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猫と話をさせてくれ  作者: ポン酢
逢いたい時に猫はいない
23/25

逢いたい時に猫はいない④

「あら、ずいぶん乳くさいのがいるじゃない?」


「…乳臭ぇ訳ねぇだろ。」


街灯と人工物が作り出す、幾何学的な影の中を走っていると、何の前触れもなくその声が響いた。


足を止めて、声の方を睨む。


わざとなのか、街灯のない夜の中に声の主はいた。

ご丁寧に月を背にして、高い位置からこちらを見下ろしている。


「やだわ~口汚い。」


「うっせぇな~。」


「ずいぶんね。口のきき方を思い出させてあげようか?」


そう言って笑う逆光の影は、ゆらりと二又に別れたしっぽを揺らした。


面倒くせぇ。

非常に面倒くせぇ。


耳を後ろに立て、身を低くする。

本当に面倒くせぇ。


しばらく睨みあった後、吹き上げた風に埃が混ざって、思わず盛大なくしゃみをした。


「へっぶしゅ!!」


「…本当、相変わらず品がないわね。」


そう言うとそいつは、ひらりと音もなく真横にいた。



「やだも~!元気にしてたのかい?!」


「あ~!うっせぇ~!近寄るな~!」


「少しは大人になったかと思いきや、まだまだガキだね。鼻水たらして。」



けたけた笑うそいつに顔を嘗められそうになって、慌てて距離をとる。


「寄るな!年増ぁ!!」


「……やはり、口のきき方を思い出させてあげようか?」


「…遠慮します。」


少し不機嫌そうに2本のしっぽを揺らす相手に、仕方なく礼を尽くす。



「…ご無沙汰しております。師匠。」


「なんだい、まともな口もきけるようになったかい。」


「あんたが叩き込んだんだろ!面倒くせぇ!」



相変わらず気にくわない。

シャーと威嚇するも、子猫の威嚇など屁でもないと言うかの如く、平然としている。


そして一番、言われたくないことを言いやがった。



「お前、まだしっぽが割れてないんだね。」

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