逢いたい時に猫はいない①
疲れた。
過重労働してる訳じゃないけど、疲れた。
あれから何日たっただろう?
猫に仕事の報告をした後、怒濤のように日々が過ぎた。
あれよあれよと言う間に、新入社員オリエンテーション(感染症対策バージョン)が始まり、日々、それに追われた。
幸いな事に、うちの会社はリモートが可能な事が多かったので、リモート研修の日と出勤の日が混ざるような感じになっていた。
それでも、学生と社会人とではまるで違って、家に帰るとぐったりして動けない。
俺の新入社員オリエンテーションは多分、楽な方なのだと思う。
新年度一日から満員電車に乗り、全新入社員と顔を合わせ、先輩社員に囲まれるのが、週5日。
これがいきなりみっちり始まったら、多分、若干コミュ障の俺はぶっ倒れたんじゃないかと思う。
そう言う意味でも、その洗礼をまともに受けて乗り越えてきた先輩方を尊敬する。
「…多分、お腹空いてる……でも面倒くさい…だけど食べないと明日動けない…でも面倒くさい…。」
こんなことなら、帰りに何か買ってくれば良かった。
帰りは帰りで、ただもう早く家に帰りたかったし、帰った瞬間、こんなにも体が動かなくなるなんて思わなかったんだ。
「…あ~駄目だ。もう、スーパー閉まった…。」
時計に目をやり、諦めて目を閉じる。
緊急事態宣言が出たことで、スーパーや飲食店は早く閉まってしまう。
コンビニなら開いてるが、結局のところ、動ける体力は残っていない。
作りおきしていた物も、冷凍ご飯も、もう使いきってしまった。
カップ焼きそばもない。
カップラーメンならあったかもしれないが、何か食べたくない。
もういっそ、このまま寝てしまおうか?
明日はリモート研修だし、食べなくても死なないし。
「何かあったかな~。」
ベッドの上から、散らかり始めた部屋を見渡す。
テーブルの上に、猫缶が見えた。
猫にやろうと思って買ったヤツだ。
ふと、猫缶は美味しいとどこかで聞いたのを思い出す。
本当に美味しいのだろうか?
多分、疲れきって頭が正常に働いていなかったのだろう。
俺は興味に引かれるまま、もそもそと起き上がってテーブルに手を伸ばした。




