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episode8 新たなる翼(王族専用)

いつもご覧いただきありがとうござます。

PV数を見て、自分の小説を見てみようと思ってくださった方々が両手の指の数以上いる事実に震えております。


拙い小説ですが、どうぞ御覧ください

 


 ――ノアセダル王国 王城



「なんと!? 宇宙に人を送ることが出来ただとッ?!」


「はっ! 我が愚息がその名誉を賜りました」



 マティアス国王陛下に有人宇宙飛行成功の報を伝える宰相ヴィルヘルム。


 5年前、王妃であるマリーダを救ってくれた礼としてレオンに恩賞を与えたが、マティアス自身もまさかここまで急成長するとは思っていなかった。


 たった5年で魔法最先端であるアケルリースレベルの魔道具を製作し生活水準を跳ね上げ、それだけでなく自動車という乗り物を製作し、今では富裕層のステータスとなっている。



 それになにより王族や政府にとって嬉しい知らせだったのが、航空機の開発成功だった。



 この航空機のおかげで広大な国を移動するのが苦ではなくなった。



 マティアスは正直に言うと、回転翼機……ヘリコプターでの移動ばかりなので一度飛行機に乗ってみたいと思っている。



 一度、レオンに頼んでみたら、「短距離で、少人数の移動に飛行機は不向きであり、魔力運用面上で費用対効果が高くない為、お勧めできない。そもそも滑走路がない為、着陸できない」と断られた。



 それはさておき、航空機を建造したことも驚愕だったが、レオンは国王や宰相及び魔法技術省の予想を上回る偉業を成し遂げた。



 宇宙ロケット打ち上げと衛星による魔力溜まりの早期発見及び魔物・魔獣の個体数予想。


 加えて、気象衛星によって天気予報が可能になったことだ。



 それだけでも驚嘆に値するのに、今度は人を宇宙に送り届けた。



 しかも宰相の息子であるクリス・フォン・ファルケンシュタインが行ったとなれば、それだけ技術的自信があり、生還させる自信があるという証左である。


 これはもはや、アケルリースを超えているだろう。



「これは……次の王国会談での話題が出来たな」


「ええ、これで、大小国などと揶揄されなくなるでしょう」



 大小国――


 広「大」な土地を持つ「小国」と言われ続けていたノアセダル王国。


 王国会談を行う際、王国連合に所属している国のいずれかに集結するのだが、ノアセダルが選ばれたことはない。



 理由は単純、エシクン山脈の存在だ。



 会談に臨む際にノアセダル王国は半年近く前に開催国に出発する。


 8000m級の山が連なっている為、超えるだけでもかなりの労力がかかる。


 会談のほか、夜会や晩餐会もある為、ドレスやタキシードなどの正装をいくつも持っていくのが普通だが、ノアセダルは旅路を確実無事に行うため、道中の食料や燃料、医薬品などが荷物の大半である。


 ドレスなどを持っていこうとしても、文字通り荷物になってしまう。


 ドレスなども、王国連合加盟初期は持って行ったが、同行していた近衛騎士や兵士達及び馬車馬の体力が限界となり、荷物を厳選する事態になることが多かった。


 食料などは捨てることは現実的ではない為、ドレスなどを捨てて行くしかなかったのだ。



 なので、現在ではドレスやタキシードは最小限としている。



 加えて、山を越えた後も、長い旅路が続く為、到着するころには両陛下も含めて皆ボロボロになる。


 そんなボロボロの姿を見られ、挙句、夜会ではお色直しもなく、重量軽減のために豪華なドレスではなく質素なドレスしか持ってこれない為、「田舎感」が強くなっているのだ。



 仕方ないと諦めながらも、やはり悔しいものは悔しいのである。



「……陛下。やはり、レオン君に航空機を動かしてもらうように打診すべきでは?」


「そうは言うがな……彼の言う通り、滑走路がないと降りることが出来ないぞ?」


「次回開催国はアケルリースです。我が国からは最も遠い国ですので、かなり厳しい旅程となることが予想されます。加えて、宇宙に行ったと報告したとしても、現在我が国が空を飛び、宇宙まで進出した事実を知るものは、国民と我が国に入国した商隊だけであります」


