episode39 光の奔流
ZOZO創設者の前澤社長がISSへ行きましたね
実はこれを投稿した時、私はフェリーに乗っていました
向こうが宇宙船ならこっちはフェリー船です(謎の対抗心)
ヴォルフガング国王陛下直々に乾杯の音頭が取られ、宴が始まった。
STS-19クルーも、全員がミッドデッキに入り、特別食を広げている。
クルーそれぞれの好物を聞き、それを宇宙食に加工したものだ。
『ありがとうございます、マスター!! 私、ブラウン亭のビーフシチュー大好きなんです!!』
マリアはシチューのパッケージをこちらに向けて興奮気味にお礼を言ってきた。
「お礼ならブラウンさん達に言ってくれ。お二人のおかげで実現できたことだからな」
『ユイさん、ありがとう!』
「喜んでくれて嬉しいわ」
料理の感想を知りたいということで、今はブラウン夫妻がプロジェクターの前に陣取っている。
ユイさんはホントに料理が好きなんだな。
クルーが美味しそうに食べているところを微笑みながら見ている。
『あっ、そうだ。クライン!!』
「えっ?! は、はい!」
マリアが何か思い出したのか、クライン君を呼んだ。
呼ばれるなんて思っていなかったのか、驚いた様子でクライン君はプロジェクターの前に来る。
「なんでしょうか?」
『イプシロン打ち上げおめでとう。実は打ち上げられた衛星とフライパスしたんだよね』
「えぇ!? だ、大丈夫でしたか!?」
『高度が違うから問題ないよ。で、これがその時の写真』
こちらの映像を映しているマギコン(マギリング・コンピュータ)を操作して、フライパス時に撮影したものを送信してきた。
望遠レンズで撮影したのだろう。
被写体は100kmも離れているのか疑う程に大きく写っていた。
「俺達の作った衛星が……」
「本当に……宇宙に行ったんだ……」
クライン君と近くにいたシンシアちゃんは感慨深くその写真を見つめる。
それもそうだろう。
自分達の作った物が、実際に飛んでいる所を見れたのだから、こうなってもおかしくない。
「ちょ!? それ俺達が作ったやつか!?」
「み、見せて見せて!!」
製作に関わったのだろう、ジェイ君とキャサリンちゃんもプロジェクターに近づいた。
「おぉ……」
「エクセルを背に……なんて綺麗なの……」
二人もクライン君やシンシアちゃんのように、食い入るように写真を見つめる。
だが――
「全く……今日こうして通信してくれてるのはレン達の為なんだ。あんた達が独占してどうするんだい?」
導師様が軽く注意する。
俺としては、いろんな人と話ができたらと思っているが、確かに今日の主役はレン君とルナちゃんだ。
パーティー開催前に少し話した程度で終わっているから、ここらで交代するのがいいかもしれない。
「す、すみません!」
「つい興奮しちゃって……」
「……まぁ、あたしもグッと来るものがあったけどね。ほら、交代したげな」
「「はい!」」
ジェイ君とキャサリンちゃん、そしてクライン君とシンシアちゃんは今回の主役を呼びに行った。
「レオンさん、ちょっと頼みたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「はい、なんでしょう?」
4人を見届けた後、導師様が声をかけてきた。
何か、神妙な面持ちだけど……
「さっきの写真……何枚か焼いてくれませんか? 私もじっくり見たい」
「お安い御用ですよ」
導師様も、内心じっくり見たくてうずうずしていたようだ。
◆
「改めて、婚約おめでとう。ルナ」
「「「「おめでとうございます」」」」
『ありがとうございます。宇宙飛行士の方々に祝われるなんて思っても見なかったので光栄です』
ラップトップ型のマギコンモニターに映るルナにお祝いの言葉を送る。
クルーの皆さんも、一緒にお祝いを言ってくれた。
『にしてもマリアが宇宙飛行士になるなんてな。びっくりだぜ』
「私だって、まさかこんなに早く宇宙に来れるなんて思ってなかったわよ」
『……その件はホントにごめん』
フレーム外から謝罪の声が聞こえた。
マスターの声だ。
「いえ! マスターは悪くありませんよ!!」
