episode68 ZTV打ち上げと失敗は成功の母
「さぁ、殿下達の次は俺達の番だ」
――フィーメル宇宙センター
そこでは完成した大型ロケット打ち上げの最終チェックを行なっており、今し方そのチェックが終了したところだった。
クラインは先に宇宙へ上がったレン達を引き合いに出し、スタッフに気合を入れた。
「ゼータIIロケット、機体移動を開始します」
VABから機体がゆっくりと出てくる。
その大きさはアケルリースが建造したロケットの中では群を抜いて大きい。
全長は56.6mもあり、24.4mあるイプシロンロケットと比べたら倍以上の高さを誇る。
このゼータIIロケットは、アケルリース初の液体燃料ロケット「ゼータロケット」の改良型で、地球で言うところのH-IIBロケットと同じ諸元である。
ロケット下部にはイプシロンロケットで培われた固体燃料ロケットの技術を用いたSRBが4機接続されている。
ちなみにゼータとはイプシロンの次のギリシャ文字。
ギリシャ文字はレオンが数学を教える際に幾つかギリシャ文字を使った為、余談という形でクライン達に教えていた。
8時間程の時間をかけて射点へと移動を終えたゼータIIロケットに必要なケーブルを繋げていく。
ロケットの先端、フェアリング内に積載されているのは、ZTV【ケネス・アームストロング】である。
最大積載量は6t以上。
食糧や実験器具を積み込む与圧部には5.2t
ISS用の部品などを積載する非与圧部には1.5t程の荷物積載が可能だ。
そして今回は初打ち上げ。
本来であれば最小限の積載で打ち上げられるが、元となったゼータロケットの複数回の打ち上げ成功による信頼により、満載状態での初打ち上げとなった。
その中には、レン達へ贈るための果物などの生鮮食品も入っている。
「……これで失敗したら洒落にならないな」
「クラインっていつも後ろ向きよね」
今回、クラインはフライトディレクターとしてミッションコントロールセンターにいた。
その近くにはZTVの通信担当として、シンシアがおり、クラインの後ろ向きな発言にツッコミを入れる。
点検、機体ステータスチェックなどの作業を終え、いよいよ迎えた打ち上げ30秒前。
燃焼ガスによる熱と音の被害を最小限にするためのウォーターカーテンが散水された。
「フライトモードオン」
「駆動用魔力起動」
機体の自動制御を行う魔道具を起動させ、各機器を動かす魔力を供給するマギリング・クリスタルを起動させる。
「メインエンジン点火!」
搭載されたメインエンジン「LE-7A」が点火される。
そしてその推力が100%を迎えた瞬間、四機のSRBが点火される。
「SRB点火! リフトオフ!!」
眩い光と轟音を轟かせ、巨大な塔は空へと上がっていく。
「宇宙にいる英雄へ、世界中からの贈り物を!! ケネス・アームストロング号を載せたゼータIIロケット初号機が、フィーメル宇宙センターから打ち上げられました!!」
打ち上げコメントが述べられ、その間にもぐんぐんと上昇を続けるゼータIIロケット。
その力強さは固体燃料ロケットの比ではなかった。
「頼むぞ、行け!!」
クラインがたまらず叫ぶ。
そのロケットに積載されているのはただの補給船ではない。
さまざまな想いのこもった船なのだ。
「絶対に届かせる……人類最高峰の研究棟へ!!」
――
――
――
14分19秒後。
第二段エンジンが燃料を使い果たして停止した。
そのあと50秒程、慣性飛行を続けた後、二段目からZTVを切り離すのだが、切り離しに失敗すれば重すぎてISSがいる高度350kmには届かない。
打ち上げ後、1回目の緊張ポイントだ。
「頼むぞぉ……キレイに外れてくれぇ……」
そう拝んでいるのは機体担当のジェイだった。
イプシロンロケットでも衛星切り離しジョイントを製作した彼だが、今回は重さの桁が違う。
イプシロンでは積めるのは、重くてせいぜい1.5t
かたやZTVは総重量16tもある。
10倍程もある質量の宇宙船を第二段に、「打ち上げ時に外れないようにしつつ、軌道上では簡単に外れる」ようにしなければいけなかった。