「むぅ……それを見窄らしい出で立ちの我々が言っても信じてもらえぬか」


「しかも商隊から流れた話も噂程度に囁かれているだけのようなので、デマを流していると思われるやも知れません」


「なるほど、それで信憑性を上げるための航空機か」


「左様でございます」



 レオン達、レイディアントガーデンが開発した写真や映像を持っていくという手もあるが、もうひと押しほしい。


 やはり、航空機を見せるのが一番の衝撃を与えられるだろう。



「ヴィルヘルム、アルファード領へ行ける日は何時だ?」


「まさか、陛下御自ら依頼されるのですか?」


「当たり前だ。これは私の我儘だからな」










 ◆










 ソユーズ初打上から4ヶ月後――



『なにこれ!! すっごい綺麗!!』



 無線機から興奮した声が聞こえてきた。


 ソユーズ第二回打ち上げを実施し、今回搭乗しているのはクラリスだ。


 初めて見るエクセルの姿に興奮しているようだ。



『こんなに綺麗なんだ!! うわぁ……感動だよぉ……』



 さっきからカメラのシャッターを切りまくってる。


 ……スマホでも渡してたらセルフィーとか撮りだしそうなテンションだ。



「……クラリス? 興奮し過ぎよ。少し落ち着きなさい」


『無理だよそれは。こんなに綺麗な光景を見せられて、今まで体験したことない感覚に包まれてる……冷静でいろってほうが難しいよ!!』



 通信担当になっているアイリスから注意を受けるも、受け入れる様子が見られない。


 クラリスは貴族令嬢として慎めと言われていると思っているのだろうが――



「あのね、クラリス? 私は別に貴族として行動を慎めって言ってるわけじゃないのよ?」


『えっ? 違うの? いつものお小言かと思ってた』


「あなた……」



 呆れたように額を抑えるアイリス。


 アイリスはそのまま言葉を続けた。



「あなたは今自由落下の状態。それはわかるわね?」


『うん。だから、ものが浮かぶんだよね?』



 カメラを浮かして見せている姿が送信映像から見えた。



「そう。でも、あなたの脳は自分が寝ているのか、立っているのかわかっていない状態なの」


『そうなんだ……』


「でも、視覚では座っているように見えるから三半規管との情報齟齬が発生して、混乱を起こすの。その結果、気分が悪くなるから――」


『姉様……もう、大丈夫……わかった……』


「わかってくれたかしら?」


『うん。今……すっごく気持ち悪い……』


「袋!! 袋が座席下に用意してあるから!!」



 姉妹でてんやわんやしている姿を見て、ミッションコントロールセンター(MCC)に笑いが起きる。



「あぁ~俺もあれ、やりかけたわ」


「事前に知っていても抑えるのは難しいだろうな。あの光景を見ると」



 ミッションアドバイザーとして、MCCにいるクリスも吐くまでは行かずとも経験があるようだ。



「ところでさ、陛下が来週この領に来るだろ? なんかあったのか?」


「いや……魔物の大規模発生もないし、そもそもその内容だったら、マジホすればいいだろうし……検討もつかん」



 マジホとは、魔力使用型通信機「マジックフォン」を縮めた略称だ。


 この国では「あとでマジホするね」という言葉が普通に伝わるほど、浸透している。



「じゃあ……賛辞を送るため?」


「それこそマジホでいいだろう。あとは王都に召喚すればいいんだし」


「それもそっか」



 以上の理由で何のためにここに来るのか皆目検討もつかない。



『はぁ……、やっと落ち着いた……』


「お疲れ……軽く言ってるが、最悪窒息する可能性があったことを忘れるな」


『うぇ!? そんなに怖い症状だったの!?』



 再び笑いに包まれたMCC。


 ……さて、陛下は何のためにここに来るのやら。


 ――


 ――


 ――


 ――1週間後



「それは流石に無理です」


「なんとかならんか? 君たちの活躍を大々的に披露したいのだよ」



 陛下が懇願するようにこちらを見る。


 国王陛下がここに来た理由は次回開かれる王国会談に飛行機で行きたいということを伝えるためだったようだ。


 確かに、遠い外国に行くのにあれほど便利な乗り物はないだろう。


 しかし――



「以前もお伝えいたしましたが、飛行機は滑走路がないと降りることも出来なければ飛ぶことも出来ません。我が国ですらも滑走路があるのはアルファード領とノアセダル北部のクラウス領のみ……陛下もヘリしか利用したことがないでしょう?」