招待状の件を引きづっているみたいだけど、私は宇宙飛行士になったことを伝えるのに、これ以上ない方法で伝えることができた。
最初は落ち込んでいたけど、この提案をしてくれたお陰で、頑張ってこれた。
「こうして皆に通信できてホントに嬉しいんです。だから感謝しています、マスター」
『そう言ってくれてホッとするよ。俺とはいつでも話せるんだ。レン君やルナさん、元クラスメイトと話してもらおうか』
マスターはそういうと、さっきから後ろでソワソワしていた皆に会話を促した。
『久しぶり、マリア! すごいね! 宇宙飛行士なんて!』
『そっちはどんな感じなんだ? 他の皆さんにもお話を聞きたいです!』
元クラスメイトからの質問攻めを受ける。
クルーの皆にも参加してもらって、非常に充実した時間だった。
――
――
――
「はぁ〜、楽しかったね!」
「ええ、一般の方々とお話しする機会があまりありませんでしたから、新鮮でしたね」
婚約披露パーティーの通信を終えた後。
ティナさんが今回の通信の感想を話し、ユルゲンさんが答えた。
「今後、こうした交流みたいな場を設けてもらうのもいいかもしれないわね。地上でやるよりも、こうして軌道上にいる方がお客様も喜ぶんじゃないかしら?」
「おぉ、いいじゃんそれ」
「もっといろんな人に宇宙のことを知ってもらうチャンスかもな」
エルフリーデさんの提案にダスティンさんとエルヴィンさんも賛同する。
確かにそういう場があれば宇宙飛行士になりたい子なんかは質問しやすいかもしれない。
「ユルゲン、クルーレポートにこの提案載せてくれよ」
「わかった、やっておくよ。じゃあ、寝る準備しようか」
「「「「「はーい(うーす)」」」」」
各々返事をすると、寝袋を取り出し始める。
無重力状態の為、地面でないと寝られないということがないから壁に寝袋を固定する人もいれば、上部に固定する人もいる。
一応、睡眠区画はあるものの、EMUのパーツが多く、その区画に入れているから今回は使えない。
ただ、先輩方曰く、数週間の滞在なら別に個室はなくても大丈夫とのことだった。
確かに私自身、今回の旅で個室がないことに関しての不満は一切ない。
私は自分の寝袋を設置した後、宇宙に来てからしている日課がある。
「エルフリーデさん、行きましょう」
「ええ、ちょっと待ってね」
エルフリーデさんは寝袋を設置すると、私と同じで既に用意していた飲み物を手に、一緒にフライトデッキに向かう。
寝る前に行っている日課とは、エクセルを眺めることだ。
なんでもこれは、アイリスさんもやっていたことらしく、それを見てからエルフリーデさんもやり始めたとのことだった。
私もそれに倣ってやり始めたけど、これが最高なのだ。
仕事を終えて、ご飯を食べて、寝る前に美しい景色を見ながら、飲み物を飲みホッとする。
なんだかおじさん臭く聞こえるけれど、最高なものは最高なのだから仕方ない。
というより、世の中の働くお父さん達は皆こういう気持ちで、帰宅後に本を読んだり、お酒を飲んだり、冬には焚き火を見つめたりしているのだろうか?
なんだか大人になった気分。
「いつ見ても綺麗ですね」
「ええ、本当に」
エクセルを眺めて溢れる言葉にエルフリーデさんも賛同してくれた。
今は夜の面にいるから、地表は真っ暗なんだけど、所々が光っている。
雷雲だ。
その景色が綺麗だったから、カメラを取り出して撮ってみる。
あの雲の下は今頃水浸しだろうから、綺麗なんて評価は不謹慎だろうか。
「あ、ノアセダルが見えてきましたよ」
「ホントだ。……やっぱり目立ちますね」
写真を撮っていたら、アルファード領が見える所まで飛んできた。
ノアセダル王国には街灯が設置されていて、その光は街の形を表していた。
特にアルファード領はその灯りがとても強い。
「……眠らない街って言われてるんでしたっけ?」
「ええ、明るすぎて、周りからは「寝てないんじゃないか?」って噂されてるようね」
アルファード領は他領から常に灯りが灯っていることから「眠らない街」と言われているが、実際にはちゃんと眠っている。
……当たり前のことだけど。
……ん? 魔力観測センターは24時間稼働だし、MCCも24時間稼働だから、眠らない街って言うのは合っているのか?
