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episode51 リターン・トゥ・フライト

 


 先日書き起こした「魔力精神感応性万能物質説」に則って、高度80km上空に気球を飛ばして魔力調査を行った。


 すると、高度80km以下は白魔力の量が増えて、それ以上は白魔力と黒魔力が混在していることがわかった。


 エクセルは白魔力で地上の生物を黒魔力から守っているということだ。


 さて、それがわかったことで魔力精神感応性万能物質説はある程度的を射ていることがわかり、今回の爆発原因は魔物ネズミに過度のストレスを与えた為に黒魔力が暴走した為という結論となり、機械的問題があったわけではないということで、3月下旬に飛行再開(リターン・トゥ・フライト)を行う運びとなった。



 それは喜ばしいことなのだが、俺的には困ったことになっている。


 それは――



「いやぁ、論文を拝見しましたが素晴らしいものでした! 「アルファード理論」は世界の理に近づいたと言っても過言ではないですよ!!」


「本当に素晴らしい発想だ! しかもそれを宇宙観測や実験で証明もしている。齢17で大したものだ」



 現在、俺は4月に打ち上げられる予定のロムルツィア宇宙実験棟「ベラシウス」の打ち上げ祈念パーティーに呼ばれて、ロムルツィア大聖堂に来ている。


 ベラシウスというのは昔いたロムルツィア神聖国の偉大な冒険家の名前だそうで、宇宙で未来を切り開くことを祈願して付けられたのだそう。


 ……で、さっきからベタ褒めされている「アルファード理論」ってなんだ? って話だが、それは魔力精神感応性万能物質説のことである。


 ……みんな長いからって俺の名前から取ってアルファード理論なんて名前をつけやがった。



 なんかもうこれが真実だ! みたいに扱われててビックリするわ


 まだ実証できていないとこもあんのになぁ!



「あら? 楽しそうですわね?」


「げ、猊下!?」



 俺を囲んでいた人達の後ろから、女性の声が聞こえた。


 腰まで伸びる銀髪はさらりとしていて、隅々まで手入れしていることがわかる。


 切長の目で顔立ちはかなりの美人だ。


 ……ていうかこの世界は女性は美人系か可愛い系、男性ならイケメンしかいない。


 だから俺はこの世界におけるブサイクの定義がわからない。



 ……ていうか猊下って言った!?



「ようこそロムルツィアへ。私はロムルツィア神聖国代表、カラート教で教皇の地位に就いておりますロズウィータ・フォン・シュテガーと申します」


「これはご丁寧にありがとうございます。ノアセダル王国アルファード領領主及び魔術省大臣、レイディアントガーデン代表のレオン・アルファードと申します。真っ先にご挨拶に伺うべきなのに猊下にご足労頂き、申し訳ございません」


「いえいえ、レオン様は有名人ですから。今も皆に囲まれてそれどころではなかったでしょう?」


「お心使い、感謝いたします」



 もう驚かん。


 これまでどれだけ有名貴族の方々と挨拶したと思ってんだ!


 俺だって成長してるんだ!



