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episode20 スタンピード

 


 平和というのは、ほんの一瞬で突き崩されるのだと痛感する。


 まさか大規模な魔力溜まりが発生するとは……



「状況は?」


「23:30、アラートを検知、精査を開始。23:34、迷いの森にて魔獣発生を確認すると共に魔物の大量発生を確認し、スタンピードの可能性大と判断。日付が変わって0:12現在、王国政府からホットラインにて、迷いの森に接しているアケルリース王国、エグザニティ共和国、ロムルツィア神聖国に連絡、防衛体制を取っていただいています」


「三大大国がこぞって、軍を展開する事態になるなんてな……」



 廊下を歩きながらアイリスから報告を聞き、すでに対処はされている事を知って安堵したが、今回の事態は早期警戒システムが構築される前の記録でも起きておらず、前代未聞の事態だ。



「それに、言葉は悪いが対岸の火事だ。俺達は準警戒体制を維持。要請があれば動くぞ」


「承知しました。……マスター」


「ん?」


「今回、もしかしたら災害級が生まれる可能性があります……その場合、三大大国であれど、かなりの被害が出るはずです……」


「そうだな」



 アイリスは国を守るために戦う兵士達を心配している……のだろうが、恐らく聞こうとしているのはそれではない。



「このスタンピード……私達は……手を貸さないのでしょうか?」


「……」



 確かに、レイディアントナイツという航空機や航空魔法士を抱えている俺達なら被害を最小限に食い止めることはできるだろうし、治療に関してもレイディアントガーデンの医療技術はこの世界でトップに君臨している。


 魔法による治療と内科的治療の他、今回のような事態の際の治療優先順位付け……トリアージの訓練も受けさせている。


 魔法薬学……所謂ポーションの開発を実施して性能の良いものを用意できている。



 俺達が行けば助けられる命は……確かに多いだろう。


 しかし――



「自国のことであれば、意見具申して、作戦に従事することも可能だろうが、今回、危機に陥っているのは他国だ。俺達が勝手に動けば外交問題になる」


「でも! 私達が行けば――」


「アイリス・フォン・ゼーゲブレヒト」


「!?」



 俺はアイリスの名前を言い、続く言葉を遮った。



「自惚れるな。自他共に実力を認められていても、今回の件は俺達は未体験であり、それは他国でも同じだ。そんな状況で「俺達なら即時終息させることができる」なんて「自信」はあれど「確信」はない」


「……」


「それにさっきも言ったが、勝手に動けば外交問題になる。スタンピードという未曾有の事態だが、相手は魔物だ。討伐が完了したら、大量の魔物素材が手に入る。終結した暁には経済的に潤う形になる……そこに正義の名の下に俺達が君臨しても、素材目的と取られる可能性もある」


「そう……ですね……」


「苦しいのはわかる……だが、俺達が今できるのは要請があった時のために直ぐに動けるようにすることだけだ」


「……浅慮でした。申し訳ありません」



 少し厳しい言い方だったか?


