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episode57 宇宙旅行計画

 


「あの……私達を宇宙に連れて行って頂けませんか?」


「……えっ?」



 宇宙旅行パッケージを買えばいい話を、ルナちゃんはアラン王太子殿下を通して依頼してきた。


 っていうか、『達』?



「その……私達というのは?」


「私とレン君、そして殿下とルティシア様の四人です」


「四人……」



 ……じゃあなんでレン君がいないんだ?


 まぁいいや。


 となると、ソユーズ2機が必要だな。



「では、ソユーズタクシークルーにそれぞれ登録しておきましょう。幸い、枠は沢山ありますので」



 悲しいけどな!!



「あっ、いえ、ソユーズではなく」


「ん?」


「……スペースシャトルで、行きたいんです」


「「「「「……えっ?」」」」」



 俺とクリス達の声が重なった。


 スペースシャトルで宇宙旅行?



「あの……それはちょっと……」



 スペースシャトルはいわば大型トラックや大型バスだ。


 荷物や人を送る為に存在しているからその搭乗権は各国宇宙飛行士に割り当てられている。


 だから宇宙旅行には交換任務があるソユーズが使用されているのだ。


 従って――



「スペースシャトルへの搭乗権は各国宇宙飛行士に渡している為、無理です」



 俺がそう言うとルナちゃんは身を乗り出してきた。



「それは重々承知しております!ですのでアラン殿下に口添えをしていただいたんです!!」


「……ほぉ」



 それはつまり、他国の王太子からのお願いなら聞いてくれると思っているのか?



「私に忖度せよ……と?」



 ふざけんなよ。


 スペースシャトルに乗せられる荷物は全て未来を作る物ばかりだ。


 宇宙旅行で使うことは吝かではないが、やり方が気に食わん。


 強かさは認めよう、ルナちゃん。


 しかし俺はNOというぞ。



「そう言うことでしたら私は許可を出しません。諦めてソユーズでの宇宙旅行計画を立てて下さい」


「待って頂きたい」



 俺がそう言って立ち上がるとアラン殿下が止めてきた。



「何か?」


「ボールドウィン嬢の言葉が足りなかったことは詫びよう。これは正式な依頼なのだ」


「……」



 俺は再度椅子に腰掛けた。



「聞きましょう」


「うむ。私とルティシアは婚約していることは知っているな?」


「はい」


「そこで新婚旅行先を考えていたのだが、ルティシアが以前拝見したスペースシャトルの打ち上げをえらく気に入ってな、彼女が乗りたいと言ってきたのだ」


「はぁ……」



 たとえそんな話だったとしても許可できないのですが?


 てかそのルティシアちゃんは固まって動かなくなってるが大丈夫か?



「無論、「乗りたいから乗せてくれ」と言って乗れるものではないことは知っている。そこで提案なのだが……スペースシャトルにはスペースラブという実験室があったな」


「はい」


「そこで、私達の医学データを提供する……というのは如何か?」


「ほぉ……」



 アラン王太子殿下はアケルリース王国の魔法士としてレン君の次に強いと言われている。


 レン君は別格扱いだから事実上のトップだ。


 その魔法の威力は前世で言うところの戦車の滑空砲、航空戦闘機のミサイル並みと聞いている。



 ……レン君は戦艦の主砲、本気を出したら熱核兵器並になるんじゃないかな?



 そんな実力を持つ人間が宇宙に上がった場合にどのような変化があるのか。


 血中魔力濃度やそれが下がった場合にどうなるのか。


 非常に気になる。



「レンは言わずもがな、私とボールドウィン嬢も世間から見れば規格外の魔法力を持っている。加えて、ルティシアは魔法が使えない人間だ。魔法が使えない者が宇宙に上がった場合のデータも今後、必要になるのではないか?」


「……」



 へぇ、ルティシア様は魔法が使えないのか。


 宇宙旅行に行ったマリーテレーズは魔法が使える。


 魔法が使えない人間はまだ宇宙に上げたことがない。



 正直、そのデータはかなり欲しい。



「あ、あの……」



 俺が考え込んでいると、ルナちゃんがおずおずと話しかけてきた。



「先程は……すみませんでした。言葉足らずで……」


「あぁ、いえ。こちらこそ早とちりしてしまって」



 俺達が互いに謝りあっていたら、後ろにいたクラリスが話しかけてきた。



「あんたが怒ると凄味が半端じゃないのよ。そりゃあルナさんも怖がるわ」


「うん」


「同感ですわ」


「えっ!? うそぉ!?」



 まさかのクリスとユリアも同意してきた。


 俺ってそんなに凄んでる?



「あの、どうか私達をスペースシャトルで宇宙に連れて行ってください! レン君にお返しがしたいんです!」


「お返し?」



 そんなに強ばっているかなと自分の顔をムニムニと揉んでいたら、ルナちゃんが今回の依頼の意図を話始めた。



「私は、レン君からいろんなものを貰いました。魔法のこと、医学のこと、嬉しいことも楽しいこともみんな、レン君が教えてくれました」


「……」



 なんか惚気始まったぞ?



