episode5 R-7ロケット
R-7ロケット――
それは前世で世界初の人工衛星【スプートニク】を打ち上げたロケット。
世界初の実用的なロケットはかの有名な【V2ロケット】だが、あれは徹頭徹尾、兵器として開発されていたため、再現するのは憚られた。
……まぁ、これも核弾頭を積み込むためにソ連が作ったロケットであることには変わりないが。
これは将来的には、あの大ベストセラー機――
有人宇宙船【ソユーズ】を乗せることになる。
そのR-7ロケットが先日ついに完成した。
今日はその実物を初めてみる日である。
「こんにちは、ルドルフさん」
「ん? おぉ、マスター!」
彼はルドルフ・ウルリッヒ。
レイディアント・ガーデンの製造部門の責任者だ。
歳は30台後半であり、もともと、この土地で鍛冶屋をしていた人だ。
「例の物、やっと仕上がったぜ。あとは打ち上げを待つだけだ」
「……よくここまで仕上げてくれました。感謝します」
目の前に横たわる巨大な塔……前世で見たことがあるソユーズロケットを短くした容姿をしたそれを俺が設計し、建造したことに感動を覚えていた
……というよりこの世界の人たちの技術力高すぎぃ!
設計図を渡しただけでこれ作るとかおかしくない?
俺の印象としてはこの国の人たちは技術力はあるのに知識が足りないって感じだ。
だって、ロケットエンジンも設計図渡したら普通に作って持ってきてくれて、燃焼試験したら長秒時燃焼試験でも問題なく動作した時は鼻水出そうになったよね。
長秒時燃焼試験とは800秒間ほど燃焼させ、エンジンが耐えられるかを確認する試験のことを言う。
ちなみに燃料は魔力を酸素とケロシンに変換して燃焼させている。
ケロシンとは厳密にいうと少し違うところがあるが、広義的にいうと灯油と成分は同じである。
違いは水分の含有量だ。
なんで元素は周期表3列目までしか変換できないのに化石燃料には変換出来るのか?
石油の主成分が炭化水素だから作ることができたのだろうか?
……わからん。
本気で魔力って何なんだろう?
……早く微小重力環境で研究をしたい。
「なに、マスターのおかげで俺たちも退屈せずに済んでんだ。こっちこそ礼を言うぜ」
「そういって頂けるとありがたい。こちらこそ、設計図どおりに組んで頂いてありがとうございます」
俺はルドルフさんに向き直り、頭を下げた。
「いやいや! 俺たちは与えられた仕事を成し遂げただけだ! マスターに頭を下げられる覚えはねぇよ!!」
確かに、そうかもしれない。
だが――
「荒唐無稽の設計図……作ったこともないものを作れという無理難題に対し、それを寸法誤差5㎜以内に抑えて建造するその手腕。それに対し感謝するのは当たり前です」
「……やっぱりあんたは俺たちのマスターだよ」
……どういうことでそんな評価になったのだろうか。
まぁ、素直に感謝を受け取ってくれたのでよしとしよう。
さぁ! 次はローンチウィンドウを決めよう!!
◆
私、アイリスは目の前にあるものに驚愕していた。
全長34m、直径3mの巨大な塔が横たわっている。
底面には全部で20基のエンジンノズルがあり、そこから超高速でガスを噴射し、作用反作用の原理で空に上がるという。
……私たちがマスターから学んだ空を飛ぶ方法とは全然違う。
こんな巨大な建造物が空を飛べるのだろうか?
でも、マスターを見ると目をきらきらと輝かせてR-7ロケットを見ている。
マスターが語った宇宙を旅するという夢。
最初は荒唐無稽過ぎて、それは夢で終わるだろうと思っていた。
でも、現実にそれを成し遂げられうるものが目の前にある。
……本当に、マスターは何者なのだろうか?