「わかっているが……この偉業を他国にも知ってほしいのだ!! しかし、証拠に似たものを見せつけないと――」


「信じてもらえない……と?」


「そのとおりだ」



 確かに、写真を見せたところで捏造したと思われたら終わりだ。


 それを信用させようと思うなら、空を飛ぶ乗り物を見せれば100%信用とは言わなくとも、疑われることはなくなるだろう。



「仰ることは理解できますし、納得もします。ですが、滑走路無しではどうしようもありません」


「では、ヘリではどうか?あれを大型化して大量に人を運ぶということは可能か?」


「無理です。あれはあの大きさがほぼ限界です。100人以上550人未満を乗せようと思うならやはり飛行機しかありませんし、ヘリでは山を超えるにもエシクン山脈は高すぎて飛べませんし、加えてヘリは気圧調整がされていないため、酸素マスクなしでは気絶します」


「さ、酸素?」


「……急激に空に上がりすぎると高山病になりやすいんです」



 レイディアントガーデンの皆は既に日本の義務教育レベルの身体知識を持っているため、話が出来ていたからこの反応はちょっと新鮮。



「なるほどな……」


「ですので、諦めて頂くほかないかと……」



 陛下の要望に答えられないのは遺憾ではあるが、これで話は終わり。


 そう思っていたが――



「問題は滑走路がないこと……だけなんだな?」


「えっ?……はい。そのとおりです」


「では、作れたら問題ないんだな?」


「えぇ、操縦するパイロットはいますから」



 ……まさか?



「では、作ろうではないか。アケルリースに」


「えぇ!?」



 ――


 ――


 ――



 レイディアントガーデン 第一会議室。


 ここに集まってもらったのは建築部門と建造部門……そして、パイロットが所属しているレイディアントナイツの各代表とアイリスが集まっていた。



「それで? 今日は何の集まりなんだ?大将」


「各部門の代表が集まるのは久しぶりですね」



 製造部門責任者のルドルフさんと建築部門責任者のハンス・ヤコビさんが期待を帯びた声を上げる。


「またなにかするんだろ?」という顔だ。


 確かに、このメンツが集まるときは新規事業を始めるときだ。


 前回集まったのはロケット打ち上げ施設の建設計画時だ。


 レイディアントナイツはクリスとクラリスに加えて、第二航空隊「アークプリースト」のライナー・フォン・ヘーニングとエルフリーデ・フォン・ゲールティエスが参加している。


