第三話 願い
「こんにちは〜!」
「お、無事来れたみたいだね。良かった。」
「はい!ただこの道に入る感覚は慣れない…!ゾワッとする!」
どうしてもこの道に入ると体の毛が逆立つというか寒気がすると言うか…そんな感覚がする。
「そうかな?僕からしたら慣れただけかもしれないけどかなり楽だよ?」
「うへえ、すごいなあ。」
そんな話をしたところで、私は聞きたかったことを聞いてみることにした。
「ところで、ここの神社の名前ってわかる?」
「名前?どうしたの急に」
「いや、地図で見ても名前どころか場所すら載ってなかったし、名前がわからないと調べようもないし。」
家でも調べようとした。ただ名前がわからなかったから検索のしようがないし、そもそも地図に乗ってないんじゃどうしようもない。
「なるほどね。ここの名前は、〈対鎖神社〉。対決の対に、鎖で、対鎖。」
「対鎖神社…」
うーん、聞いたことがない。
「名前ついでに一つ。この神社、自分が大事にしているものを捧げると代わりに一つ願い事を叶えてくれるっていう話があるんだよ。」
「へぇ〜。でもどうせそう言うのって実際には叶わないんでしょ?」
「いや、本当だよ?」
うんうん、やっぱり言い伝えなだけで本当には…
え?
「え、本当に?」
「うん。」
「というか厳密には〈自分が〉じゃなくて捧げるものにいかに思いが詰まってるか、らしいよ。」
「へ、へぇ〜。」
うーん、いまいち信じられない…
まあ、せっかくだしやってみるか。
と思ったけど今なんか思い入れのあるものってあったっけか…
そう思い鞄を漁っていると、
「あぁ、じゃあこれでやってみるか。」
小学生の時、母からもらったお守り。
お母さんもつけていたらしいし、私も実は結構愛着があった。
ただ最近はあんまり特別それを見ることもないしな。
「お守り?それにするんだ。」
「うん。お母さんにもらったやつ。」
「…お母さん、か。」
「?、なんか言った?」
「いや、何も?ところで、何を願うの?」
願い事。本当に叶うのなら本当に大事なところだ。
ただ本当かどうかもわからないし、特別叶えたいこともないし…
「世界中の人の言語が統一されること、かな。」
「言語が?」
「うん。もっと言うなら日本語に、かな。」
私は前から言語が統一されればもう少し争いごとも減るんじゃないのかとか考えていた。
っていうのは建前で、本音はと言うと。
「英語って何言ってるのかわかんない!なんで日本にいるのに英語なんぞやらねばならんのさ!」
英語が嫌いだからだ。本当にかなったら翻訳の人の仕事を奪っちゃうかもしれないが、仕事が楽になったと考えてくれ〜
「じゃあ、そのお守りをここにおいて、願いを心のなかで唱えて。それで終わり。」
「それだけ?」
「それだけ。」
言われた通りの場所に置き、そのまま言語統一(希望は日本語で)と願う。
「これで帰ったらそのお守りに込められた願いの大きさで世界が変わってると思うよ。」
「ほえ〜」
実感がわかないが、それは帰ってみればわかることだろう。
「本当に日本語に統一されてる…!」
〈世界が変わる〉といっていたのは本当だった。ニュースを見ても、SNSを見ても、最初から〈日本語〉という言語しかなかったかのようにみんなが会話している。
歴史の教科書もいつの間にかそれに合わせて変わっているし、英語の教科書は存在ごと消えていた。
「〈対鎖神社〉…」
私はあの神社の凄さに驚き、そのまま寝た。あまりに衝撃が大きすぎて少し寝付けなかったが。
この世界には〈神〉という存在が本当にいて、神社に参拝すると本当にご利益があります。
ただ初詣など、一度に多くの人が参拝する時だとその効果が多くの人に分散されてしまい、一人ひとりの効果は少ないです。
尚、〈神〉は神社や神殿など、祀られている場所にのみ宿ります。