ここの製作にはジェイの実家であるロックハート工房の職人全員の知恵と技術を借りて完成させたのだ。
「ZTV切り離し準備」
打ち上げから15分後。
ZTVの切り離しのカウントダウンが始まった。
ミッションコントロールセンターのメインモニターには第二段に搭載されたカメラの映像が映し出される。
「5、4、3、2、1――」
カウントダウンが0を迎えた瞬間。
映像に映るZTVが先行していった。
キレイに、真っ直ぐに、前に進んだ。
「ZTV、切り離し!!」
「いよっしゃぁぁぁぁぁ!!」
ジェイは席から立ち上がり、拳を突き出して喜びを表現する。
高度、遠地点300km、近地点200km
ZTVは無事、楕円軌道に入った。
「いや! ここからだ!! まだここからエンジンを吹かして高度350kmまで上げなきゃいけないんだ!! 皆、気を引き締めて行こう!!」
「「「「「はい!」」」」」
クラインが喝を入れる中、通信担当のシンシアにジェイは近づいた。
「ここからはシンシアちゃんとキャサリンさんの出番だ。頼むよ」
「わかりました!」
――
――
――
ZTV飛行8日目。
打ち上げからここまでの間、アケルリース航空宇宙部門による実証テストとレイディアントガーデンのISS運用チームからのZTVの評価がなされた。
そして、ZTVは現在、ISSとの距離が23kmまで迫っていた。
「PROX、接続開始……」
シンシアはモニターに映る接続中の文字を見つめる。
もしこれがタイムアウト……即ち、接続先を見つけることができない状況になったら、ISSへの最接近などできない。
つまり、失敗することになる。
「お願い……繋がって……」
後ろにいるキャサリンも、祈りながらモニターを凝視する。
すると、モニターに変化があった。
そこに表示されたのは――
接続の文字だった。
「PROX接続!! 〜っいっやったぁぁぁぁぁ!!」
「繋がった!! 繋がったよ!! シンシア!!」
抱き合いながら、喜びを分かち合うシンシアとキャサリン。
二人で地道に、寝る間も惜しんで開発していた日々が、報われた瞬間だった。
「さぁ! あとは近づいていくだけだよ!! ZTV!!」
後方5km地点からISSの天底……下側に入り込み、天底側500m地点から最終的に10mのところまで近づく。
これをゆっくりと……ゆっくりと時間をかけてZTVに実行させていく。
そして、ZTVはISSの下方10mまで近づき――
ピッタリと止まった。
「ZTV、相対停止!! キャプチャーいけます!!」
『マリア、捕獲開始』
『了解、捕獲開始します』
レイディアントガーデンのCAPCOMであるパトリシアからISSにいるマリアに指示が出される。
ミッションコントロールセンターのモニターにもリヒターアーム先端のカメラの映像と、ISS船外に設置されているカメラの映像が映っていた。
「お願い……そのまま……そのまま……」
「頼むぞ……そのまま動かないでくれ」
ゆっくりと近づいていくリヒターアーム2。
その間に何かあったならZTVは捕獲されずに彼方へと飛んでいってしまう。
シンシアとクラインはその映像を固唾を飲んで見守った。
『残り5m』
マリアのサポートに入っているマシューが残り距離をコールする。
ここまで近づいてくると近づいていく速度が速く見えた。
そして、その瞬間は訪れた。
――できないと思っていた。
レイディアントガーデンですら、実行していない方法でのランデブーが今――
『捕獲!』
『捕獲確認』
――立証された。
「「「「「わぁぁぁぁぁ!!」」」」」
ミッションコントロールセンター内に喜びの声が木霊する。
顔を覆って涙するもの。
泣きながら拳を突き上げ叫ぶもの。
隣の人と抱き合いながら涙するもの。
コントロールセンター内で泣いていないものはいなかった。
『おめでとうアケルリース! あなた方はランデブー・キャプチャー方式という新たなランデブー方式を確立しました!!』
レイディアントガーデンから祝辞が述べられる。
そして、その通信でクラインに語りかけてきた者がいた。
『クライン、クライン!!』
それは、ISSに旅行中のクラインの姉、ルナからだった。