 しかし、俺も実力のある一人の魔物ハンターだったりしていたら、アケルリースまで行ってたかもしれない。


 だが、俺達は組織であり、ノアセダル王国の勅許店でもある。


 勝手に動けば、陛下に迷惑をかけることになる。



「今はただ、無事に事態が終息する事を願おう」


「そうですね」



 そう言葉を締めくくり、俺とアイリスは司令室へ入室した。











 ◆










 アケルリース王国 王城


 そこでは、ノアセダル王国から報告された魔物と魔獣の総数と分布を頼りに、軍の編成を行なっていた。



「迷いの森周辺の兵士と騎士はどうしている?」


「現在、周辺住民の避難誘導を行なっています。ですが、やはり魔物との遭遇率は上がっています……恐らく、数刻のうちに押し寄せてくるでしょう」


「むぅ……」



 国王であるヴォルフガングは今回の事態に頭を悩ませていた。


 三大大国の西部にある森林地帯。


 魔力濃度が高く、深くまで入ったものは方向感覚を失い、出て来れなくなると言われる魔の森。


 通称:迷いの森と名付けられたその場所は、恐ろしい場所であると共に、魔物も定期的に現れるため、魔物素材も多く取れるという恩恵もある場所だ。


 そのおかげで、アケルリースは魔法技術の研究を盛んに行うことができたため、魔法先進国として君臨できていた。


 その森が今まで牙を剥くことがなかったこと自体が奇跡だったにも関わらず、その警戒を怠っていた。


 そして今回、国民が寝静まった深夜に発生したため、避難が間に合っていないことも悩みの種であった。



「国民の避難を最優先させろ。王国軍及び騎士団は編成が終わり次第出陣、一刻も早く現着せよ」


「「はっ!」」



 軍団長と騎士団長の二人が返事をした直後、議会室に一人の通信士が駆け込んだ。



「会議中失礼します!! ノアセダル王国より、追加情報を持って参りました!!」


「追加情報?!」


「また新たな魔物が現れたのか!?」



 通信士の報告で大臣達がざわつく中、ヴォルフガングは冷静に報告を続けるよう指示した。



「報告を全て聞かんとわからんだろう。続け給え」


「はっ! 今回新たに届けられた情報はスタンピードの到達予想時刻と予想進路でございます!」


「なっ!?」


「予想時刻と予想進路だって!?」



 その報告にヴォルフガングと魔法技術省大臣であるヘルガも驚愕した。


 予想時刻と進路予想など、今まで聞いたことがない。



「こちらが予想進路です」



 通信士が地図に予想進路と予想時刻を書き込んでくれている。


 本来なら貴重な地図に直接書き込むなど言語道断だが、事態が事態故に今回は目を瞑った。



「予想時刻……アケルリース、3:25。エグザニティ、3:50。ロムルツィア、4:15……」


「なお、これは第一波の到達予想である……第一波だって!?」


「ノアセダルは波状で魔物が押し寄せてくると言ってるのか!?」


「……そのようです」



 ヴォルフガングを含め、大臣達も絶望した。


 通常のスタンピードですら、退けられるか否かというのにそれが波状でやってくるなどどれほどの被害になるか想像がつかない。


 それに第一波の対処後に第二波、第三波が律儀に順番通りにやってくる保証はどこにもないのだ。



「……絶望的だ」


「これから各国に援軍要請をしても到底間に合わない……」


「一番近いエグザニティも同じ状況だから、援軍は見込めない……」


「ハンター教会と連携したとしても……第一波だけでも魔物の数は千に近い……しかもそれ以外に魔獣も数体いる」


「本来、魔獣討伐は全軍、全騎士団で対応し、災害級に至っては国際軍を結成して対応するもの……それらを後3時間ほどで対応しろなんてねぇ」


「くっ!」



 ヴォルフガングは唇を噛み締めた。


 これほどの困難を神は与えてきたというのかと――


 ヴォルフガングは意を決して大臣達に告げた。



「……こうなれば、学徒を動員する他ない」


「!?」


「学生を……戦場に立たせるというのですか!?」



 アケルリース王国は教育に関して随一を誇る国である。


 民あっての国、国あっての民であるという思想から、子は宝だという意識が強いからだ。


 故に、子供を労働力として扱わず、義務教育機関を作り、学びの機会を与えている。



 そんな思想の国で、学徒動員は文字通り身を切る思いなのである。



「こうなっては致し方ない……か。よく決断したねヴォルフガング」


「導師殿……ありがとうございます。諸君!!」



 ヴォルフガングは立ち上がり、大臣達に告げた。



「高等魔法学園及び騎士養成学校の生徒を直ちに招集! 到達予想地点へ移送せよ!! そして、間に合わんかもしれんが周辺国へ援軍要請を出せ! 我々が倒れた後でも、民を守ってくれるように……」


