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私はそこにあるものを、見なかったことにしたはずだった  作者: 海堂 岬
神様から加護を授かった少女の物語
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第17話 先代公爵様

 亡くなられた先代公爵様は晩年、私がまるで、公爵家に嫁入りしたかのように、お話をして下さった。

「あの子のところに、嫁いできてくれてありがとう」

「あの子のことを、よろしく頼む」

先代公爵様は、何度も私にそうおっしゃって下さった。


 あの頃の私は、年老いた先代公爵様が、思い違いをしていらっしゃると考えていた。


 結局私は、先代公爵様を理解していなかった。用意周到なあの方は、私をいつでも公爵家の養女に出来るように、当時存命だった私の両親と、書面を交わしていた。先代公爵様が亡くなられた後は、公爵様がまた、兄夫婦と同じ内容で書面を交わしていた。私が知らない間に、貧乏伯爵家の娘が、公爵家の養女となり、隣国王家に嫁ぐために必要な手筈は、全て整えられていた。


 何も知らなかったのは私だけではなかった。

「準備万端なら、教えてくださってもよかったと思うわ」

可愛らしく唇を尖らせた親友は、気のおけない仲間たちに、お前が悪いと叱られた。


 晩餐会での婚姻の申込みから、半年後、私は隣国の王妃となった。婚礼までの期間が、僅か半年で済んだのは、先代公爵御夫妻のおかげだった。


 先代公爵様は、私の婚礼衣装を、仮縫いまで済ませてくださっていた。親友と再会したあの晩餐会のとき、ドレスを用意してくださったのは当代公爵様だ。職人達はあのときから、私の婚礼衣装の仕上げにとりかかっていたそうだ。


 宝飾品は、先代公爵夫人が、御用意下さっていた。お二人は、本当に私を娘と思ってくださっていたのだ。


 先代公爵様は、婚姻の誓約書も、用意しておられた。立会人には、御逝去なさった先代公爵御夫妻、亡くなった私の両親の署名があった。死者は立会人にはなれない。


 盛大な婚礼の式典の後、夫と私は、先代公爵様が遺して下さった誓約書にも署名した。額装された使うことの出来ない誓約書を、私達は私室に飾っている。


 夫は、私の花嫁姿を両親達に見せることが出来なかったと、かなり落ち込んだ。


 普段、夫に辛辣な夫の仲間たちも、夫のせいではないと、慰めたほどだ。事実、先代公爵夫人が永眠されたのは、夫が率いていた反乱軍が、救国軍と呼ばれるより前だ。先代公爵様の御逝去は、夫が国王に就任したという知らせが、この国に届いた直後だった。私の両親も、夫が国王となるより以前に亡くなった。


「もう一度、お会いしたかったわ」

悲しげに夫がせがむまま、私は先代公爵御夫妻との思い出を語って聞かせた。


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