まぁ、どうでもいいや。
「あれ? なんだろう?光が……」
「えっ? どうかしました?」
エルフリーデさんの見つめる先を見ると、普段は青い大気層が明るい緑に変わっていた。
ちょうど、極の部分のようだけど……。
「色が変わっていますね」
私がそう言った時だった。
「……あぁ!?」
エルフリーデさんが何かを思い出したように叫んだ。
ちょっとびっくりしたけど、どうしたんだろう?
「ちょ!? 皆!! 上がってきて!! もしかしたらすごいものが見られるかもしれない!」
普段のエルフリーデさんらしからぬ声に釣られて、皆さんがフライトデッキに上がってきた。
今日はいろんなエルフリーデさんが見れてるなぁ。
「なになに? どしたの?」
「今日はやけにテンション高いな、エルフリーデ」
ティナさんとエルヴィンさんがそんなことを言いながら上がってきた。
「今日はいろんな顔をするな、エルフリーデ」
「そんなことはどうでもいいのよ、ライナー! 窓の外を見て!」
私もエルフリーデさんに釣られて再び外を見た。
すると、そこには信じられない光景が広がっていた。
明るい緑色の光が、エクセルを包んでいた。
しかもその光は奔流となっていて、幻想的な光景を生み出していた。
「……あ! 写真!!」
しばらく惚けてしまったけれど、我に返った私はカメラを構えてその姿を収めていく。
「すげぇ……」
「とっても綺麗……」
「幻想的だな……こんなにも綺麗な姿を見せてくれるのか、エクセルは」
エルヴィンさん、ティナさん、ダスティンさんが声を漏らす。
私は……最早言葉を失っていた。
あまりにも綺麗すぎて、目が釘付けになっていた。
「……グスッ」
「えっ? 泣いてるんですか?ライナーさん」
「あまりにも……綺麗すぎて……」
あの寡黙なライナーさんが感涙してる……。
ユルゲンさんもそれを見て驚いている。
でも、そうなってもおかしくない光景だ。
「オーロラ……エクセルの地磁気と太陽風に含まれるプラズマがぶつかった時に現れる発光現象よ。極地でしか見ることが出来ないそうだから、私も見るのは初めてね」
「オーロラっていうんですね……それって誰から聞いたんですか?」
エルフリーデさんがこの現象の説明をしてくれた。
けれど、そんなことをどこで知ったのかが気になって聞いてみた。
「マスターからよ」
「「「「「ああ」」」」」
当たり前のことだった。
こんなことを教えてくれる人なんて一人しかいない。
「STS-6の時に教えてくれたの。シャトルは窓が多くて見える範囲が広いからオーロラも見れるんじゃないかって」
「ISSやミールじゃ見れないのか?」
「見れなくはないでしょうけど……ステーションの窓って真下を見ているでしょう? 今の様に極地が見える角度でないと」
「ああ、なるほど。オーロラが出ていても気づけないのか」
ダスティンさんは納得したように手を叩いた。
確かに今は極地が見える角度で飛んでいるし、且つ高度は600km近くだ。
見える範囲が違う。
真下を見ている状態でだったら、見えなかっただろう。
そうして眺めていたら、極地から離れ始めてしまい、光の奔流も離れ始めた。
「ああ……残念」
「今は北極を見ていたけれど、南極でも発生しているはずだわ」
「そっか! 同じ極地だもんね!」
ティナさんが名残惜しそうな声を出したら、エルフリーデさんから南極でも発生していると教えてもらうとすぐに元気を取り戻した。
でも――
「もう就寝時間ですよ」
「えぇ〜!? 延長しようよ、ユルゲン!」
「ダメです。明日はリーベルスの係留解除の作業があるんですから、寝ましょう」
「ブーッ!!」
不満そうな声を上げつつも、満足はしていたのか、ティナさんはダスティンさんに促されながらも大人しくミッドデッキに戻っていった。
「さぁ、私達も戻りましょう」
「はい」
いっぱい写真も撮れたから、帰還後にもらえる休暇で帰省した時、皆に見せてあげよう。
そう思いながら、私もエルフリーデさんについて行って、ミッドデッキに戻り、眠りについた。
なんだかいつもより、寝付きが良かった気がする。
◆
STS-19ミッションが完了し、無事、エンデバーはレイディアントガーデン・シャトル滑走路に帰ってきた。
そして、マリアは初飛行の洗礼を受けていた。
