一人が、ジャックの『自作小説』に目を通して素晴らしいとベタ褒めしていたそうだ。私なら首をくくりたくなる話だけどジャックは喜んで、もっとこうすればいいと思うのだが、ここは女性の目があるからまた明日、と適当なことを言っていたらしい。普通はまた明日と言えば昼日中だ。でもそいつがジャックに何時にすると言ったかは聞いてないし、サマンサだってそこまで知らない。でもこんな時間に呼び出すなんておかしい。隣にいるミミズクを見て「じゃあ怪しい」と言われそうな気がして、私はジャックを追った。


 後ろからミミズクが来ているのを感じながら、ボロボロの礼拝堂に入るジャックを追いかけた。町の建造の時に義務として作らないといけなかった礼拝堂は、作りはしたけど誰も維持管理していない。私が子どもの頃は、あそこはあれでいいんだよというお年寄りが何人かいた。ミミズクが止めるのも聞かずにその中に足を踏み入れて、強烈な光が見えた。目が潰れたかと思うような光にうずくまって、背中を誰かに踏みつけられた。中央の専門家の一人。おや、保安官でしたかなんて言ってるけど誰であってもしていいことじゃない。離しなさい!と言ってるのに背中にまたがって頭を押さえられた。追ってきたミミズクが、怒りの形相を浮かべるのがかろうじて見えた。でも私の頭に銃が突きつけられると、何もできなくて。


 何すんだよ!と聞こえてきたのは、ジャックの声。中央の専門家のうちの一人は、私たちに構わずに話を進めた。君に頼みたいことがある、と取り出したのは、カミソリ。あの機械の中にある動力源を、取ってきてほしい。中央の権利で褒美は思いのまま、君の年齢なら興味のあることもね。もし受け入れてくれるなら、これを渡そう。カミソリを礼拝堂の壁につけて、カリカリとなぞった専門家は舌を舐めずって笑った。地面を伝ってミミズクが足を踏みかえる音が聞こえて、どうやら引き金に手をかけた。それと同時にガツッと頭を叩かれるように固いものを押し当てられて、これじゃこいつを撃っても銃が暴発するかもしれない。どうする?と決断を迫られるジャック。こいつら、放射線の話を少しもしてない!そんなものは出ていないのに出ていると思っている「専門家」は、自分たちで危ない作業をすることを避けて、その辺にいたジャックに押し付けた。自分たちがいないときに、やっておけですって?専門家は刃をしまったカミソリをジャックに向けた。これを持てば、君もこちら側。名前はそうだな、ジャック・ザ・……。そう言いかけたとき、ジャックが歩み出た。カミソリを持つ専門家に、一歩、また一歩。ふらり、ふらりと誘き寄せられ、手を伸ばした。そのとき。


「わーっ!!」


 ジャックがいきなり急発進、専門家の横を走り抜けて私に乗っかってたやつの顔を叩いて全力ダッシュ、なんだ?と驚く間にぐらっと揺れた男の尻から転がり出て、得意のサッカーボールキックでばちこん!と蹴っ飛ばした。私を押し倒して乗っかろうなんて、千年早い!西暦が四千五百年になったらまた来なさい、続いてたらね!スカッとしたけど中央の専門家たちは案の定武装していて、私もジャックも狙いになってる。銃口を向けられたジャックに、危ない!と叫んだんだけど。


 だだん!と踏み切って壁に飛び移り逆方向の梁を掴んで思いっきり体を振って、あっという間に礼拝堂の逆側に回ったジャック。あいつ、こんなことできたの?どうやってシャワールームの窓に登っているのかと思ったら、ビョンビョン飛び回るのがそもそも得意らしい。また飛び上がって祭壇のあたりに降りようとしたジャックは、腐った壁に足を取られてバランスを崩した。またジャックを銃口が狙うけど、飛び込んだのはミミズク。ホバーシューズで一っ飛びにジャックを捕まえて小脇に抱えて「よくやった!」。くるっと宙返りして銃声が三発、全てミミズクのプラセンタ。専門家を名乗っていたおかしな奴らはみんな倒れた。


 身分証は確かだったのにそんなことがあったから中央に文句を言ったら、精巧な偽造品が出回っているという。こっちで気をつけろですって?対策しなさい!と怒っている私にミミズクが呆れていた。ジャック!あんなのについていくんじゃない!と怒ったらジャックが落ち込んだ。それを見たミミズクが、ジャックを呼んだ。考えたんだ。お前の名前。ホークよりイーグルより、ずっといい名前がある。そう言ってミミズクはニヤリと笑った。


「ジャック・ザ・……グラスホッパーってのはどうだ?」


 グラスホッパー。「バッタのジャック」。ジャックはゆっくりと表情を変えて、やったあ!と喜んでいた。とーっ!キーック!喜びすぎて何を目指しているかわからなくなっている。これでオレは、ミミズクの弟子!と喜ぶジャックを、「鳥ですらないだろう」とミミズクがあしらってずっこけていた。弟子に取るつもりはないらしい。鳥じゃないと言ってた割には、こいつもそこそこ調子がいいわね。


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