いや、そんなことはどうでもいい。
この人となら……夢のような現実を作り上げることが出来る。
これは予感ではなく……確信だ。
◆
ローンチウィンドウが決まり、それから機体の各部点検。
異常なしを確認後、射点移動を開始した。
前世のバイコヌール宇宙基地を模して建造しているが、立地が違う。
前世のバイコヌール基地は荒野に建造されており、俺が建造した場所は沿岸部にある。
チュルパン発射方式という、吊り下げ発射方式を取っている。
スペースシャトルを代表に出すと、あれは発射台に自立しているが、ソユーズロケットたちロシア製ロケットは軽量化の影響でブースターがロケット本体を支えることが出来ず、自立できない為、ロケットの中ほどを支柱で支えて吊り下げている。
加えて言うと、発射のタイミングも米製と露製で違う。
米製はカウント0を迎えると発射台から離れる――リフトオフを迎えるが、露製はカウントダウンがなく、航空機のようにチェックリストを実施し、リフトオフを迎える。
――今世でもそれぞれの方式で飛ばそうと考えている。
「マテリアル・クリスタルの魔力充填は完了しているか?」
「酸化剤、推進剤ともに充填完了しております」
「了解、打ち上げ準備完了を宣言する」
オペレーターの声を聞き、打ち上げ準備が完了したことを宣言した。
本来なら酸化剤には液体酸素を、推進剤にはケロシンをタンクに充填するが、ここは魔法世界。
精製・保存に手間暇かかるやり方で燃料を用意しなくてもいい。
マテリアル・クリスタルを使用し、魔力をそのままターボポンプへ送るように設計している。
その後、燃料室への入り口であるインジェクタープレートでそれぞれ液体酸素とケロシンに変換して燃焼させる。
燃焼試験でもこの方式で挑み、無事クリアしたため心配はない。
正直、機体の完成度が高い為、失敗するとは思えない。
「では……魔力供給開始」
「了解。魔力供給開始」
マテリアル・クリスタルから魔力の供給を始める。
「ターボポンプオン」
魔力の圧力が規定値に達したタイミングで魔力を送る為のターボポンプを作動させる。
これにより、燃焼室へ燃料を送り、点火することでエンジンが起動する。
「エンジン点火」
エンジンに点火し、推力が全開になったところで――
「リフトオフ!!」
ロケットの固定を解き、R-7ロケットが空に解き放たれた。
ぐんぐんと上昇していき、搭載されている慣性制御装置にしたがってピッチを変更し、機体は東に傾き始めた。
魔法通信装置により、テレメトリーデータを受け取ることが出来ている。
テレメトリーデータとは機体がどこを向いているか、どれだけ傾いているか。
エンジン推力や残り魔力などのデータである。
「エンジン推力……正常」
「ピッチアンドロール……問題ありません」
現在高度50㎞。
打ち上げは今のところ順調である。
このままいけば簡単に宇宙との境界である100㎞まで到達するだろう。
やっぱり魔法を使えば宇宙に行くなんて簡単に――
「推進部に異常!!」
「ターボポンプ回転数減少!! 燃料が送られていません!!」
「はぁ?!」
高度80㎞を超えた頃に機体から異常が示された。
「魔力供給は?!」
「順調です! 魔力は適切に燃焼室に送られています!!……いったいどうして――」
「R-7、高度が下がり始めました!!」
慣性飛行状態に移った機体が、落下を始めた。
どうする!?
ここで指令破壊コマンドを送るか!?
いや、もしかしたら復旧させることが出来るかもしれない!!
――そう考えていた時だった。
「……えっ? あれっ?! マスター! エンジンが再点火されました!!」
「おぉ!! やった! なんかしたの?」
「いえ……何もしていません……自然復旧です」
高度63㎞時点でエンジンが再点火された。
航路から外れた機体は内部に搭載されている誘導装置が機体の状況を判断し、予定航路に戻そうと制御を始めた
「なんだったんだ? さっきの」
「自動制御は効いてます……推進系のシステム異常? でしょうか」
「それだったら再点火もできないんじゃない?」
二人の魔道具士が意見を出してくるが指摘の通りだ。
推進系システムの異常であれば再点火もできないはずだ。
まぁ、低軌道に上がったら詳細データを受信してログを調べ――
「R-7、またターボポンプが止まり始めてます!!」
「またぁ!?」
また先ほどと同じ状態になった。
一体なにが起きて、こうなってんだ!?