「……」
「マ、マリアちゃん? 大丈夫?」
「……だいじょうぶじゃないです」
重力酔いだった。
心配するティナへの返答も、かろうじてと言った感じである。
「頭はあまり動かさないようにって言ったのに……」
「あまり……うごかしていなかったとおも――うっ!?」
限界が来てしまったらしい。
近くに置いていたバケツに豪快に出している。
「うぅ……じゅうりょくってすごい……」
帰還して初めて感じる重力の強さ。
それを感じて初めて、真の宇宙飛行士になったと言えるのかもしれない。
――
――
――
リーベルス宇宙望遠鏡のサービスミッションが終了し、リーベルス望遠鏡は復活を遂げた所か性能が抜群に良くなった。
解像度も10倍程向上して、最早別物になっている。
まぁ、コルネリアさんは鮮明な像を見て悲鳴に近い声を上げていたから、喜んでもらえてよかった。
さて、宇宙ステーションのことだが、新しい宇宙ステーションのモジュール『ザーリャver.2』と『ズヴェズダver.2』はもう既に建造に入っている。
軌道傾斜角は32.4°を予定していて、ISSを投入している51.6°とはずらしているが、この角度の方がうちの発射場から打ち上げやすいのだ。
51.6°という角度は他の……特にアケルリースから打ち上げやすい角度だ。
ロケット開発を行うとのことだったので、将来的に……というか、もう開発を進めてもらっているんだが、補給機を開発してもらっているのだ。
打ち上げるとなれば、軌道投入しやすい軌道がいいんじゃないかということで51.6°に投入した。
着々と進む有人宇宙施設の建造だが、問題がまだ残っている。
ミール宇宙ステーションのことだ。
あれをどうにかしなければいけないが、問題はどこに墜とすかだ。
前世ではポイント・ネモと呼ばれている南太平洋上の到達不能極に故障したり運用が終了した人工衛星などは墜とされていた。
今世でも、島も何もない海上がある為、以前、そこに魔力観測衛星1号を墜落させた実績があるが、あれとは比べ物にならないくらいの大物を墜とすんだ。
慎重にことを運ばないといけないとは思っているものの、宇宙から見た限り、うちと同等の技術を有していそうな国は無さそうだし、それ故、到達不能極にまで行けそうな船も見当たらない。
だから、まぁいいかなんて思っていたりする。
それにもう衛星を一つ墜としているのだから今更である。
スペースシャトルでモジュールを持って帰ってくるということも考えたりしたが、ペイロードを空にして打ち上げるというのは勿体ないし、かといってISS組立ミッション後にミールの方へ行くというのも、燃料の関係で現実的ではないし、何より新しい宇宙ステーションを作る方が安い。
だから墜とす方が労力がかからないのだ。
打ち上げ費用が前世と比べて安いとはいえど、世間一般からすればかなりの金をかけているのだから実のあることをしなければという思いがある。
まぁ、ミールの行く末に関してはこのくらいにして、二週間後に控えた記念すべき20回目のスペースシャトルミッション『STS-20』ではSSRMS(スペース・ステーション・リモート・マニュピレート・システム)、通称リヒターアーム2を搭載して打ち上げる。
これは前世で言うところのカナダアーム2と同じで、エンドエフェクタが両端についており、グラップルフィクスチャを交互に掴むことでISSを移動することができるという優れものである。
これは製造部門のカール・リヒター率いるチームが開発していて、この発想は俺が提供したわけじゃなくてカール達が自力で編み出したものだ。
研究開発の過程が似ていると発想も似るものなのかもしれない。
ちなみにカールの妻であり、リヒターアームの開発者でもあるアニカは現在産休中である。
実はレイディアントガーデンには結構既婚者が多く、子供がいる者もいる。
……みんな、俺と同い年なのに。(今世17歳)
ま、まぁ、俺は今宇宙開発できてて楽しいし。
みんなが安心して子供を作ってもいいって思ってくれてるのは嬉しいし。
別に羨ましいとか考えてないし。
こ、恋人や結婚することがリア充ってわけじゃねぇから!
俺だってリアルが充実してるからリア充だし!!
……なんか、悲しくなってきたからやめるわ。この話。