「アルファード理論、拝見いたしました。魔法は神々から与えられた贈り物であることに心底ホッとしておりますわ」


「そうですね。ともすれば自然現象だった可能性もあったわけですから」



 魂やら心やらに反応する魔力。


 確かに見方を変えれば神様が手を貸してくれているとも解釈できるしな。



「おや? 猊下。レオン殿とのお話でしたら私も参加したいですな」



 そういって近づいてきたのは、50代くらいの威厳のある男性だった。



「お久しぶりです。サイモン様」



 彼はサイモン・フォン・ムーアクロフト。


 ロムルツィア神聖国魔法技術省の大臣だ。


 ISS計画の会議で何回かお会いし、意見交換もしたことがある。



「お久しぶりです。こうして打ち上げの日程が決まって胸を撫で下ろしておりますよ」


「ご心配をお掛けいたしました」


「いやいや、宇宙事故なぞ、我々ではなんの手出しもできません。絶望的な状況からの全クルー、全オービターの帰還、いやはや、まさに奇跡ですな」



 前世でいうところのアポロ13号みたいなもんだしな。


 そういえば――



「ミッション中、教皇猊下はずっと祈りを捧げて頂いていたと聞いております。その節は本当にありがとうございました」


「いえ、祈りが届いたのなら幸いですわ。できれば宇宙実験棟の打ち上げも直で見たいのだけれど、日程が合わなくて残念ですわ」


「また機会があればぜひご覧頂きたく存じます」


「私は参加いたしますがね!」


「そうなのよね。ズルいわ! サイモン!!」



 教皇様は結構気さくな方のようだ。










 ◆










 3月下旬


 数日前にソユーズ・タクシーミッションが実施され、無事ISSとドッキングした。


 今回はダスティン達が乗って行ったソユーズと交換するためのタクシーミッションである。


 クルーには船長(コマンダー)にパウル、アケルリース王国選抜のヴィクター・フォン・ロックシールド、ロムルツィア神聖国選抜のメアリー・ウィンストンが搭乗している。


 そして今日、STS-31が実施される。


 今回のミッションクルーは船長(コマンダー)にクリス、パイロットにエーリッヒ、ミッションスペシャリストはニルスとクリスタ、そしてロムルツィア神聖国選抜のケイト・ファインズが任務に就く。


 ミッション内容はベラシウス実験棟の運搬……ではなく、その実験棟に搭載する為の実験装置を載せた多目的補給モジュールを使用した補給ミッションだ。


 重量の関係上、詰めない実験装置があった為、先に打ち上げることになったのだ。



『T-30分! いよいよ打ち上げ30分前となりました! 今回搭乗しているのは――』



 打ち上げ会場に設置された大型モニターにPAD-39Aの様子が映し出され、広報課が実況をしている。


 今回から映像送信技術と映像出力魔道具「MTV(マジック・テレビジョン)」を打ち上げ会場に設置してテレビ番組のようにミッションの様子を伝えていくという手法を取り入れた。