「「「「「はっ!!」」」」」



 それぞれ、自分の仕事に向かうべく立ち上がり、慌ただしく退室していった。



「導師殿、学徒を動員するということは彼を戦場に送り出すということです。愛息子を危険に晒す事をお許しください」


「こんな状況さ、責めるつもりはないよ。逆にあの子とマーリンなら、大半を屠ってくれるだろうさ」


「そう……ですね……」



 ヘルガはそういうが、言った本人もヴォルフガングもわかっていた。


 今、必要なのは英雄(ヒーロー)ではなく、軍団(レギオン)なのだということを……










 ◆










 ――2:17


 英雄の息子、レン・グランウィードは迷いの森から2km離れたところに、アケルリース軍及び騎士団と学徒動員された生徒たちと共に布陣していた。



「スタンピード……こんな夜中に来るなんてな……」



 前代未聞の事態。


 魔法の威力に関しては自信があり、王国内でもそれは周知しており、一撃で数百の魔物を屠ることができる為、初手を父であるマーリンと共に担うこととなっていた。


 英雄マーリンも同じく一撃で数百を屠る為、それによって、敵の数を激減させることが目的であった。



「レンくん……」


「あぁ、ルナ」



 レンを案じるように声をかけてきたのは、ルナ・フォン・ボールドウィン。


 アケルリース王国の伯爵家の三女で、国内随一と言われるほどの美少女であり、レンの恋人である。



「どうしたの? こんなところまで」


「心配で……レンくんの実力はわかっています。でも……」



 胸の前で、キュっと両手を握りしめる姿を見て、レンはフッと微笑んだ。



「大丈夫だよ、ルナ。君も皆も俺が守るから」


「レンくん……」


「魔物の大群ぐらいどうってことないさ! ルナは皆と一緒に後ろにいてくれ」


「……はい!」



 可愛らしく微笑む彼女を見て、気を引き締めていると、また一人近づいてくる人物がいた。



「『君も皆も俺が守るから』か、かっこいいではないか。レン」



 そう言いながら近づいてきたのはアラン・フォン・アケルリース。


 アケルリース王国の第一王子である。



「茶化すなよ。てか、お前が出てきていいのか? 王子だろ?」


「学園次席という実力があるのに、安全な場所で座して待つなど、できるはずがないだろう?」



 王子に対して不敬な態度だが、英雄の息子として、王都に来た際に知り合い、元々親同士も仲が良かったことからよく会うようになって、今では気安い仲となっていた。



「それに、お前と賢者殿が居れば、どうということはないだろう」


「……ハハ、言うじゃねぇか」


「で、でも! 心配なことには変わりありません!! レンくんに何かあったら……」



 横にいたルナはそういうと、じわりと眼に涙を浮かべ始めた。



「お、おいルナ!? 大丈夫だよ! 俺は怪我しないって!」


「グスッ……ホントですか?」


「ホントホント! ルナを悲しませるようなことはしないよ」


「レンくん!!」



 ルナはレンに抱きつき、レンはそれをそっと受け入れて抱き合った。



「……俺がいる事を忘れていないか?」


「オワッ!?」


「キャ!?」



 アランに言われてようやく自分達が、どんな状況だったか思い出して、二人は慌てて離れた。



「全く……まぁ、気が張っているよりはいいか」


「あはは……しかし、普通なら探索魔法を広げて、いつ来るかわからないスタンピード群をいまかいまかと待つのが普通だろうに……そんなにピリピリしてないよな?」


「あぁ、ノアセダル王国からの情報提供で、ここに魔物が到達するのは3:25頃になるそうだ」


「えっ!? そんな正確にわかるもんなの!?」


「そのようだ。それに本来なら軍は森を囲うように布陣するが、ここに多くの兵士や騎士を布陣させているだろう?」


「あぁ、そういえばそうだな」


「それも、ノアセダル王国からの情報でこの地点に多くの魔物が雪崩れ込む予想なのだそうだ。事実、偵察隊の報告でも、魔物はこの地点に向かっているらしい」


「はぇ〜」


「すごいですね……そんなことが予想できるなんて」



 レンとルナはその話を聞いて驚愕していた。


 そして、ふとルナはある事を思い出した。



「そういえば、マリアはもう着いてますよね。ノアセダル王国に」


「あぁ、そうだな。一緒に見送ったもんな」