「でも、私はレン君に何も渡せていない……何かお返しをしたいと思っていた時にレン君が言ったんです。スペースシャトルで宇宙に行ってみたいって」



 胸の前で右手を握りしめて、力強く、決意を持って言葉を紡いでいく。



「いろんなことができるレン君ですらも、宇宙に行く方法はわからないって言いました。だからこれは私だけができるお返しなんです! ……と言っても、私は貴族の立場を利用してアルファード様にお願いするだけなのですが」



 力強く語っていたが、最後の方で少し照れ臭そうにハニカミながら言葉を締めたルナちゃん。



 なるほど。


 だからレン君には内緒で、自身の立場と友好のある王太子を交えることでスペースシャトルでの宇宙旅行の実現を目指したわけか。


 ちゃんと俺が食いつきそうな正当な依頼も考えて。


 どちらにせよ、強かであることには変わりないな。



 だが、スペースシャトルで宇宙旅行に行くことは現実的ではない。



「ですので、お願い……できますか?」


「ん〜……」


「どうしたのよ? そりゃ、各国と調整とかが大変だろうけど、できなくはないでしょ?」



 俺が渋っているとクラリスにそう言われた。


 技術的に危険が……と言った話ではない。


 まぁ、最近事故があったけれども、あれは黒魔力と魔物を連れて行ってしまった為だから技術的な問題ではない。



 問題は費用なのだ



「すみません、一つお聞きしたいのですが……お金はありますか?」



 俺がそう言うと、殿下達は表情を明るくした。


 俺が費用のことを出してきたことで乗り気になってくれたと思ったのだろう。



「はい! お金は魔物狩りで貯めたものがあるので大丈夫です!」


「確か……15億リースだったな?」



 殿下、それはソユーズの費用です。


 俺は指を5本立てて前に出した。



「スペースシャトルの場合、これだけかかります」


「えっ……ご、5億、ですか?」


「……ボールドウィン嬢、現実を見よう。……50億だな?」


「はい」


「「「50億っ!?」」」



 殿下の示した金額を肯定すると後ろにいた幼馴染組が驚愕の声を上げた。


 ……なんでお前らが驚いてんの?



「……知らなかったのか?」


「知らねぇよ!!」


「そんなにお金がかかってたの!?」


「ソユーズの3.3倍……」



 クリス、クラリスは驚いた表情で俺に言ってきたが、ユリアはあさっての方向を向いて呆然としていた。


 ……でも、これでも良心的だぞ?