 将来的には一般家庭にもMTVを普及させていきたいところだ。



「すごいですな。ああやって音と動きで伝えて頂けると非常にわかりやすい」


「言葉ではわかりにくいところがありますからね。特にうちは」



 ロムルツィア神聖国関連の打ち上げということで、サイモンさんが打ち上げ見学に訪れていた。



「はははっ! 確かにレイディアントガーデンの説明は、一般の人どころか、魔法士でもわからないことが多いですからな!!」



 レイディアントガーデンは前世でいうところのNASAと同じ位置付けになっているからな。


 前世でも「NASAの技術」とか書かれている商品を見たら「なんかすごそう」ってなっていたが、今世では俺達がその位置にいると考えるとこそばゆい。



『T-1分前です! 皆さんカウントダウンの準備はいいですか!!』



 話をしていたらもう1分前となった。


 広報のリディアが会場の人達に問いかけると会場は湧き上がった。


 アーティストのライブに似たノリだな。



『T-20秒、静音装置作動!』



 MTVに映るスペースシャトルのプラットフォームから大量の水が放出される様子が映る。


 そしてT-7秒を迎え、メインエンジンに点火が開始される。


 会場からも5カウントダウンが聞こえてきた。



 そして迎えたT-0



 腹に響くほどの轟音と共に、スペースシャトル「チャレンジャー」がISSへ向かう。



『ロムルツィアの未来のために! リターン・トゥ・フライト、スタートです!!』



 この前、俺がなぜこの世界に来たのか。


 自分はどういう存在なのか疑問を抱いたが、今、目の前の光景がそんな悩みを吹き飛ばしてくれた。


 前世では早い段階で喪失してしまったチャレンジャーが、ISSへと向かう。


 それだけで、俺はこの上ない喜びを感じている。


 単純だなと自分でも思うが、今は……これでいいんじゃないかな。


 そんなことを、宇宙へぐんぐんと上がっていくチャレンジャーを見上げて思っていた。










 ◆










 飛行2日目


 チャレンジャーは無事ISSへと辿り着き、ドッキング作業も無事完了。


 あと少しでドアオープンを迎えるところだった。



『リークチェック終了。ドアを開けてもいいですわよ』


「了解」



 ISS船長(コマンダー)のユリアからドアオープンの許可をもらったクリスが返答するとドッキングポートのドアロックを外す。


 ドアを開き、クリスが先にISSへと入船した。



「久しぶりだな、ユリア」


「ええ。この前は大変だったそうですわね」


「一番きつかったのはクラリスとポラックだけどな」



 もはや宇宙だろうと慣れた様子で挨拶を交わす。


 そんな中、今回初の宇宙飛行となっている3人の宇宙飛行士はというと――



「ケイトちゃん! 久しぶり!!」


「メアリーさん! 宇宙でまた会えるなんて思っていませんでした!」



 ロムルツィア神聖国選抜の二人は抱き合って再会を喜ぶ。


 宇宙飛行士同士だから地上で会う機会が多いと思われがちだがそうでもない。


 訓練内容によっては場所が違うから離ればなれとなることの方が多いのだ。


 なので、こうやって宇宙で会えるというのは、いわば二人とも「宇宙に行く」という夢を叶えたことになるため、再会の感動もひとしおだろう。



「久しぶり……といっていいのでしょうか。写真撮影以来ですね、ファインズさん」


「ロックシールド君、久しぶりですね!」



 広報用の写真を撮るために一度同盟国選抜宇宙飛行士が全員集合したことがあったが、それ以降は各々それぞれのミッションのためにバラバラになったため、訓練が同じでなければ接点はそれくらいしかない。


 だが、いわば同期の間柄であり、夢を叶えた者同士なのだ。


 夢の舞台での再会は嬉しいものである。



「初々しいな。俺らもあんなんだったか?」


「私達の時はステーションなんてなかったからこういうイベントがなかったからね」


「ミールは結構早めに封鎖したからな」



 ニルス、クリスタ、エーリッヒは宇宙で会うという経験があまりない。


 ISSが稼働するまでは一緒に上がって一緒に降りるのが普通だったからだ。



「新時代の幕開けって感じがするね。宇宙が職場になるなんて想像できなかったもん」


「レイディアントガーデン独自運用のフリーダムステーションも建造予定だし、ますますステーションに人が増えそうだな」


「……なぁ、パウルはどこだ?」



 クリスタとニルスがしゃべっていたら、エーリッヒがパウルを見ていないことに気がついた。



 すると奥――ザーリャモジュールから飛んできた人物がいた。



「ああ、やっぱリークチェック終わってたんだ」


「パウル何してたんだよ」


「明日のタスクの準備してた」



 ……マイペースな人間である。










 ◆










 STS-31ミッションが無事終了し、STS-100にて起きた爆発事故の原因は魔物を積載していた為という結論に至り、今後、魔物を宇宙に上げることは禁止となった。


 これでシャトルミッションを本格的に再開出るようになり、STS-32にて、いよいよ第二の他国開発された実験棟が上がった。


 ロムルツィア神聖国宇宙実験棟「ベラシウス」


 寸法:約4.47m(直径)×約6.8m(長さ)

 搭載ラック数:16ラック(うち実験ラック 10ラック)

 質量:12,775kg(打上げ時)