 マリア・フォン・フィーメル。


 高等魔法学園第三席であったが、1年と半年ほど前にノアセダル王国へ旅に出た。


 理由は空を飛びたいからというものだったが、無事に辿り着けたのかすらわかっていない。


 なにせ、向こうから連絡がないとマリアがどこにいるのかわからないからだ。



「でも、良かったかもしれないですね。ノアセダル王国なら、エシクン山脈の向こう側だから、スタンピードの被害も出ないでしょうし……」


「まぁ、確かにな」


「……さぁ、あと1時間ほどで予想時刻だ。我々も少し休んでおこう」


「そうだな」


「わかりました」



 アランに促されて、二人は天幕へと戻る為、踵を返した。


 これからくる大群に一抹の不安を抱えながら……










 ◆










 ノアセダル王国 王城にて、国王であるマティアスは祈るように両手を握りしめていた。


 アケルリース王国の国王であるヴォルフガングとは、プライベートでも仲が良い為、今回の事態を非常に憂いていた。



「あなた……」



 マリーダも心配そうに声をかけてきた。


 王妃であるマリーダも同じく、アケルリース王国のルトリシア王妃と仲が良い。


 毎晩のようにマジホで長話をするなど、社交を超えた交流をしているのだから、心配も一入(ひとしお)だろう。



「レオン君のおかげで、到達予想地点と進路、到達予想時間は伝えている……救援要請があれば我々も動けるのだが……」


「飛行機では……王国専用機を使っても500人連れて行けたら良い方ですから……焼石に水でしょうね」


「くっ!」



 エシクン山脈さえなければ……南の海の潮流が遅ければ……風が一方向にのみ吹いていなければ……


 輸送手段の限られているノアセダル王国が今動いたとしても、到着する頃には全て終わっている頃だろう。


 甚大な被害を受けた後に到着しても、できるのは炊き出しや瓦礫除去、そして……死体処理。


 脳裏に過るのは20年前のこと――


 それと似た状況で、この困難に共に立ち向かうことができないことが、歯痒かった。



 そうしていると、会議室に通信士が入ってきた。



「陛下! アケルリース王国からの救援要請が届きました! そのほか、エグザニティ共和国、ロムルツィア神聖国からも同様の要請が届いています!」


「……そうか」



 到底間に合わないとわかっていながらも救援要請を出した。


 それの意味するところを、マティアスは理解していた。



 ――後を頼むと、言っているのだと。



「承知した。全軍、全騎士団に通達。遠征隊は直ちにアケルリース王国へ出発せよ」


「了解しました。直ちに向かいます」



 軍団長が返事をし、退室しようと立ち上がった時だった。


 もう一人、通信士が慌てた様子で駆け込んできた。



「失礼します!! 陛下!! 先程通信が入りまして……」


「何かね?」


「レイディアントガーデンのレオン・アルファード様からなのですが……」


「追加情報か!?」



 これ以上の悪夢を見せられるのかと、会議室にいた大臣達は緊張した面持ちで、続きを聞く。


 しかし、発せられた言葉は……決して悪夢ではなく――



「いえ、レオン様から「我々は航空輸送手段の他、海上輸送手段も有している」と……あと加えてですが――」



 絶望を退ける……希望そのものだった。



「レイディアントナイツ航空隊全隊、出撃準備が整っているとのことです!!」










 ◆










「出撃準備は出来ているな?」


「もちろん。全艦、既に釜に火は入っています。下知を頂ければいつでも」



 俺は海上輸送及び護衛部門責任者のフィリップ・フォン・フンボルトと共に港に来ていた。


 目線の先には、準備を整えた護衛艦が6隻並んでいる。


 レイディアントガーデンは、宇宙航空技術にのみ傾倒していると思われがちだが、実は造船も行なっている。


 まぁ、それに手を出した原因は、スペースシャトルのSRBを回収する為だったが、その船達には魚雷発射管とミサイル発射管と速射砲を装備させている。


 何故、回収船にそんな装備を積んでいるのか……理由は、海にも魔物が住んでいるからだ。


 巨大な海蛇の魔物もいれば、シャチをデカくしたような魔物も住んでいる。


 それらと遭遇した際に、それを退ける或いは討伐できるものが必要だった。