……さっきの復旧は奇跡だったのか?
だとしたら、躊躇している暇はない……仕方ない。
「指令破壊コマンドを送信しろ」
「マスター?!」
「よろしいのですか!?」
「さっきみたいに復旧する可能性もあるが、危険は冒せない。ここで落とすほうが安全だ」
ミッションコントロールセンター内が静まり返った。
皆、世紀の瞬間を迎えることを……その瞬間を見ることが出来ると息巻いていた。
それが……成し遂げられないことに皆、唇を嚙んだ。
「――指令破壊コマンドを送信せよ。ミッションは……失敗だ」
◆
「おぉ! 上がってく上がってく!!」
「……あんなのがホントに空を飛べるんですのね」
見学会場からR-7の打ち上げを見ていたクリスとユリアが声を上げた。
ユリアもつい最近、アルファード領へ入領していた。
王都ではこのアルファード領は研究都市として名が挙がっていて、王都にある中等学園に上がる人達のほとんどがアルファード領で魔法を学びたいと声を上げているらしい。
その件をマスターにいうと「いいんじゃない? 受け入れても」と軽く言ったものだから希望者が殺到してしまった。
そこで、入領希望者全員にテスト(筆記・魔法実技)を行い、優秀な成績を残したものにのみ、入領を許すという形をとった。
その選抜試験を突破して半年前にここへ来た一人がユリアである。
「すごいでしょ! マスターはなんだってできるんだから!!」
「あなたが自慢することじゃないでしょう、クラリス」
私は自慢げに胸を張るクラリスを窘める。
でも、気持ちはわからなくもない。
私も、ユリアが737-800を見た時、口を半開いて見上げるという貴族令嬢らしからぬ表情をしていた時は私も胸を張りたくなった。
轟音を轟かせながら舞い上がる鉄塔は、そんな会話をしていたらもう小さな点となっていた。
「……あれ?」
「どうかしましたの? クリス」
「エンジンから出てた光が消えた」
「えっ?」
望遠鏡を覗いていたクリスが、声を上げる。
クリスが覗いていた望遠鏡を借りて私も覗く。
確かにエンジンノズルからの光が消えていた。
「エンジンが停止した?」
「エンジン停止って……えっ!? そんなことあるの!?」
「ありえない……とは言い切れないけれど、数回行った燃焼試験では何の問題もなく動作していたわ。エンジンの不調で止まったとは考えにくい」
クラリスの質問に答えたが、確信はない。
もし、エンジンに問題がないのなら、異常が起きているのは――
「制御システムに異常が起きている?」
「制御システムって……マスター製作の魔道具ですわよね?……正直あの方がしくじるとは思えませんわ」
「ロケットは航空機と違って、内部でかなりの振動が起きるのよ。もしかしたら、その振動で搭載された魔道具が壊れたのかもしれない」
「でも、マスターはその振動テストもしてたよな?」
「振動に耐えられる魔道具を製作できたって喜んでたもんね」
「なにか予想外のことが起きたのかも……あ、エンジンノズルからまた光が出始めた」
望遠鏡を覗きながら喋っていると、またエンジンが点火されたような光が見え始めた。
……再点火が出来たようだが、なぜエンジンが止まったのだろうか。
「機体も安定しているから、姿勢制御システムは正常動作していると見ていいと思う。……あとは軌道上に上がった後にデータを蒐集して原因を――」
そんな会話をしていたら、またエンジンから光が消えた。
「また?!」
「停止と再点火を繰り返してるのか……いったい何が起きてんだ?」
「そんなのマスターぐらいしかわからないわよ」
「……あなたたちもマスターに近い思考を既に持っていますけれど。私はまだ付いていけていませんわ」
最終的に、R-7ロケットは爆発四散した。
指令破壊コマンドを送信したのだろう。