 前世での欧州実験棟「コロンバス」と同じ大きさを持っているが、中身は魔法実験機器が搭載される予定だからこの辺りは魔法文化のある今世ならではだ。


 そして、今、俺はMCCの見学スペースにて、サイモンさんと共に、ベラシウスの起動を待っている。


 ノード2「ハーモニー」への結合とEVA(船外活動)によって船外のケーブル接続作業が終わり、リークチェックも終わりが近づいていた。


 ロムルツィアの実験棟ということで今回はロムルツィア選抜の宇宙飛行士、フリッツ・フォン・ローゼンとコリン・ウォーカーの二人がアトランティスに搭乗している。



 リークチェックが終わり、ハッチ解放許可がMCCより下されるとフリッツがハッチのロックを外し、上へ上げる姿がモニターに映る。


 ヘッドライトの灯りを頼りに、ベラシウス実験棟の電源(魔源?)ボタンを探しているのだろう。


 キョロキョロと周りを見渡し、ようやく魔源ボタンを見つけて、それをオンにした。



 ベラシウス実験棟に明かりが灯り、MCCから拍手が起こる。



「おめでとうございます。ロムルツィア神聖国の宇宙での第一歩を見届けられたことを光栄に思います」


「ありがとうございます。しかし、この光景はあなた方がいなければ成し遂げられなかった。感謝します、レオン・アルファード殿」



 サイモンさんと握手を交わし、実験棟の起動成功を喜びあった。










 ◆










 一方、アケルリース王国では――



「だぁぁ!! また咳き込んだ!!」



 とある実験のコントロールセンターから、ロックハート工房の御曹司、ジェイ・ロックハートが絶叫する声が響く。



 ISSへの補給ミッションを請け負ったアケルリース王国魔法技術省は、港街であるフィーメル領に新たなロケット発射場を建設した。


 フィーメル宇宙センターと名付けられたそこから、ISSへ向けて補給船を打ち上げる予定なのだが――



「液体燃料エンジン難し過ぎ! なんでこんなのを速攻で作れたんだよ、レイディアントガーデンは……」



 現在、液体燃料ロケットエンジンの開発中なのだが、進捗は芳しくない。


 今も、ロケットエンジンの燃焼試験だったのだが、爆発四散した。


 燃焼開始5秒で爆発することが多く、開発陣からは「5秒の壁」と呼ばれていた。


 その5秒の壁を突破する方法がわからず、試行錯誤を繰り返していた。



「なかなかに曲者のようだな、液体燃料エンジンというのは」


「あ、アラン殿下。そうなんですよ、どうにも5秒以上の燃焼ができなくて……固体燃料ロケットなら自信を持って作れるんですけど」


「そうか……ロックハートですらも手こずる物なのだな」



 見学に来ていたアラン王太子殿下がジェイに声をかける。


 ジェイはアケルリース王国内で、ロケット建造技術を持つ技術者第一号であり、機体開発の第一人者だ。


 そのジェイが頭を抱えているとなると、アランはもう一人、この国にいる天才の名を出す。



「レンに頼んだらどうだ? あいつなら何某かのヒントをくれると思うが?」


「実はもう頼んだんです。でも、これに関してはさっぱりわからないらしくて……」


「あいつでもわからない物をレイディアントガーデンは開発したというのか……」



 アランにとってレンは魔法も魔道具製作も至高の域に達していると思っていた。


 賢者マーリンと導師ヘルガ。


 その二人のいいとこ取りをしたような人物だ。



 しかも体術までできるとなると、もはや最強過ぎて負ける姿を想像できない。



 そのレンがわからない物をレイディアントガーデンは開発、実用化し、運用しているのだから驚愕を通り越して引いてしまうほどである。



「クライン君とシンシアちゃんとも意見交換するんですけど、どれもピンと来なくて……」



 そう言ってジェイがテレメトリーデータに目線を落とす。


 そこに来客がやってきた。



「来客をお連れしました」


「やっほー、元気してる?」


「えっ? マリアさん!?」



 クラインと共にやってきた人物はなんとアケルリース王国初の宇宙飛行士であるマリア・フォン・フィーメルであった。


 あっという間に人集りができるが、そこにジェイが質問を投げかける。



「久しぶりだな、フィーメル」


「どうしたんっすか? 急に」


「いやぁ、今度ISSの長期滞在クルーとして宇宙に上がることになってね? 帰省の為に休暇をくれたの。だからここに見学に来たってわけ」


「へぇ! 長期滞在! すげぇっすね!!」



 レイディアントガーデン宇宙飛行士にとって長期滞在は別にすごくもなんともないのだが、マリアはそれを素直に受け取った。


 そして、画面に映るエンジンの残骸を回収する姿とテレメトリーデータをチラ見する。



「これって液体燃料ロケットエンジン? すごいわね、もうこんなのを造り始めてるんだ」


「それがさっぱりなんっすよ。5秒以上燃焼できた試しがなくて」


「ああ、俗に言う「5秒の壁」ね」


「えっ? レイディアントガーデンでもそう呼んでいるんですか?」


「うん。考えることなんてみんな一緒よね」



 マリアはそういうと、チラリと見ただけのテレメトリーデータを読み取っていく。


 そこで、あることに気がついた。



「あー、旋回キャビテーションを起こしてるわね。それに共振も」