 そのため、SRBを回収する際は、ヘリ部隊や航空魔法士を離着艦させるための空母と護衛艦をともなって回収に向かうような体制をとっていた。


 設計は、まんま日本の護衛艦なんだけど……



「こんな形で役に立てる日が来るなんてねぇ……あってよかった護衛艦、だな」


「上空からの攻撃手段は航空魔法士の魔法か、マイフェルト型、ソレオン型からの対地ミサイルぐらいですから」



 マイフェルト型というのは前世、日本の護衛艦「あたご型」と同じで、ソレオン型は同じく護衛艦「あきづき型」と同じである。


 それぞれVLS(垂直発射システム)を搭載しており、射程に入れば迷いの森を面制圧することができる。


 まぁ、それをすると「いつでも狙えるぞ♪」って言ってるようなものだから、あまりやりたくない。



「あまり大暴れしないようにしないと、目をつけられてしまうからな」


「……マスター、こんな大きな艦を持っていくだけでも目を惹くと思います」



 ……それもそっか。



「ん?」



 胸ポケットから、メロディーが流れた。


 俺はその音を出している端末を取り出す。


 ……まぁ、スマートフォンなんだけど。


 社内連絡とかに便利だから作っちゃった。



「はい、レオン・アルファードです」


『マスター、アイリスです。今、港ですか?』


「そうだけど……なんかあったか?」


『いえ、国王陛下からマジホが届いているので……このままお繋ぎしてもいいですか?』


「えっ? 陛下から? どうぞ繋いで」


『では、お繋ぎします』



 何秒間か保留の音楽が流れた後、マジホが繋がった。



「もしもし、レオンです」


『レオン君!! アケルリースへ行ってくれるのかい?!』


「えぇ、お声はかかるかもしれないと思って用意しておりました」


『……ありがとう』



 マジホ越しに、鼻を啜る音が聞こえた。



『ヴォルフガング殿は……幼少期から懇意にしてくれていてね……でも、我が国はかのアケルリース王国を手助けできるほどの国力を持っていなかった……』


「……」


『アケルリース王国で、魔法事故があった時も、我々が着いた時には既に事態は終息し、我々はただ、瓦礫の撤去や死体処理しか出来なかった。自惚れるわけではないが、もっと早くに着いていたなら、何か変わったかもしれないと思わずにはいられないほどの……悲惨な光景だった』



 そうか。


 英雄マーリンの名が知られた魔法事故は、20年前の出来事だ。


 50代である陛下は、その光景を見たことがあるのか……



『歯痒かった……もっと私に力があればと何度思ったことか……レオン君』


「はい」


『君が、この国に生まれて来てくれて……本当に良かったと思っている。……君には、頼み事ばかりしてしまって……頼りない国王で本当にすまない』



 頭を下げている陛下が目に浮かぶ。


 しかし、感謝しているのは、俺も同じだ。



「陛下……私は陛下のお陰で夢を追うことが出来ました。信頼できる仲間も出来ました……陛下に見初められていなければ、今もまだ、一介の魔道具売りだったでしょう」



 俺は本当に運がいい。


 アイリスやクラリス、クリスと出会い。


 知らずとはいえ王妃陛下を救うことが出来て、今に至っている。


 陛下から土地と資金を頂かなければ、こんなに早く宇宙開発は出来なかっただろう。



「私の今があるのは陛下のおかげ……私はあなたの力そのものです」


『レオン君……』


「どうぞお使いください。私は……私達は、あなたの手足となって働きましょう」


『……すまない、ありがとう』


「いえ……」



 もはや、多くの言葉を交わす必要は無くなった。



『レオン・アルファード、レイディアントナイツを率い、アケルリース王国へと出陣せよ!』


「承知しました」



 マジホを切り、すぐにアイリスへ連絡する。



『はい、アイリスです』


「レオンだ。アイリス、すぐに港に来い。お前の治癒魔法が必要だ」


『!?……わかりました!! 直ちに!』


「……フィリップ」


「はっ!!」



 アイリスとの会話を終え、艦隊責任者であるフィリップへ下知を下す。



「全艦出港。迷いの森南東の海域へ単縦陣にて進行せよ」


「了解!!」



 現在、0:34


 アケルリース王国側第一波到達予想まで、残り……2時間51分。

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