『届いたよ!! 世界中からの贈り物……ちゃんと宇宙まで届いたよ!!』
その声色から、泣いていることがわかる。
クラインも、何か答えたいところだが、涙が止まらず、震える声を聞かれたくなくて――
「……はい!」
たった一言、それをいうだけが限界だった。
◆
ISS内ではZTVの接続を済ませ、気密を確保している最中であった。
「ワクワクしますね!」
「ああ。まるで宝箱を開けるのを待っているみたいだ」
アリスとカルロが今か今かと待ちきれずにいる中、ミッションコントロールセンターから通信が入る。
『ISS、気密確保を確認しました。ハッチ解放を許可します』
「ハッチ解放、了解」
船長であるエルフリーデが答えると、レン達の方に振り向いた。
「ハッチを開けた時の香り、嗅いでみますか?」
「香り?」
「何かあるんですか?」
アランとレンはエルフリーデが何を言っているのか理解できず質問する。
「このハッチとZTVのハッチとの間はドッキングまでの間、完全に宇宙空間でした。なので――」
「……あぁ! そうか! このハッチを開けた瞬間に流れてくるのは純粋な宇宙空間の空気なんだ!!」
「なるほど……宇宙空間の空気ってなんだ?」
宇宙に空気は存在しない為、レンの例えにアランがツッコミを入れる。
「あ、あはは……それ以外に表現が見つからなかった」
「ですが、レンさんの言いたいことはわかりますし、正解です。ですからこのハッチを開けた瞬間の香りは宇宙の香りなんですよ。さぁ、旅行者の皆さん、どうぞこちらに」
エルフリーデに促され、ハッチの前に並ぶレン達。
それを確認すると、エルフリーデはハッチを開けた。
「……あれ?」
「なんだか……焦げ臭い?」
ルナとルティシアは漂ってきた香りを嗅いで、そんな感想を抱く。
それは、隣にいるレンとアランも一緒のようだった。
「本当だ。なんか焦げてる匂いがする」
「これが……宇宙の香りなんだな」
そこで、レンは素朴な疑問を口にする。
「これ、なんで焦げ臭いんですか?」
「宇宙空間に漂う高エネルギー粒子が空気と混じりあった為……と考えられていますが、推測の域を出ませんわね」
その質問に関しては魔法研究者であるユリアが返答した。
「さぁ、次は焦げ臭い匂いとは全然違うわよ。エルフリーデ」
「はい」
クラリスがエルフリーデに次のZTVのハッチを開けるように促し、ハッチが解放された。
すると、今度は――
「甘い匂い……」
「果物の匂いが漂ってきます……」
ルナとルティシアはその香りにうっとりとしていた。
宇宙船内はほぼ無臭である為、果物の香りはかなり久しぶりに感じたのだ。
「生鮮食品の香りですね。さぁ!皆で手分けして運び出しますよ!」
「「「「「はい!」」」」」
エルフリーデの号令により、荷物の運び出しが始まった。
◆
宇宙滞在を始めて10日。
レン達はアケルリース宇宙実験棟「ヘルガ」にて、宇宙実験の体験をしていた。
「ぜ、全然水ができねぇ……」
「本当……宇宙って不思議ですね」
肩で息をするレンの視線の先にはレンの並外れた魔力制御を持ってしても僅か10mlしか生成できなかった水玉があった。
レン程の実力があれば、本気を出せばISS内を水で満たすこともできる程だが、それでも少ない量しかできなかった為、実力を知るルナはこの結果に驚きを隠せずにいた。
「ですが、宇宙でのイメージ発動で10mlも生成できるのはすごいですよ」
「ええ。今まではエルフリーデさんの2.3mlが最高記録でしたから」
「なるほど……」
「やっぱりレンさんは規格外なんですね……」
普通よりやや高めの魔法力を持つレイディアントガーデン宇宙飛行士の4倍程多く水を生成した事実がレンの異常さを物語り、元々おかしいと感じていたアランとルティシアは呆れた表情を浮かべる。
しかし、アイリスとユリアの二人は生成された水の量を見て感嘆すると同時に、可能性も見出していた。
「ですが、これではっきりしました。術者の魔力制御量が多ければ多いほど、イメージ発動でも魔法は地上と同じレベルで発動可能ということです」
「しかし、規格外のレンさんでこの程度とは……ヒトの身では宇宙で地上と同レベルの魔法は使えませんわね」
