板挟みサラリーマンの休日出勤 -チキンな俺は、心の中で本音を叫ぶ。-
とあるストレス社会の真ん中に、1人の男が居た。
名を、田中太郎。
仮名じゃないぞ、本名だ。
俺は一介のサラリーマン。
課長の席に座っているが、要は上と現場の板挟みだ。
上からは「きちんと仕切れ」と言われるし、下からは「もっと現場を見て」と言われる。
そんな毎日である。
過去には何度か「そんなに言うなら君がやってみろ!」と言ってやりたい様な気持ちにもなった。
しかし、勤続10年。
今のところ何とか耐えている。
今の世は、ストレス社会の上に情報社会。
そんな事をしようものなら、きっと速攻で噂が広がるだろう。
「何か急にキレたんですけど。(笑)」ってな感じで。
という訳で、今日も今日とて板挟みライフ。
日曜なのに上司にせっつかれて泣く泣く休日出勤だ。
あぁ、太陽が眩しい。
そしてそんな中、スーツの俺。
虚しい。
そもそも3連休の真ん中に休日出勤なんて「もしかしたらこの会社ってブラックなのでは?」と思う今日この頃。
……え?
「気付くのが遅い」って?
そうかもしれない。
今日の仕事は、部下の遅れてる仕事のフォローだ。
だというのに。
「あー、やりたくねー!」
ガランとしたオフィスで、部下の彼がそんな声を上げた。
ディスプレイから視線を外してそちらを見遣ると、そこには椅子に座ったままデスクに向かって土下座スタイルをかましている彼の姿がある。
おい君。
土下座するならパソコン相手じゃなくて俺にしろ。
っていうか、キーボードの上に突っ伏してるから、ほら。
画面に「うrrrrrrrrrrrrrrr」って文字が出力されちゃってるよ。
それ上司に提出する書類の下書きなんだから、そんなのがどこかに残ったまま印刷なんてしちゃった日には、また俺が色々言われちゃうんだけど。
そんなしょうもない事で怒られるの、俺やだよ。
勘弁してくれ。
そんな事を思うが、到底言葉にはできない。
チキンな俺である。
「課長ー、今日はもう帰りません?」
いやね、こっちは君の仕事のフォローに来てんだよ?
そもそも君の仕事が終わらないから帰れないんだけど。
これも言えない。
言ったらきっと「何すか? 責任転嫁すか?」とか言われるわ。
否、全くもって責任転嫁じゃない。
ただの正当な評価だと、俺は思うけど。
「あー、しんどー! 集中切れたわ」
嘘つけ!
今日来てから、まだ一回も集中なんてしてないでしょうが。
そんな事よりも、早く仕事を再開させなさいよ。
そしたらそれだけ早く帰れるから。
俺も早く帰れるから。
「課長ー、スイーツ食べたくありません?」
「女子かっ!」
俺は思わずそんな言葉を言い返した。
結局中間管理職で板挟みで、なおかつ小心者の平凡な俺は、そんなしょうもない反論くらいしかできないのである。
※この作品は『イラストから物語企画』に参加しています。
この作品を思いついたきっかけがこのイラストだったんですよ。
私には「疲れた人が見た時の空」に見えました。
疲れた時。
太陽の光が照ってたりすると、目を細めて空を見上げたらあんな風に見えません?
……見えないか。(笑)