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猫と話をさせてくれ  作者: ポン酢
逢いたい時に猫はいない
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逢いたい時に猫はいない②

ガガガガガ


手を伸ばした俺の気をそらすように、何かが振動する鈍い音がどこからか聞こえた。


それはどこか遠くのようで、力強さはなかった。


ガガガガガ


ぼんやりしていた俺は、それがマナーモードにしていたスマホの音だと気づくのに、2度ほど瞬きをした。


「やべっ!」


我にかえって、スマホを探す。

確かスーツのポケットに入れたはずだ。


ベッドの上、無意識に脱ぎ捨てた上着をひっつかみ、取り出す。

画面の表示を見て、血の気が引いた。


「も、もしもし!」


「…寝てたのか?」


「いえ!大丈夫です!寝ていません!」


「…そうか。終業後に悪いな。」


冷や水を頭から被った俺は、ベッドの上で正座した。

鈍った脳に血液を送ろうと、心臓がフル稼働していた。


電話の相手は、職場の先輩だ。


俺の教育担当を任されたその人は、同期の担当の先輩達から気の毒がられる猛者だった。

散々、怖い話を聞かされた上、実際、その片鱗を生身で感じた俺は、ビビっていた。


何かへまをしたのだろうかと思ったが、明日のオンライン研修にグループ研修があったので、その接続確認だった。

カメラのない新入社員には貸し出しがあり、俺も借りた一人だった。


明日、研修前につければいいとほっぽっていたが、明日の研修担当らしい先輩の確認作業に付き合うために、渋々、パソコンを動かした。


これって、時間外労働だろ~等と頭の中で軽く愚痴りながら作業をする。

若干、手間取ったりもしたが、先輩の電話の指示もあり、無事、作業が終わった。


画面に先輩の姿が映される。

無表情に近い先輩の顔は、悪の秘密結社の司令官みたいに見えた。


音声やら明るさ、資料の見せ方や見え方を確認して、作業は終わった。


「ありがとう。終業後にすまなかったな。」


「いえいえ、私も感覚が掴めて良かったです。」


「そうか。」


「接続も、今日やって良かったです。明日、慌てるところでした。」


「…そうか、良かったな。」


「ありがとうございました!」


「いや、こっちこそ助かったよ。」


「それでは明日の研修、よろしくお願いします。」


「ああ、よろしく。」


先輩は相変わらず、何を考えてるのかわからない安定の低空飛行でそう言った。


だが、一瞬、迷ったように視線を斜め上に向けて、画面越しに俺を見据えた。


「ちゃんと食ったか?」


「はい?」


「飯だよ。」


「き、今日はまだです。」


「ちゃんと食えよ。今時、ネットで出前だってとれるんだからな。」


「…ありがとう、ございます…?」


「…それから、明日の研修の時は、背後に気を付けろよ。」


「背後?」


「遅くに悪かったな。今度、メシ代出すわ。ゆっくり休めよ。」


「はい。お疲れ様でした??」


「お疲れ様でした。」


先輩は淡々とそう言うと、ブチりと接続を切った。


背後に気を付けろ??


独り暮らしのアパートに、その言葉はないだろう。

じわじわと恐怖心が背中にまとわり着いてくる。


何?!

何があるの?!


何かいるのかよ~!!


意を決して振り向いた俺は、数回の瞬きの後、それが何を意味していたのか理解し、声にならない悲鳴を上げることになった。

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