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第7話 施設襲撃

 レージェストとケイトは山の中腹の小高い丘に身を隠し、目的の塔を視界に捉えていた。要塞にある城壁の角に建てる側防塔のような塔が木々の広けたところに1つぽつんと建っている。


「本当にここか?」


 ケイトは「たぶん…」と鈍く言うので、その頼りない返事に一抹の不安を感じながらもレージェストは塔に目を向けた。

 塔の上には見張の兵士らしき日影が何人か確認できるが、これだけではここが目的の場所かどうかはなんとも言えない。ここから先に城や町があれば、その防衛システムの一つという可能性がある。敵の襲撃を確認し狼煙をあげ城や町に危険を伝えるという役目を持つこういった建造物はよくあった。

 それを確認しないことには…。そう思っているとケイトは口を開いた。


「ここら辺一帯を飛んだんだけど何も見当たらなかったから」


 無用な心配だったようだ。こういうところはちゃんと調べているのだからさすがだな、とレージェストは思いつつ改めて頭の中を整理する。たしか人間の奴隷が連れてこられていたとケイトは言っていたが、この塔にそんな人数を収容できるスペースがあるとは考えられない。見張りの兵士数人が入るので一杯一杯だろう。やはり地下に収容施設があると考えるのが妥当だ。


「(そうするとあいつらは…)」


 …落ち着け。体の中に沸々と沸き起こる怒りを感じたレージェストは、腰に下げるポーチから皮でできた水筒を出すと水を少し口に含み喉を潤した。


「ここにあいつらは捕まっているかもしれん」

「うん」


 ◇


 ここ数年、獣人が人間によって狙われることが多くなった。

 人間の国・ヴァーシュタリア王国では、人間が人間を売り買いする奴隷制度というものがあるらしい。同族を奴隷として扱い、それを許容するシステムには昔から理解に苦しんだものだが、その標的として獣人が狙われるようになり近年その被害数が急速に増えてきてからは、獣人の間でも人間の国の問題といって放置することができなくなりつつあった。


 そこで獣人たちは各々が各地で立ち上がり人間たちの横暴に反旗を翻したのだが、肉体的に優位に立つ獣人といえどゲリラ的な人間たちの襲撃には苦戦を強いられた。立ちあがる者は次々と捕まり奴隷として売られていった。

 そんな状況を見かね、点々と各地で対抗していた獣人たちを一手にまとめあげた者こそ、このレージェストだった。


 レージェストは彼らのリーダーとなり、人間が襲撃してくるのに抗戦するという単純な戦闘に戦力を使うのはやめ、戦力を集中させゲリラ的に捕まった獣人たちを運ぶ船を襲ったりすることで多くの獣人を救うことに成功した。レージェストが指揮を執り作戦の先頭を行く姿は彼らを魅了し、ゲリラ軍は倍々に規模を膨らましていった。


 しかし、人間側もバカではなかった。レージェストのまとめあげたゲリラ軍が膨れ上がるにつれ市場に入る獣人の奴隷の数が減ったことを知ると、やつらはターゲットを変更してレージェストのゲリラ軍に標準を絞った。

 各地にあるゲリラ軍の基地が狙われ崩壊し、多くが捕まってしまったのだった。


 ◇


「あいつらはただ同胞を守りたかっただけだ」


 若い獣人もいた。彼らを立ち上がらせてしまったのは俺だ。俺が彼らの善意に火をつけ彼らを奮い立たせてしまったがために、ゲリラ軍となり捕まってしまった。

 わかっている。彼らが奮い立たなければ、もっと多くの獣人が人間の奴隷として売られ悲惨な末路を行くことになっていただろう。それでも彼ら一人一人の顔を、声を知ってしまったレージェストには、彼らの犠牲を尊いものと割り切ることはできなかった。


「ケイト、おまえはここまででいい。ここからは俺が一人で行く」

「! レージェストさん!」

「もし俺があいつらを救って出てくることがなかったら、その時は国にそのことを伝えに行ってくれ。それがおまえの任務だ」


 ケイトはレージェストの気持ちを踏みにじるほど子どもではなかった。この先は、一筋縄ではいかない。帰れる保証なんてものはない。そのことがわかっているからこそ、レージェストは一人で行こうとしている。ケイトはレージェストを見ると小さくうなずいた。

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