「よし、ヒトを捨てろ。レン」
「ひでぇ!?」
膨大な魔力制御ができればイメージ発動は可能だが、それでは魔力をかなり消費してしまう。
有意義な実験結果だが、結論は魔力消費量の観点から、イメージ発動形式の魔道具は宇宙機器に向かないことを示していた。
「じゃあ、今度はポーションを作ってみますか? 地上ではかなり難しいのですが、宇宙では手作りできますよ」
「そうなんですか!? やってみたいです!!」
アイリスがポーション作りを提案するとルナが速攻で食いついた。
「治癒魔法士志望だもんな、ルナは」
「確か来月からアケルリースの病院で働くのでしたね」
アイリスの手解きを受けながら、実験機器を操作するルナの横顔は真剣そのものだった。
それを見てレンとルティシアはルナが学園卒業後の進路のことを語っていた。
「レンはどうなんだ? 進路は」
「やっぱり賢者様みたいに魔物ハンター? それとも導師様のような魔道具士?」
進路と聞いて、クリスとクラリスはレンの進路先について興味が湧いた為、質問する。
「いや、レンは宮廷魔法士として王宮に入ることになっている」
「へぇ! じゃあ軍人になるのか!!」
「しかも宮廷魔法士といえば、エリートですわね」
宮廷魔法士。
国軍である魔法士団の中でも選りすぐりの魔法士に与えられる称号。
その任務は主に王族の護衛である。
そこに至るまでには魔法士団で実績を積み、認められなければ辿り着けないが、レンは学生の身でありながら数々の実績を積んできた為、異例の措置でもあった。
「いやぁ、エリートって言われるとむず痒いですね。ここを見ると特に」
「ふむ、確かにな」
レンは改めてISSを見渡す。
上下左右に設置されている魔法実験機器達を見ると、ここで未来を作っているのだと思えて仕方がなかった。
戦うしかできない自分がエリートだとは思えなかったが、それをクリスとユリアが否定する。
「何言ってんだ。そもそも畑が違うだろ」
「そうですわ。レンさんは宮廷魔法士として戦闘技術を身につける。私達は研究魔法士として魔法の真髄を見つける……どっちが優れていてどっちが劣っているという話ではありませんわ」
どっちが優れていてどっちが劣っているか。
そんな次元の問題ではないと二人は語る。
「研究魔法士は魔法理論を組み立て、その理論が正しいかどうかを確認できるのは、魔力制御に特化した戦闘魔法士が適任です。どっちが欠けていてもダメなのですから、比べるだけ無駄ですわ」
「……ありがとうございます」
「礼には及びません」
少しの劣等感を抱いていたレンだったが、ユリアから送られた言葉で少し楽になった気がした。
「レン君レン君! 見てください!! ポーションができました!!」
「おぉ! すごいな! ルナ!」
小さな小瓶に入った手作りポーションをルナは嬉しそうにレンに見せる。
地上でポーションを手作りしようとすると、魔力に治癒魔法を付与する過程にて、並外れた集中力が必要となる為、人間ではほぼ不可能になる。
しかし、微小重力環境では、魔力に治癒魔法を付与することが容易となっており、そのメカニズムを解析して、その理論を魔道具に落とし込み、生成しているのが地上でのポーション作りだ。
手作り不能なポーションが宇宙では可能ということで、ここでしか体験できないことにルナは喜びを露わにしていた。
「じゃあ、俺も作ってみようかな!」
「ええ、どうぞ」
ルナと入れ替わり、今度はレンがポーション作りに挑戦し始めた。
「アランもやってみる?」
「いや、私はいい」
「じゃあ、ルティシアと綱引きでもしてみる?」
「……何故?」
「面白そうです! やりましょう? アラン様」
目を輝かせるルティシアに応える為になる綱引きに興じて、作用反作用の法則を見にしみて実感していたその時だった。
「ちょ!? 多い! 魔力が多いです!! レンさん!!」
「おおぅ!? いけね!?」
アイリスの慌てた声で、レンは魔力注入をやめた。
「お前……またやらかすところだったのか」
「やめてくださいよ!? 宇宙船に穴を開けるとか!?」
「しねぇよ!!」
アランはまたかと呆れていたが、ルティシアは宇宙船に被害が出ないか心配していた。
