表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

英雄

作者: 甘木

『ん?ここは何処だ?』

薄暗く、変な匂いがする空間に俺はいた。

ボロボロになった服の上から、からだは縛りあげられ、足も縛られている。

手は後ろ手に回されて、手枷がされていた。



…王城の来賓の間で寝たはずだったのに、今は知らぬ間に地下牢か。


服を見ると、刀で切った跡や槍で突いた跡がある。

そうか。俺が寝たあとに殺そうとしたが失敗して、牢に閉じ込めたか。


俺は魔王を討伐なんかしていない。が、退却を見て討伐されたと考えたのだろう。

魔王の脅威が無くなれば、次の脅威は俺だと思ったに違いない。


それにしても魔王軍の連中が傷ひとつ付けられない俺の防御魔法を、

魔王軍に手も足も出ない連中に何かできるはずもない。バカかな?。



いつまでも縛られていてはいらないので、

「ふんっ!」

ブチブチと切れ、ガシッと手枷をつなぐ鎖が壊れた。


手枷はどうやら魔封じの機能を持っているようだ。

だが、魔王軍の魔力をどうすることもできないのに、

俺の魔力を封じるなど、できるはずもない。

何か邪魔があるなと感じる程度だ。気休めかな?



そもそも何故俺が城にいるかと言うと、魔王軍撃退の功労者として、

欲しくもない褒章を渡したいと、無理矢理連れてこられたためだ。

撃退と言っても、王都にいた魔王軍を退却させただけだ。

国から見れば敗戦濃厚の事態を反転させたわけだから、撃退した英雄にしたかったのだろう。

あれ?英雄をどうして殺そうとしたんだろう。


別に俺は国のために動いた訳ではない。魔王軍が俺の住む村に来たので殴り倒し、

命令した四天王の一人を締め上げ、元凶の魔王をタコ殴りして撤退命令を出させただけだ。


魔王のやつ、俺を悪魔呼ばわりしやがったので、

撤退命令を出して俺の住む村に手を出さないと約束すれば許してやると言ってやった。

すぐに動かないと殺さずに済ませることを止めると伝えたが、

命令がすぐには前線に届かないとかぐずぐず言うので、

証拠に使うために魔王の角をへし折ってやり、残りの四天王に見せたら、

やつらは慌てて全軍撤退命令を出しに行った。俺も魔王の角を持って、

王都の中で暴れていた軍の指揮官に命令を伝えて帰らせた。


たいしたことはしていない。誰も殺していない。

心を折っただけだ。あっ、魔王の角は折ったか。



それにしても誰も来ないな。

牢に閉じ込めて、餓死するのを待っているのかもしれない。

これで閉じ込めているつもりなら、想像力がなさすぎる。

俺がどうやって魔王城に入り込んだかを想像すれば、

この程度の檻や壁は無いに等しいことが判る奴は何人かは居るはずだ。


…判る奴はもう逃げたかもしれないな。逃げ切るまで、もう少し待ってあげよう。


昼過ぎまで待ったが、やはり誰も来ない。

仕方がないので、自分で外に出ることにした。


あまり壊してもなんなので、牢の出入口だけ破壊する。

壁を壊そうかと思ったが、地下牢だと面倒なので正攻法で進む。


やはり地下だったようで、階段を上がると、牢番の兵士が二人いた。

俺を見るなり、一人の男が、

「脱獄だ!報告せねば!」

と叫び走り出す。


逃げたな。


もう一人は硬直している。

「俺は牢に入れられる覚えがない。何かの間違いだろう。村に帰るから、案内してくれないか?」

俺がそう言うと、男は

「かしこまりました。こちらです。」

と言って歩き始めた。


俺を恐れているようだったが、足取りはしっかりしている。

俺には絶対敵わないからと、ある意味開き直っているようだ。


待ち伏せとかがあると思っていたが、何も無く門まで出られた。

俺をどうにかする方法が立たなかったのかもしれない。



まあいいや、帰ろう。

魔王が『俺の住む村に手を出さない』の意味に気付けば侵攻をやり直すだろう。

あと1年位かな?多分お伺いには来るだろうから、

それまでにどこまでは許す、どこからは許さないというのを決めておこう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