 ライナーは元々騎士の家系で、本人も結構鍛えており、性格も質実剛健。だが、本人は魔法を学びたいと思っていた為、ここに来たとのことだ。


 エルフリーデはおっとりとした性格の貴族令嬢で、魔法制御技術はレイディアントナイツでもトップクラスだ。



「集まってもらったのは他でもない。本日、国王陛下よりレイディアントガーデンに依頼が入った」


「陛下から依頼……ですか」


「普通に話を切り出して参りましたが……国王陛下からの依頼って一体何でしょう?」



 ライナーとエルフリーデが困惑した様子で声を上げた。



「依頼された内容は……アケルリースまで飛行機を飛ばしてほしいとのことだ」


「……それは、無理なんじゃないか?」


「そうよ。滑走路がないんじゃ私達ですら降ろすことは出来ないわよ?」



 クリスとクラリスが当然と言わんばかりに飛ばすのは無理だと答える。


 ライナーとエルフリーデも同意見のようだ。



「もちろん俺もそう言ったんだが……陛下がアケルリースに空港を作ると言ってきた」


「えぇ!?」


「えっ? 作れるのですか?」



 クラリスが驚愕の声を上げ、エルフリーデが小首をかしげて質問してきた。



「絶対に作ると息巻いていた……アケルリースのノアセダル大使館に連絡を取って、土地を手に入れるって……」


「もし実現するなら、私達建築部門が活躍する形になるのですね」



 ハンスさんが久しぶりの大仕事に息巻いている。


 確かにここ最近は大規模工事はなかったからな。



「なぁ、俺が呼ばれた理由は?」



 ルドルフさんが頬杖を突きながら声を上げた。


 確かに、ここまではレイディアントナイツと建築部門しか関係ないだろう。


 だが、ルドルフさんにももちろん仕事がある。



「もちろん、飛行機を作っていただきたいから呼んだんです」


「飛行機って……737-800を飛ばすんじゃないのか?」



 確かにあれでもいいとは思う。


 しかしながらだ。



「どうせなら……インパクトを与えたいじゃないですか」


「これを見てください」



 アイリスに促し、一枚の設計図を机に広げた。


 そこに書かれていた機体に皆、驚愕した。



「な、なんだこれ!?」


「新設計の……飛行機!?」


「あらあら、まぁまぁ」


「これは……凄まじいですね」



 クリス、クラリス、エルフリーデ、ライナーが設計図を見て各々の感想を述べる。



「これ、機体の反応が鈍そうだな」


「ロール制御やピッチ制御の反応に……2、3秒は掛かるんじゃない?」


「それにコックピットの位置が……これはランディングの感覚が737とは違いそうですね」


「タッチダウンのタイミングも違うだろうな。降下率と速度には気をつけないといけないだろう」



 ……教育したのは俺だが、まさか機体設計を見ただけでそこまで想像できるほどとは思わなかった。


 君等は一体何者なの?