どうやらポーション作りの際に注入する魔力を大量に入れてしまったらしい。
「もぉ、レン君……」
「お前はもうちょっと加減を知れ」
「わ、悪かったよ……」
膨大な魔力制御量を持っているが故に、本人にとってはほんの少しでも、常人にとっては莫大な量になってしまう為、レンにとってはこの加減が難しいのだ。
しかし、この失敗が、奇跡を起こした。
「っ!? アルファード!! 応答してください!」
『こちらアルファード。ISSどうしました?』
「レオンさんを呼んで! 今すぐに!!」
アイリスが慌てた様子で地上と通信をとり始める。
その様子を見て、レンは少し顔を青ざめた。
「お、俺……なんかやらかした?」
「お前……ここでやらかしたら洒落にならないぞ……」
クラリス達とレン達が固唾を飲んで見守る中、アイリスの慌てた声が気になったISS長期滞在クルーもヘルガ実験棟の前に集まってきた。
「何? どうしたの?」
「あっ、マリア! 実はレン君が……」
「……何? あんた、またなんかやらかしたの?」
「……今回はマジで反省する」
「いつもはマジで反省していなかったのか」
レンの発言にアランがツッコミを入れる中、スピーカーからレオンの声が響く。
『どうしたアイリス。そんなに慌てて』
「すいません、ヘルガ実験ラック4-B魔力流体実験機のデータを見てください!」
『なになに……』
しばしの沈黙が降りた後、レオンが静かに語りかける。
『……これは本当か?』
「はい。この前にルナさんがポーションを生成している為、機器の故障はありえないと思います」
『……何が違った?』
「レンさんが膨大な魔力を注入したこと以外は特に違いを持たせていません」
『……なるほど』
「レオンさん、このまま引き続き研究をする許可をください」
『承認する。目の前にいいサンプルがあるんだ。存分に利用しろ』
「ありがとうございます!」
通信が切れると、クラリスがアイリスに向かって質問した。
「ちょっと姉様、何があったのよ?」
「……魔力に魔法付与を施した後、それを定着させる為に魔力を込めるんだけど、そこでレンさんは魔力を大量に入れてしまったのよ」
「へぇ……それで? どうなったの?」
「最初はあまりにも大量に入れたものだから治癒魔法が施された魔力は圧力に負けて霧散すると思っていたの……地上でもISSでも大量に魔力を込めたことがあったんだけど、その時は霧散したから。でもね――」
そう言いながら機器を操作し、モニターに映像と数値を表示させた。
「……これは!?」
「うそ……そんなことが……」
ユリアとエルフリーデがそれを見て声を上げる。
そして、驚愕の表情を浮かべていたのは、他の宇宙飛行士達も同様だった。
「えっ……えっ?」
「何があったんですか?」
「さっぱりわからん」
この事態を招いたレンは戸惑い、ルティシアとアランは何に驚いているのか検討もつかなかった。
そこでルナが親友であるマリアに質問する。
「……ねぇ、マリア。皆さんは何に驚いてるの?」
「……さっきアイリスさんが言った通り、最後の魔力注入で魔力を大量に入れすぎると魔法付与が霧散してただの魔力入りの水になるんだけど、レンはその霧散する魔力量の二倍以上も注入したのよ。それも一気に」
「レン……お前……」
「悪かったって!! すみませんでした!!」
マリアの説明を聞いてアランはまたレンの方を見た。
レンも本当に反省していて、もう借りてきた猫のように縮こまっていた。
だが――
「いいえ、謝らなくていいわ。むしろ逆よ、私達はあんたに感謝しなきゃ」
「えっ?」
「感謝?」
マリアは謝り倒すレンにそういうと、レンとルナが首を傾げた。
「治癒魔法を施した魔力にさらに魔力の膜が薄くできてる。もしその膜を大きくすることができたら、治癒も魔力補充もできるようになる!」
「えっ? それって……もしかして!?」
ルナはそれを聞いて思い当たるものがあった。
それは物語に登場し、アイリスが長期滞在中に研究するも、達成できなかった万能薬。
「そうよ!エリクサーが完成するかもしれないの!!」
17時位にもう一話UPします。




