逢いたい時に猫はいない③
ほっそりとした月を掲げた空は、相変わらずぼんやりしていた。
いつからこの辺りも、空がこんなに不確かになったんだ?
思い出そうかとも思ったが、面倒なのでやめた。
春の風は突風だ。
色々あったものを吹き飛ばして、どうでもいいものまで運んでくる。
「…気のせいって訳じゃ無さそうだな。」
湿気や静電気で感覚が狂ったような髭を、落ち着かせようと顔を洗う。
面倒くさい。
非常に面倒くさい。
「でもな~。あ~面倒くせぇ~!」
後、少しなのだ。
感覚が間違っていなければ、後、1年程なのだ。
だと言うのに。
何故、最後の最後、面倒が舞い込む?
あの人間の事といい、これといい、何でなんだ?
数える気にもならない長い間、こんな立て続けに面倒が押し寄せることなんてなかったじゃないか?
何で今更、面倒くさいんだ?
最後の試練かよ、おい。
「は~だからって、無視したら、余計、面倒くせぇのが目に見えてるしよ~。」
苛立った気分を紛らわせるために、ざりざりと体を嘗める。
仕方がない。
行くしかない。
本当なら、月明かりがない分、数多くの星が見えるはずの夜の下、申し訳ないように灯る街灯。
草むらを抜け、行くべき方向を確認する。
灯りの影に、都市の死角に馴染んだ生き物がさかさかと身を隠した。
別にとって食うほど腹も減っていない。
暇潰しに吹っ掛けるほど、今は暇じゃない。
さっさと面倒事を片付けようと、夜明かりの中に走り込んだ。