「……何だって?」



 マリアの言葉に、ジェイが反応する前にアランが反応した。



「えっ? 旋回キャビテーションと共振と言ったんですけど……」


「なんだそれは?」



 アランからの質問にマリアは自信無さげに答え始めた。



「えと……専門じゃないので上手く説明できるかわかりませんが、いいですか?」


「かまわん。続けろ」


「えぇと……旋回キャビテーションっていうのは、液体が流れている中の圧力差で短時間に泡が出来たり消えたりを繰り返す現象です」


「……それが起きているからなんだというのだ? ただの泡だろう?」



 アランからそう質問をされると、マリアは頭を掻きながら答えた。



「そう言われるとそうなんですけど、高速で流れる液体内ではその泡もかなり強力でして……ほら、水魔法の勢いを強くすると水は透明じゃなくて白っぽくなるじゃないですか」


「そうだな。それがどうした?」


「あれもキャビテーションです」


「な、何!? じゃあ、私達は既にそのキャビテーションを利用していたというのか!?」


「はい。これが一番わかりやすかったですね」



 アランは驚愕した。


 まさか今回つまづいているエンジン開発のヒントを既に持っていたということに。


 しかし、それを聞いて一つ腑に落ちないことがあった。



「ロックハート、この件は既にレンに相談したんだったな?」


「はい、そうです」


「でもわからんと言ってたんだったな?」


「はい。特にイジワルをしているような表情じゃなかったんですけど……本気で悩んでくれてましたから」


「……じゃあなぜ奴は強力な水魔法を使えるのだ? 私達は奴から水魔法は出す勢いを早くすると岩をも砕けると教わったんだぞ? それは原理を知っていたということではないのか?」


「それはわかりませんけど、もしかしたら原理なんか知らずに使ってたのかもしれないですね」



 マリアがそういうとアランはあり得ると思い至った。


 レンは王都に来る前は森の奥深くで、賢者マーリンと共に暮していたと聞いていた。


 その際に水害などに遭い、水魔法を思い付いたのかもしれないと自身を納得させた。



「それで、共振というのは?」


「旋回キャビテーションで発生した泡の影響でスクリューやプロペラが振動するんです。そうですね……同じく強力な水魔法を想像してもらうといいかなと思うんですが、あれを長時間放っていると手が震えますよね?」


「ああ、なぜか水の勢いが違う方向へ行こうとするからそれをなんとかしようとして……まさか!?」


「厳密にいうと違うんですけど、イメージはそんな感じです。泡によって乱された流れに逆らうようにスクリューなどが回り続けるのでガタガタと震え出すんです。その揺れが伝播していく現象が共振です」


「……」



 アランが絶句していると、ジェイがもう一つ質問してきた。



「あの……マリアさん? さっき専門外って言ってたっすよね?」


「ええ、そうよ」


「……ほんとっすか?」



 ここまで説明できるマリアが専門家ではないのなら何だというのだろうと思っていたのはジェイだけでなく、その場にいたマリア以外の全員だった。


 マリアはジェイの疑ってきたことで、少し吹き出した。



「あっはは! 何言ってるのよ? レイディアントガーデンにいる専門チームなんかもっとわかりやすく説明できるわよ。何せこういった流体力学に関してはマスタークラスだからね」


「マスター……レオンさんクラスってことっすか? てかレオンさんって流体力学を知ってるんっすか?」


「何いってるのよ。レイディアントガーデンの製品は全てマスターから教わったことを使ってみんなで製作、生産しているのよ。航空機、宇宙船、魔道具や化粧品類全てね」


「……」



 ジェイだけでなく、それを聞いた皆は空いた口が塞がらなかった。


 レイディアントガーデンを作ったレオンの手腕は知っていた。


 しかし、今の偉業を全て彼一人が担っているなどとは思っていなかったのだ。


 レオンは航空機などに特化していて、他のことは別の専門家がいるのだろうと思っていたのだ。


 しかし、マリアはそれを否定した。



「マスターからいろんな魔法の知識、自然の理……いろんなことを教えてもらって、それぞれを専門に研究してきたみんなの力を合わせて作っているのが宇宙船よ。元を辿れば全部マスターのおかげなの」


「じゃあ、いろんな研究報告などが上がってきても……」


「すぐ理解して、誤ってたりしてたら指摘してくれるわ」


「……それは、レン以上の天才ではないか?」


「そうなんですよ。レンは魔法関連特化ですが、マスターは……なんていえばいいでしょうか?」



 マリアは顎に手を当てて考え出す。


 すると何かをいい言葉が浮かんだのか、すぐに顔を上げた。



「この世の全てを知っている……って感じでしょうか?」



 その言葉に皆は納得したが、それを本人が聞いたら全力で否定しそうだなとマリアは思うのだった。


 一方、クラインはというと――



(マリアさんもデータを一瞥しただけで原因がわかるとか化け物だと思うのですが……)



 クラインは一言、心の中でそっと囁いた。

次回更新は3/29 9時 投稿予定

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