……完成した時、私の手を取って喜んでいたマスターのことを考えると、胸を締め付けられる思いだ。
クリスとクラリスも、マスターの夢を知っている。
二人も、悔しそうな顔をしていた。
◆
……もう珍しく落ち込んでますわ。
初打上げから3回ほど、改良したロケットを飛ばしたが、80kmまでしか行かない。
第一段分離行程にすら辿り着けない。
この世界に来てから、魔道具も飛行魔法も何もかもうまく行っていた。
航空機も完成して、実は自動車も既に完成していて、街道の整地もレイディアントガーデンが請け負っており、整地が完了してから貴族の方々から注文を頂いて売り上げも上々だった。
馬車業者の方々からは苦情を頂いたが、競馬場を作り、前世と同じような体制をとり、利益を還元するようにして、苦情を鎮静化させることが出来た。
今じゃ、より速く走れる馬をどうやって育てるかを考えるのが楽しいという声を聞く。
といったように全てうまく行っていた。
うまく行きすぎていた。
国王陛下へ顔が利き、宰相様からも信頼を得ている。
侯爵家であるゼーゲブレヒト家の当主様からもそうだ。
他にもこのレイディアントガーデンでは貴族の嫡男・令嬢を多く招き、魔法や魔法技術を教えている。
そのおかげで貴族の方々はこのアルファード領を学園都市として認識されているようだ。
今、俺の目の前にはテレメトリーデータが表示されたデスクトップPC……マギリング・コンピューターだからMC? があり、それとにらめっこをしていた。
……わからん。
何が悪いんだ?
システムが悪いのか?
だが、エンジンは再点火されたし、機体制御も正常だった。
それは航路復帰の動作を見ても明らかだ。
考えがぐるぐると回っていたところ、ドアがノックされた。
「マスター、いらっしゃいますか?」
「はい、いますよ。どうぞ」
「失礼します」
ドアを開いて入ってきたのは、アイリスさんだけでなく、クラリスさんとクリス君そしてユリアさんが入室してきた。
「残念でしたわね。こう何回も失敗続きですと気も滅入るでしょう?」
「そうですね……珍しく落ち込んでいます」
ユリアさんに指摘された通りだ。もう正直に言った。
「……あんたが失敗しているところなんて初めて見たわ。やっぱりあんたも人間だったのね」
「クラリス……あなたなんて呼び方を……」
アイリスさんが呆れたようにクラリスさんを窘める。
ここに来てしばらくしてからは、ずっとマスター呼びをしていたクラリスさん。
……その呼び方も久しぶりだ。
「いいじゃない、今はもうプライベートタイムなんだから。落ち込んだ時は一時それを忘れればいいのよ」
「さっぱりしてるなぁ。でも、その通りかもな」
クリス君もクラリスさんに賛同した。
「そうですわ、一緒に食事でもして、嫌なことは一度忘れましょう」
「……それもいいかもしれませんね。マスター……レオンさんは根を詰めるところがありますから」
ユリアさんやアイリスさんも同意見のようだ。
……そうかもしれないな。
一先ず、飯食って、寝てから考えるのもいいかもしれない。
「じゃあ、そうしようかな」
「では、私たちの屋敷で食事をしていきませんか? おもてなしいたします」
アイリスさんがそう提案してくれたため、俺達は喜んでお招きされた。
―――
――
―
――ガツガツ。
――モグモグ。
――ゴクゴク。
「……えぇっと、すごい食欲ですわね」
「ええ、これがレオンさんのストレス解消法なの」
「この細い体のどこに消えてるんでしょうね。この量」
「オレ、もう腹いっぱいなんだが」
ユリアさん、アイリスさん、クラリスさん、クリス君が何か言ってる。
行儀が悪いことはわかっているが、許してほしい。
――あぁ、でも今回はこれだけ食べても。
「駄目だ!! むしゃくしゃする!!」