「こちらを建造して頂きます。国王陛下には2年の期間を頂いておりますので、建築部門の方々は空港建設の準備ができ次第、アケルリースに出発してください」


「わかりました」



 アイリスが統括にに入る。



「レイディアントナイツにはこの新機体の操縦訓練に入っていただきます。シミュレーターが完成次第、始めてください」


「「「「了解」」」」


「建造部門はこちらの設計図を使って、建造を始めてください。素材も指定しております」


「……毎度毎度、よくもまぁこんな完成した設計図をぽんと持ってくるねぇ。よし!! やってやらぁ!!」



 久しぶりの大仕事に各々やる気を出している。


 二年後の王国会談へ向けて、各部門が動き出した。



 ――ちなみに、インパクトを与えたいと言ったレオンに対して。


「いや、空飛んでる乗り物が来た時点でインパクトあるんじゃ?」と思っていたのはここだけの話。










 ◆










 ――2年後


 俺たちも15歳となり、成人となった。


 といっても、今までと活動は全くと行っていいほど変わらないから特に何も感じていない。



 そんなことよりも、例のアケルリース空港の計画だが、無事完成を迎えた。



 2年前、アケルリース王国王都の郊外の森を買い取ることが出来たとのことで建設が始まった。


 建築部門組がトラックを使用してロードローラーやクレーン車をアケルリースまで運び、敷地を確認後、滑走路長を決めていった。


 といっても、今回使用する機体を降ろそうと思ったら、4000mは必要なので、滑走路は4000mに設定した。



 滑走路にはレイディアントガーデン空港とクラウス空港にも設置しているILS カテゴリー3を設置した。


 これで計器着陸が可能となり、有視界操縦が出来ない場合でも安全に降下ができる。


 無論、滑走路には滑走路灯もあるので、夜間の離着陸も可能である。



 ちなみに滑走路灯に魔力を供給しているのは大型のマテリアル・クリスタルである。



 そして、王国会談前日。


 件の新機体だが――



「……」


「……」



 アケルリースに前乗りする為、アルファード領にやってきた両陛下が機体を見上げて固まっていた。


 1年半前に2機完成し、飛行試験も全て終えて、パイロットも決定した。


 あのとき会議に参加したクリスとクラリス、ライナーとエルフリーデである。



 ……クリスとクラリスがすごい万能感が出てきたが、しばらくしたら、レイディアントナイツメンバーは彼らと同じレベルになるのだから正直引く。


 本当にこの国の人達は何者なのだろうか。



「レオン君……私はてっきり、737に乗るものだと思っていたのだが……」


「あれは機内が狭いので、フライト中にいろいろ準備や会議ができるようなスペースを確保するため、新規建造いたしました」


「じゃあ……これは新しい飛行機なの?」


「はい、王妃陛下。新型飛行機【747-400】でございます」



 747-400


 全長70.6m、両翼端まで64.4m、全高は19.4m


 通称「ジャンボジェット」といえばわかりやすいだろう。


 一部2階建てで、前世では二番目に大きかった旅客機。


 ちなみに737-800は全長39.5m、両翼端35.8m、全高12.5mである。



 今回、政府専用機として建造したため、内装は前世の自分の出身国である日本の政府専用機を元にしている。



「まぁ! こんなに大きいのね!!」


「はい。こちらが最新型の747-400です」



 後ろから声が聞こえてきた。


 振り返るとそこにいたのは案内をしているアイリスと……綺羅びやかなドレスを身にまとった令嬢がいた。



 ……誰?



「あら? あなたがレオン・アルファード?」


「はい。アルファード領領主及びレイディアントガーデン代表のレオン・アルファードでございます」



 誰かはわからないが、令嬢であることはわかるし、政府専用機に近づくってことはこの飛行機に乗るってことだ。


 ということは、それなりに高位の爵位の令嬢ってことになる。


 ……よく見ると誰かに似ている気がする。


 ――あっ!?



「はじめまして!! 私、ノアセダル王国王女、リリー・フォン・ノアセダルと申します。お会いしたかったですわ、レオン様」



 まさかの姫だ!!


 通りで王妃陛下に似てると思った!!


 えっ!? 今まで姫殿下がいるなんて知らなかったぞ!?


 ……今まで忙しすぎて王族のことはそんなに調べてなかったわ。



「今まで、レオン様が王城にいらっしゃった時、私は学院にいたのでお会いする機会がなかったので、今回、ようやくお会いできました。レオン様のご活躍はお聞きしております」


「光栄でございます、殿下」



 お辞儀をして答えたものの、突然の登場で驚いた。


 でも今までの護衛輸送で見かけたことがなかったのだが何故だろうか。



「リリー様は私たちと同い年なので、今回が初外遊になりますね」



 アイリスが俺の疑問に答えてくれた。


 なるほど、成人してから外遊するのか。


 さっき学院に通ってたって言ってたから、学業を優先させたのだろう。



「初の外遊が王国会談というのが緊張しますが、アイリスやクラリス、クリスも参加してくれて心強いわ」


「ありがとうございます。私も同じ気持ちです」


「あなたはいいじゃない。今やノアセダルの魔法技術と魔法学の最高峰で学んで働いているのだから、胸を張れるわ。でも私は……その……」



 姫殿下が何か言い淀んでいるが……


 なんだろう?