 前世でのソユーズの宇宙旅行では約50億円かかっていたと言われている。



 スペースシャトルに至っては一回の打ち上げに900億円かかっていたと言われていたんだ。



 それを前世のソユーズやクルードラゴンと同じくらいの費用で上がれるのだから魔法さまさまである。



「ソユーズと違って、メンテナンス費用がかかってきますからこれくらいになってしまうのです。機体も大きいですからね」


「な、なるほどな……50億……」


「で、殿下? 私達の貯金を合わせればなんとかなるのでは?」


「そうかもしれんな。どれくらいある?ボールドウィン嬢」



 おっと、やはり動揺して勘違いしているようだ。


 訂正しないと。



「殿下、さっきあげた金額は「一人当たり」です」


「「「「「一人50億!?」」」」」



 その場にいた俺以外全員が声を上げた。



「じゃ、じゃあ……全部で200億イース必要ってことですか?」


「そうなりますね」



 恐る恐る手を上げて質問してきたルティシア様にそういうと、息を吐いて背もたれに体を預けた。



「……そんなにお金がかかっているなんて」


「驚きです……」



 ルティシア様とルナちゃんは呆然として言葉を漏らすと、アラン殿下は何かを思い出したのか、納得した声を上げる。



「! そうか! 魔術省の予算が多くなったのはこれが理由か!!」


「まぁ、そうなりますよね」



 各国の魔法技術省ではあまりお金をかけておらず、どちらかといえば軍備にお金をかけている状況だった。


 まぁ、当たり前と言えば当たり前なんだが。


 ちなみに、ノアセダル王国は魔法技術発展の為に、軍事費の次にお金をかけている。


 が、宇宙開発に関してノアセダルではレイディアントガーデンが費用を出している為、国家予算には上がっていない。



「どういたしますか? シャトルは諦めてソユーズでという手段もありますよ?」


「そ、それは……」



 ルナちゃんからすれば究極の選択だろう。


 シャトルで宇宙に行きたいと言った婚約者の思いを叶えたいがお金が足りない。


 でもソユーズでなら行ける。


 シャトルを諦めるか、それとも――



「……ボールドウィン嬢」



 アラン殿下が首を振るとルナちゃんはその意を汲んで言葉を発した。



「……アルファード様、ソユーズでの宇宙旅行の枠はありますか?」


「ええ」



 悲しきかな、それはもう有り余るほどに。



「では、それを手配して頂けますか? 二機分お願いします」


「承知しました。そうなりますとISSへの滞在などは如何いたしますか?」


「ぜひ、その滞在費用は存じています。一泊380万イースでしたね?」


「その通りです。では、各国に申し送りいたしますので、日程が決まり次第、ルナさんにお伝えいたしますね」



 それで話は終わり、ソユーズによる宇宙旅行計画が始まる……はずだった。



 ――


 ――


 ――



『レン様やアラン殿下がISSに!?』


『それは本当ですか!?レオン殿!』



 マジホ会議にて、数日前に依頼を受けたソユーズ宇宙旅行の件を各国の魔法技術省トップに話した。


 するとどうだろう。


 皆、驚愕というよりはむしろ……そう、光栄なことと思っているようだった。



『ぜひ! ぜひエグザニティの実験室を見て頂きたい!!』


『ロムルツィアも大賛成です!』


『フェリケシオン連合も異論ありません』


『アケルリースも問題ありません』



 アケルリースの代表……導師ヘルガ様は淡々としているな。


 公私混同はしないタイプではあるけれど、自国の王太子が上がるのにテンションが平坦だ。



「では、日程の方なのですが――」


『レオン殿、その前に聞きたいのだが、よろしいか?』



 俺が日程の話をしようとしたらフェリケシオン連合のアレント王国代表が質問してきた。



「なんでしょう?」


『アケルリース王太子殿下は、無論、スペースシャトルでの宇宙旅行を実施されるのでしょうな?』


「? いえ?ソユーズでの宇宙旅行ですが?」


『『『『えぇ!?』』』』



 俺がそう言うと、ヘルガ様以外全員が驚愕した。


 な、なんだよ?


 ダメなの?



「予算を確保出来ないとのことでお諦めになりました」


『確かに。個人で50億を集めるのは至難でしょう……ソユーズで上がれるだけのお金を持っているのもすごいことですが』



 俺が金のことを言うと、ヘルガ様がそう言った。


 だが――



『し、しかし……狭いソユーズに殿下をお入れするのは如何だろうか……』


『むぅ……』



 どうも各国の方々は狭いソユーズでISSに行ってもらいたくないらしい。


 旅行だから快適に行ってもらいたいって思っているのだろう。


 それを聞き、ロムルツィア神聖国代表、サイモン・フォン・ムーアクロフトさんが断りを入れてきた。



『……すまない。その旅行計画、待って頂けないだろうか? 少し時間を頂きたい』


「えっ? はい。わかりました」


『失礼する』



 サイモンさんはそう言うとマジホを切った。


 俺達はそのあとも少し話し込んでいると、ロムルツィア神聖国の回線でマジホ会議に入ってきた人物がいた。



『お久しぶりですね、レオン様』


「……へっ?」



 その声は女性で、サイモンさんの声ではなかった。


 って言うか、この声は――ロズウィータ教皇猊下だ!!



「猊下!? な、なんでこの会議に!?」


『ふふっ、サイモンから話は聞きました。なんでもレン・グランウィード君とルナ・フォン・ボールドウィンさん、アケルリース王国のアラン王太子殿下とその婚約者であるルティシア・フォン・グレイブさんが宇宙旅行を計画しているとか』


「は、はい。その通りです」



 俺が肯定すると、猊下はとんでもないことを口にした。



『では、スペースシャトルをご用意いただけますか? 費用はロムルツィアが負担いたします』


「えぇ!?」



 ロムルツィアが費用負担!?


 なんで!?



『……いいのかい? ロズウィータ』


『構いませんわ、先輩。レン君とルナさん、アラン殿下にはお世話になりましたから』



 ……えっ?


 ヘルガ様と猊下って知り合いなの?


 ってか先輩後輩の間柄なの?



 ……あっ、確かロズウィータ教皇猊下はアケルリース王国高等魔法学院に留学してたんだったわ。



『アラン殿下達は我が国に修学旅行に訪れた際、魔獣が発生しましてね? それを討伐して下さったのです』



 あぁ、そういえばそんな報告があったな。



『そこで、その功績を讃えて、褒賞を与えようとしたのですが……受け取って頂けなかったのです』


「そうなんですか」



 もったいないな。


 貰えるものは貰っておけばいいのに。



 ……俺みたいに土地とかだったら困るだろうけど。



『そこで、この宇宙旅行の費用を負担するのはどうかと、サイモンから提案されまして、いい案だと思い、ここに参じた次第です』


「は、はぁ……」



 そこまでして快適に過ごして欲しいのか。


 まぁ、こちらも金を貰えるのなら文句はない。



「わかりました。やりましょう」


『よろしくお願いしますわ、レオン様』



 こうして、世界初のスペースシャトルでの宇宙旅行計画が立案された。

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