やっぱり、どうしても打上げ失敗のことを考えてしまう。
「一体なにが駄目なんだよ。魔法は万能じゃないのか」
「万能じゃなかったってことよね。それがわかったことが今回の収穫じゃない?」
「そう言われるとそうだな。いろんなことが出来る魔法でもできないことがあったっていうのは新発見だな」
クラリスさんとクリス君が俺のつぶやきに答えてくれた。
確かに魔法は万能ではないということがわかったのは大きい。
だが――
「なんで高い場所に上がったら魔法はポンコツになるんだ」
「ポンコツって……でも、魔力は順調に燃料室に送られてたんですよね?」
「そうなんだよ。燃料室に入るときにインジェクタープレートを通るんだけど、そのインジェクタープレートに液体酸素にしたり、ケロシンにしたりする魔法付与をしてたんだけど……」
「それが変換されなかったってことよね……なんで?」
アイリスさんの質問に答えた後、クラリスさんが疑問を上げた。
それがわかれば苦労しねぇよ。
「でも地上ではちゃんと動いてたんだろ? 振動で壊れたとか?」
「今回使用された魔道具はすべて振動テストをクリアしてるんだよ。だからそれは考えにくい。今回の打ち上げでも振動は許容値以内だったし」
「もう! そういったことを忘れるために食事を共にしているのでしょう!!……まぁ、食べ過ぎな感はございますが」
ディスカッションが始まったところでユリアさんが注意してきた。
確かにそうだった。
反省しよう。
「魔力は高いところでは魔法に変換できない。それでいいのではありませんか? 今は」
……パードゥン?
「魔力は高いところでは変換できない?」
「そうではないのですか? 魔道具は悪くないっていうのでしたらそれしかないのでは?再点火されたのも高度が低くなってから起きたのでしょう?」
「……・・」
――そうか!!
そういうことだったのか!!
俺はずっと設計や魔道具の付与を間違えた可能性にばかり目が行きすぎていた。
そうだよ!! ユリアさんの言うとおりだ!!
燃料が精製されなければ飛べないのは当たり前じゃん!!
「ユリアさん!!」
「はい?……きゃ!?」
俺はユリアさんに駆け寄って手を包み込むように握った。
「ありがとう!! 光明が見えたよ!!」
「えっと……あの……」
光明を見せてくれたユリアさんに礼が言いたくて駆け寄ったが、戸惑っている。
しかも顔を真っ赤にして。
……やってしまった。
以前にもアイリスさんにやったばかりではないか。
「あっ、すいません。喜びのあまり……」
「い、いえ!! 大丈夫ですわ!!……その、一つお願いがあるのですが」
「なんでしょうか! 私にできることならなんでもしますよ」
ん? 今何でもするって言ったよね?
なんてことを言う人ではないだろう。
多分……
「あの……私も敬語を外してお話いただけませんか?」
「……ん?」
それがお願い?
「クリスやアイリス、クラリスには敬語なしで、私には敬語というのは……私だって二年前に知り合っているのですから」
「そう……ですか……わかりました。じゃなくて、わかった。改めてよろしく、ユリアさん」
「はい、よろしくお願いしますわ。レオン」
◆
「……ねぇ、ユリア」
「なに? クラリス」
レオンが帰宅の途に付いた後、クラリスから声を掛けられた。
「えっと……もしかして……ユリアもさ……」
「?」
そわそわとした様子でなにかを聞こうとしている。
……あぁ。
「ご心配せずとも、レオンさんに特別な感情は持っていませんわ」
「ほ、本当?」
「まぁ、手を握られたときに向けられた真っ直ぐで綺麗な瞳にはドキッとしましたが……それだけですわ」
「そう……よかった……」
心底ホッとした様子で、胸に手を当てている。
……でも。
「今は……ですけれど」
「えっ!?」