「リリーはね、実はレイディアントガーデンの入社試験、落ちたのよ」


「ちょっとお母様!!」



 王妃陛下の言葉を聞いて、顔を真っ赤にして抗議する姫殿下。


 なるほど、同い年の俺達が色々と名を残しているからか、劣等感を抱いているようだ。


 というより、受けたのか。入社試験。



「同い年のアイリス、クラリス、クリスがどんどん先に行ってしまって……焦りだってするわ」


「焦るって……私なんかマスターのお手伝いしか出来ていません。マスターの要求に答えているのは、クリスとクラリスですね」


「マスター?」


「あぁ、レオンさんの事です。私たちに魔法を教えてくれているので」


「ああ、なるほど」



 随分親しげだな。


 クリスは宰相の息子だから、面識があるのはわかるが……クリスの幼馴染だから、王族にも紹介されたのだろうか。


 まぁそもそも侯爵令嬢だし、面識があっても不思議ではないか。



「レオン様は今後はどういったものを開発しようとお考えなのですか?」


「お話したいのは山々ですが、そろそろ中に入りましょうか。国王陛下がうずうずしておられますので」


「レ、レオン君!!」



 くすくすと笑いが起きる。


 これくらいの軽口が叩けるくらいは国王と付き合ってるんだなぁと思ったら自分が怖くなった。


 ――


 ――


 ――



「おぉ!!」


「かなり広いわね……以前見せてもらった737とは大違い……」



 L1ドアから搭乗したら真っ先にあるのは秘書席だ。


 日本政府専用機の場合はここに文字通り秘書達が座るがノアセダルではここは主に執事達や侍従の方々が座ることになる。



「私達もここに座るの?」


「いえ、王族の方々は機体の先端にある貴賓室と夫人室に着席していただきます」



 王妃陛下の質問に答えて、貴賓室と夫人室に移動する。


 貴賓室は1階先端部を広く使っており、座席数は機首に向かって左に1席、右に進行方向を向く2席と反対を向く2席があり、その間にはテーブルを設けてある。


 左の座席の前にもテーブルを設置して、机上にはマジックフォン(衛星通信仕様)がある。



「これは……すごいな」


「まぁ! ここは本当に乗り物の中なのかしら」


「四人乗り馬車一台分以上の広さですね……あら?」



 王族の方々が感嘆の声を上げた後、姫殿下が入り口横の扉に気が付いた。



「こちらのドアはもしかしてクローゼットかしら?」


「何ッ!? クローゼットもあるのか!?」



 国王陛下が嬉しそうな声を上げるが――



「いえ、ここはですね――」



 ドアを開けて見せるとそこにあったのは――



「「「シャ、シャワー!?」」」



 王族三人が声を揃えて叫んだ。


 そう、シャワールームだ。


 実際にB747型の日本政府専用機の貴賓室と夫人室にもシャワールームがあった。



「クローゼットは反対側の座席の後ろにあります。その横はお手洗いですね」


「ちなみに夫人室も同じくシャワーとお手洗いがございますが、ベッドはございませんのでご了承ください」



 アイリスが補足説明をしてくれた。



「……ベッド?」


「ベッドなんてどこにあるの?」



 国王陛下と王妃陛下の質問に答える為、機首側にあるソファに近づき、変形させる。



「こちらがソファベッドになります。マットの柔らかさなどはやはり通常のベッドと比べると劣りますが、十分お休み頂けると思います」


「もちろん、これにシーツや掛け布団を用意してご使用頂きます」



 俺の説明に補足するようにアイリスが説明してくれたが……


 王族の方々は黙り込んでこちらを見ていた。


 やはりソファベッドはお気に召さなかったのだろうか?


 王様の寝室で使っているベッドなんて高級品だろうしな。


 そう考えていると国王陛下が歩み寄ってきた。



「申し訳ございません! 変な気を回してしまって――」


「ありがとう!! レオン君!!」



 俺の謝罪の言葉を遮って、俺の手を取りながら国王陛下は礼を言ってくれた。



「あぁ……これは夢なのかしら……夜会用のドレスを持って行けるのみならず、シャワーやお手洗い、それにベッドまで……」


「お母様、良かったですね……」



 泣いてる!?


 まぁ、8000m級の山を超えなきゃいけないんだからそれはそれは過酷だっただろうけど……



「これほどのものを作ってくれるなんて……あぁ、今日はなんて素晴らしい日だ!」



 前世でもこれほどの設備のある飛行機は少ないし、利用しようと思えば何百万も払わないといけなかったから、利用出来るとなったら確かに感動するだろうけど、感涙されるのは予想外だった。



「両陛下、姫殿下。そろそろ出発の時刻になりますので着席いたしましょう。シートベルト着用方法をお教えいたします」


「おぉ、もうそんな時間か」



 アイリスの声に促され、三人は貴賓室のシートに座った。



「じゃあ、アイリス。後は頼んだ」



 侯爵令嬢と公爵令息であるアイリス、クラリス、クリス達も成人した為、今回の外遊に参加することになっている。


 クリスとクラリスは操縦もしなければいけないから大変だろうな。



「えっ? 何言ってるんですか?マスターも来るんですよ?」


「……えっ?」



 なにそれ聞いてないよ?

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